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【梅澤文子】映画『愛と死の記録』 作品に精魂を込めて向き合っていた父・蔵原椎繕監督の素顔を振り返る [広島国際映画祭2023]

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11月23日から4日にわたって行われた『広島国際映画祭2023』にて、1966年公開の映画『愛と死の記録』が上映され、作品を手掛けた蔵原椎繕監督のご息女である梅澤文子さんが、映画祭代表の部谷京子とともにゲストとして登場、蔵原監督との生活や撮影当時の様子などについて語られました。


広島国際映画祭2023

広島の原爆投下当時、特攻隊の練習生として呉にいたという蔵原監督は、たまたま手術後の治療のため訓練に遅れていった状況にあったことで原爆の光景を目撃したといい、梅澤さんは「目撃した瞬間に気を失ったそうなんです」と、蔵原監督より耳にしたことを回想します。

以後その衝撃的な光景が脳裏にはなれず、本作をはじめさまざまな作品で広島との結びつきを見せた蔵原監督。本作への取り組みには特別なものを感じたという梅澤さんは、監督が普段はわりと雑に扱っていた脚本を、この作品の脚本はしっかりと四隅をテープで補強し丁寧に扱ったりと、相当の意気込みで取り組んでいた様子を振り返ります。

反面、本作に関し梅澤さんは、残念ながら検閲によりかなりのシーンを削られたということに蔵原監督が非常に悔いを見せながらも、原爆ドーム内での撮影という貴重な機会が得られたことに関し「『あれは(映画監督である)自分にとってのご褒美だった』と、いつも言っていました」と、喜びを見せていたことを語ります。


一方、家庭での蔵原監督に関しては「撮影が終わり家に帰ると、玄関から寝間まで自分の着ていたものが列になるという状態でした」と回想、仕事の話もそれほど話をせず、撮影で家を空けると今どこにいるかも把握できていないほどと、なかなかに父の姿を見ることがなかったものの、本作の撮影に関しては「広島に行っていたときのことは、印象に残っている」と本作に対して蔵原監督が強い気構えを見せていたことを感じた様子を見せます。

他方、食べ物も広島のものは大好物だったそうで、お好み焼きや牡蠣は晩年までよく食されていたことを回想しつつ「変だと思っていたことがあったのですが、お好み焼きにご飯(白飯)を入れていたんです…」と語ると、その言葉には部谷をはじめ会場の観客数人が、その経験があったと反応、梅澤さんは長年の疑問が晴れた様子を見せます。

仕事の関連でたまたま梅澤さんを紹介され、世間話をしている際に梅澤さんのお父様が映画監督の蔵原椎繕であったことを知り、即映画祭への参加をオファーしたという部谷。梅澤さんは「招待されたわけですが、ふつう招待というと見に行くだけと思っていましたから…」と、ステージでは少し緊張気味の表情を見せる梅澤さん。

一方で広島の印象をたずねられると「昨日一日、一人で平和公園を回っていたのですが、途中でガイドの方が突然ついてくれ、いろんな説明をしていただきました」と、予想もしないガイドの登場に驚きつつ、広島の方の親切心に触れた感動を「(これから)何度でも通ってまいります!」という言葉で表していました。


映画情報

映画『愛と死の記録』予告動画


(以下、『広島国際映画祭2023』公式サイトより)

映画『愛と死の記録』ストーリー

吉永小百合が広島の楽器店に勤める娘・和江を、渡哲也が印刷会社で働く青年・幸雄を演じた愛の物語。和江と幸雄の間には恋が芽生えるが、幼い頃に被爆した幸雄が発病する。和江は千羽鶴を折って幸雄の回復を祈るが…。

キャスト

吉永小百合、渡哲也、芦川いづみ、中尾彬

スタッフ

監督:蔵原惟繕
脚本:大橋喜一、小林吉男
企画:大塚和
音楽:黛敏郎
撮影:姫田真左久

作品公開:1966年

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桂 伸也

桂 伸也

“和”という言葉で表現されるものには、人によって色んなイメージがあると思いますが、私は“整然として落ち着いたもの”という雰囲気を感じ取っています。

普段は芸能系ライターとして活動を行っており、かなり“にぎやかな”世界に生きていますが、その意味で“和”という言葉から受ける雰囲気に、普段から強い憧れや興味をもっていました。

なので、そんな素敵な“和”の世界へ、執筆を通して自らの船を漕ぎ出していきたいと思っています。

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