【木組み】木を活かす千年の木造建築技法! 木組み技法ギャラリー『木組屋』オープン[宮城県石巻]
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千年の木造建築技法
現存する世界最古の木造建築物「法隆寺」は、607年に聖徳太子が建立したと伝えられています。670年頃に全焼し、その後再建したという説もありますが、1300年以上前の木造建物が現在まで残っています。
先述のように火災で全焼したという記述が残っていますが、地震で倒壊したという記述はありません。法隆寺五重塔のほかに法起寺三重塔や薬師寺の東塔など同様に築1000年以上経っている高層木造建築物がありますが、地震の揺れだけが原因で倒壊した塔はないと言われています。
木造建築の工法は、さまざまな文化や技術と同様に中国から伝わったとされていますが、現存する中国最古の木造建築物は、1200年頃に完成した山西省の応県木塔と言われています。
木造建築物の完成年からわかるように、日本の宮大工が優秀で世代を超えて、匠の技術を伝承しながら日々の補修作業を行ってきたと推測できます。
「木組み」技法
木組みとは宮大工が寺社建立の際に使う建築技法のひとつで、釘やプレートなどの金物を一切使用せずに木材の組み合わせ技術だけで建物を建立していく技術です。
木材を継ぎ足す接合「継手(つぎて)」や角度をもって木材を組み合わせる「仕口(しくち)」などの接合方法はたくさんあり、実に100以上の技法があります。これらのテクニックを実際に施工する場所と部材によって使い分けながら木材を加工していきます。多くの場合は自然に曲がった木をそのまま使用するため相当高い技術が求められます。
鎌継ぎ
金輪継ぎ
三つ組
枡組・斗供(仮組)
「木組み」メリット
耐久性に優れている
世界最古の木造建築である法隆寺を始め築1000年以上の建物が日本国中に残っています。これらは地震が多い日本であるにも関わらず一回も崩壊しておらずしなやかで頑丈な構造であることを証明していると言えるのではないでしょうか。
容易なメンテナンス
時には使っている木材が虫に喰われたり雨漏りなどで一部が腐ったりする事も少なくありません。木組み工法で造られた部材は、その部分だけ交換したり補修したりすることが出来ます。そうでないと1300年もの間に渡り五重塔を残すことは出来なかったかもしれません。
自由度が高い
設計や加工の際の自由度や柔軟性にも優れており、木組みをすることで長さや高さを自由に延長できます。さらに、その際の強度も十分に保てるのでお堂や塔などの建立には最適な技法だったのでしょう。
大原浜三熊野神社神社鐘撞堂
「木組み」デメリット
職人のスキル頼り
木組みの場合は、職人さんのスキルによって建物の品質に差が出てしまいます。そのため、高いスキルを求められる優秀な職人が圧倒的に不足しています。さらに、近年の一般住宅建築で多く使用されるプレカット技法に比べて工期が長くかかってしまいます。結果、よい大工さんを長期で作業してもらうことが必要となり、2倍以上の費用がかかってしまう事もあるようです。
見直されている木造建築
国土の70%以上が森林と言われている日本ですが、安い輸入材が入ってきてしまい家屋用の国内伐採は減少し林業が衰退してしまいました。
しかし、近年では「良い木造家屋を作って長く住む」という新しい世界観を持つ動きも出てきました。さらに、木材への耐火加工技術、木工工具の進歩、法律の改正などで「木組み」などの木工技術自体を見直し古くて価値のある木造建築を正しく補修して再利用する動きも少しずつではありますが見えてくるようになっています。
木を活かすテクニック
木を山に入って探すところから始まります。倒した木の葉を落とし虫が出るまでその場にしばらく置いてから山から出します。その後、出してきた木をしばらく乾燥させます。
木を活かし、自然に曲がった木をそのまま使う事もあり、図面が合わせた材を持ってくるのではなく材に合わせるように図面と施工図を正確に起こしていきます。強度計算など模型やコンピューターでも出来るかもしれませんが、実際の木をみないとわからない事も多いはずです。
木組み技法ギャラリー『木組屋』
宮城県石巻市大原浜谷川道5-1-1