【濱口竜介監督・石橋英子・大美賀均・西川玲・小坂竜士・渋谷采郁】映画『悪は存在しない』昨年に続き濱口竜介監督が広島に登場、新作のプレミア上映に歓喜[広島国際映画祭2023]
11月23日から4日にわたって行われた『広島国際映画祭2023』にて、映画『悪は存在しない』のプレミア上映が行われ、作品を手掛けた濱口竜介監督が登場、製作のきっかけとなった音楽家の石橋英子、キャストの大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁らとともに撮影までの経緯などを語りました。
広島国際映画祭2023
15年ほど前に広島国際映画祭の代表である部谷京子と出会い、代表作の一つである『ハッピーアワー』のプレミア上映も広島で実施、さらに第74回カンヌ国際映画祭で三部門の賞を獲得した映画『ドライブ・マイ・カー』は主に広島でロケ撮影を実施、そして昨年も広島国際映画祭に登壇と、広島とのつながりも強い濱口竜介監督。
今回上映された『悪は存在しない』は第80回ヴェネツィア国際映画祭、第67回ロンドン映画祭で受賞を果たすなど大きな話題を呼んでおり、ジャパンプレミアとなったこの日の会場には多くの映画ファンが集まりました。
映画製作の発端は、『ドライブ・マイ・カー』でもタッグを組んだ音楽家の石橋より。映像と生演奏によるライブパフォーマンスという企画が石橋に持ち込まれ、映像制作ならと濱口監督に声を掛けたのがきっかけだったといいます。
もともと音声のない映像に生演奏を合わせる格好の上映を想定していた濱口監督の考えに対し、石橋は「いつも通り(映画を作るように)に濱口さんが作ったほうが、面白いものができるのではないか」と考え、それを提案する形で本作の製作に行きついたと明かします。
この日石橋とそろっての登壇に濱口監督は『ドライブ・マイ・カー』での製作を振り返り「広島で素晴らしい経験ができて石橋さんともいい仕事ができました。今回はその続きで、今日広島で上映することができてとてもうれしい」と語りました。
出演者は、オーディションで採用された西川玲以外のメインキャストは、濱口監督の作品で仕事をともにしたスタッフ、俳優。渋谷は『ハッピーアワー』に出演した経緯があり「久々にこうして参加できたのはうれしかった」と出演に対する感想を語ります。
自身も映画監督として活躍している大美賀は、本作のシナハン(シナリオを執筆するための取材)のための運転手として濱口監督に同行したところスカウトされたとのこと。小坂は『ドライブ・マイ・カー』で車両部の担当をしており、もともと俳優として活躍していた経緯もあってオファーを受けたと明かします。
濱口監督は、もともと長野でロケ実施が決まった場所において、そこで実際に似たような開発案件が持ち上がり、住民への説明会でかなり大きな衝突などもあったという出来事があったことを知り、その経緯を取材した上で本作の序章の部分を構築したと明かします。
作品の序章では芸能事務所の開発説明に地元民が大きく反発するという展開が起こりますが、開発説明を行う担当者役を演じた小坂は「(本当に)メンタルがボロボロにされた(気分になった)」と撮影時の現場の様子を回想、緊迫した雰囲気を見事に再現した様子を振り返ります。濱口監督は「まさにこの説明会を再現したようになった」とコメント。そして作品の総評として「思いもよらないところまで飛び出た感じになったので、(作品を)このまま自由に泳がせて今後どうなっていくのかを見てみたい」と語りました。
なお、濱口監督は映画祭の閉会式で部谷からの急なリクエストにより「後進の映画人」に向けての言葉を投げかけるために登壇。部谷の無茶振りに「自分自身、まだ若手だと思っていたら(いつの間にか)こうして若手にメッセージを送る中堅、ベテランになっていくのかと思うと、少し悲しい気持ちになっていくというか…」などとコメント、笑いを誘います。
一方「どちらかというと(自分は)『やりたくない』ことをあまりやらないようにやって来た。それが正しいのかはわからないけど、若い人たちから見て『何かおかしいんじゃないか』『それはやらなくていいんじゃないか』と思えることは、やらなくてもいいんじゃないか、と私は思っています」と、自身の仕事への向き合い方を語りながら「できないことやわからないことも多くあると思います。それが現在の自分であり、そこから始めるしかないため、そのできなさや分からなさに正直になり、自分のやり方を見つけて欲しいです」と、アドバイスとともに若手の後進へのエールを送ります。
そして「何よりもそれを自分にも言いたい。自分がそうできているわけでもないですし、自分自身が若手でいたいという強い思いを持っているからです」と自身の今後への意気込みを合わせて語り、挨拶を締めくくりました。
映画『悪は存在しない』映画情報
(以下、『広島国際映画祭2023』公式サイトより)
映画『悪は存在しない』ストーリー
自然が豊かな高原に位置する長野県水挽町は東京からも近いため、近年も移住者は増加傾向でごく緩やかに発展している。代々そこで暮らす巧とその娘・花の生活は自然のサイクルに合わせた慎ましいものだ。ある日、巧の家の近くでグランピング場を作る計画が持ち上がる。コロナ禍のあおりで経営難に陥った芸能事務所が政府からの補助金を得て、その設営を計画した。しかし、彼らが町の水源に汚水を排水しようとしていることがわかり、町内は動揺し、その余波は巧の生活にも及んでいく。
キャスト
大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁
スタッフ
監督・脚本:濱口竜介
音楽:石橋英子
撮影:北川喜雄
整音:松野泉
美術:布部雅人
助監督:遠藤薫
ラインプロデューサー:石井智久
カラリスト:小林亮太
編集:濱口竜介・山崎梓
作品公開:2024年4月26日(金)より全国公開予定