【片渕須直監督】広島国際映画祭11回目の登場! 新作映画製作もスタート、来年への期待膨らませる[広島国際映画祭2022]
11月20日、広島県広島市のNTTクレドホールにて開催された広島国際映画祭2022にて、今年も映画『この世界の片隅で』などを手掛けた片渕須直監督が登場、会場にてティーチインが開催されました。
広島国際映画祭では永久レギュラーと認定、今年で11回目のイベント参加となった片淵監督は一昨年、昨年より引き続き清少納言の暮らした平安時代をテーマとした新作映画に関して「1000年前、彼女は何を見たのか。」の題目にてトークショーを行いました。
このテーマによる最初のアプローチポイントは、牛車(ぎっしゃ)の大きさ。平安時代の身分ある人々の重要な交通手段であるこの乗り物について、現存する記録資料に記されているサイズを検証、実際に人が乗ること、平安時代の人の服装などから考慮するとサイズに違和感が見られ「記録に残っているサイズ表記は、(人が横にあおむけに寝る姿勢の方がしっくりくるようにも見えるから)いわゆる霊柩車のものではないか」などといった興味深い仮説、さらには記録に残っている乗車、降車方法から考えられる大内裏内の建物およびその出入口配置の仮説など、興味深い調査結果を明かしながら、昨年同様に、本や記録などに書かれていることををそのまま受け入れるのではなく、実際に検証することで見つけられること、新たに知ることの大切さを力説します。
また新作に関しては細部にわたるまでのリアリティーを追求。十二単などのコスチュームなどに関しても記録に残された情報をもとに、実際に作って人に着せてみるなどの検証を実施。この日は新作映画に向けて作品のイメージ映像も披露されました。
一方、今回もまた「枕草子」に書かれた内容についての考察を披露。中宮定子の宮廷女房として仕えたという清少納言ですが、「枕草子」の文面より彼女は「もともとそれほど中宮定子と意気投合という感じではなかったのではないか?」と考えられる引用を説明しなから「実は中宮の側近としてそこまでべったりという感じではなかったのはないか」といったユニークな考察を説明。イマジネーションを掻き立てる文面の感想として「清少納言は、わりときちんと物事を見ていたのではないか」とコメントし、観衆の興味を引き付けます。
そして最後に、新作映画製作の進捗についてコメント。現在は準備段階より一歩進み11月より作画がスタートした状況にあることを説明すると、観衆より「物語で描かれるのは、清少納言が中宮定子とともに生きた時代、つまり中宮定子が亡くなるまでの物語、となる予定ですか?」などと問われると、片淵監督は「彼女が中宮定子を失ったその後に、本当はふた山ぐらいの流れがあるんですよね…」と含みのある回答で、新作映画の期待要素をさらに大きく膨らませました。
なお、新作映画のパイロットフィルムについて来年、広島国際映画祭で見られるか?という質問が飛ぶと「かもしれないですね」とコメント。ところが広島国際映画祭のクロージング時、最後の挨拶として登壇した代表の部谷京子さんが「片淵監督は、来年は(新作の)パイロットフィルムを作って広島で上映して下さるというふうに、先ほど約束してくださいました!」とコメント、観客席から大きな拍手が沸き起こりました。
[わつなぎオススメ記事]