【上巳の節句】3月3日はひな祭り! 由来や意味。ひな人形の飾り方を紹介
この記事の目次
ひな祭りのはじまり
ひな祭りは元々、五節句のひとつ「上巳の節句」でした。
昔の中国ではこの日に水辺で禊や祓を行っており、自分の穢れを託した人形を水に流して清める習慣が後の「流し雛」に繋がったとされます。また、平安貴族の幼女は、「ひいな遊び(ひひな遊び)」という小さな御所風の御殿と人形で遊ぶ文化があり、これらが後に融合して「ひな祭り」となったと考えられます。
江戸時代になると、これらの習慣は武家社会にも広がります。最初は立った状態の男女一対の人形「立雛」が主流でしたが、寛永(1624~1645)の頃に「座雛」が登場します。その後も少しずつ従者たちや小道具がつくなどの変化を経て、今の形になりました。
なお、上巳の節句は元々男女関係ない行事でしたが、女の子の行事と扱われたのも江戸時代になってからです。
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ひな人形
ひな祭りに欠かせないのが、ひな人形。
宮中の婚礼の様子を表したものであり、その華やかな衣装は宮廷の装束を模しています。
元は穢れや災厄を託す身代わりの役割が大きく、時代が下るにつれて上流階級の嫁入り道具として扱われるようになり、装飾性が高まっていったようです。
特に江戸時代は、寛永雛、元禄雛、享保雛、有職雛、古今雛など、さまざまな発展を遂げます。裕福な商家にも広まって、ひな人形はどんどん豪華になっていき、危惧した幕府が人形の大きさを規制するほどでした。
一般庶民にも定着したのは、江戸後期~明治時代と言われています。
ひな人形の飾り方
特に高度経済成長期に入ってからは、7段飾りが主流とされていました。しかし、住宅事情が変わった近年では少ない段数のものが好まれる傾向にあります。
内裏雛だけの1段をはじめ、3段、5段といった奇数の段数がおめでたいとされていますが、内裏雛に三人官女を加えた2段飾りも多数作られています。飾る場所の広さや好みに合わせて選んでよいでしょう。
1段:内裏雛
ひな段の一番上に飾られるのは、新郎新婦となる内裏雛(男雛・女雛)です。「内裏」は天皇の住まいとなる御所を指し、天皇皇后をかたどっています。そのため、装束の格が高く、親王台がつきます。
この一対の人形の配置は地域によって異なり、一般的に流通している「関東雛」では向かって左に男雛、右に女雛という並べ方をします。一方、関西地方の「京雛」では逆に、向かって右に男雛、左に女雛を置きます。
古来の日本では、京雛のように向かって右が格上とされたので、男雛もそれに倣っていました。一説によると、近現代の皇室や西洋の男女の並びに影響され、関東雛では逆の配置になったと言われています。
両脇には雪洞が置かれ、二人の間には瓶子に口花を差して三宝に置いた「三宝飾り」が据えられます。
2段:三人官女
2段目に飾られるのは、宮中の女官を表した人形です。それぞれ、長柄、三方、提子を手にしています。京雛の場合は、三方が島台に置き換えられます。
よく見ると、真ん中の一人だけは眉がなく鉄漿(お歯黒)をつけています。これは既婚者であることを表しており、彼女が年長者の印です。
三人官女の間には、2段重ねの紅白餅を乗せた高坏(供台)を飾ることもあります。
3段:五人囃子
楽人を表している五人囃子。その髪型から、元服前の少年とされています。
関東に多い能楽の様式では、向かって左から、太鼓・大鼓・小鼓・横笛・謡(声楽なので楽器の代わりに扇)を持っています。
関西で見られる雅楽の様式(五楽人)では、横笛・縦笛・火焔太鼓・笙・羯鼓を持ちます。二人加わった七楽人になると、さらに琴と琵琶が増えます。
4段:随身
随身とは、御所を警護する武官のことです。左大臣・右大臣、近衛中将・近衛少将と呼ぶ場合もあります。それぞれ弓矢を持っています。
向かって右の方が位が高いため、そちらに年配者(左大臣)、向かって左に若者(右大臣)を置きます。自分にとって右に左大臣、左に右大臣と言われると首を傾げる人もいるかもしれません。この場合の左右は、天皇(この場合内裏雛)から見た方向です。
二人の間には、菱餅と掛盤膳が飾られます。
5段:仕丁
仕丁は、この中では身分の低い雑役係です。泣き・笑い・怒りと、それぞれ異なる表情をしています。そのため、「三人上戸(泣き上戸、笑い上戸、怒り上戸)」とも言われます。
三人官女や五人囃子と同じく、東西で持ち物が異なることが多く、関東では台傘・沓台・立傘、関西では熊手・ちり取り・ほうきを持たせます。関東はお供、関西はお掃除係です。
三人の両脇には左近の桜と右近の橘が飾られます。これも天皇から見た左右なので、実際は桜が向かって右、橘が向かって左となるので注意しましょう。
この桜と橘は御所に実際に植えられていたもので、かつては桜ではなく梅が植えられていたのが枯れてしまったため、現在の桜橘という組み合わせになったそうです。
6段・7段:嫁入りの道具
下段に飾られるのは婚礼の品(ひな道具)です。武家風の調度品が一般的とされています。
厳密な決まりはないようですが、6段目には箪笥・長持・鋏箱・鏡台・針箱・火鉢・衣装袋・茶の湯道具、7段目には御籠・重箱・御所車(牛を付けて牛車とすることも)が並びます。
蒔絵細工の品々には、上流階級らしい華やかさが窺えます。
まとめ
昨今は、7段飾ることが少なくなったかもしれませんが、ひな人形やひな道具はさまざまな日本の伝統を感じられる品です。
形を変えながらも現代に至るまで日本人に親しまれているのは、いつの時代も子どもの幸せを願う気持ちがあったからではないでしょうか。
そのような人々の心が連綿と受け継がれているのだと感じる行事です。