古典美術 × 8人の作家! 『古典 × 現代2020―時空を超える日本のアート』開催[国立新美術館]
この記事の目次
展覧会のみどころ
日本美術史の巨匠×気鋭の現代作家 8組の共演
江戸時代以前のビックネームによる名品と現代の日本を代表するクリエイターたちの作品を組み合わせ展示。
ジャンルをまたぐセレクション、幅広い創造分野を横断
絵画、彫刻、陶芸や刀剣まで、様々なジャンルを取り込み、日本の創造性の多彩な豊かさを紹介。
第一線で活躍する現代作家の新作ぞくぞく
多くの現代作家が、新作や新しいインスタレーションを発表。
国立新美術館初、國華社との共同企画
日本美術の研究で長い歴史を誇る國華社と初めて共同でキュレーション。
「日本博」プロジェクト採択企画
日本の美を発信する、文化芸術の祭典「日本博」において、ひとつの事業として選出。
花鳥画 × 川内倫子
「愛しさも儚さも 日々のなか」
花や鳥、虫などを題材にする花鳥画は、中国からもたらされた伝統的な画題の一つ。
写生や俳諧ブームとあいまって、江戸時代は特に盛んに描かれ、伊藤若冲や新しい写生画を追求する絵師たちが、はかない命、うつろいゆくものへの深い愛着と情感を花鳥画に込めた。
同様の感覚は、さまざまな命の営みを、透明感にあふれた写真にとらえる川内倫子にも通じる。
独特の光の効果をともなってカメラのフレームに切り取られたとき、花や木、動物、鳥、昆虫は、日常に裂け目のように現れた無常の感覚を突き付ける。
伊藤若冲《紫陽花白鶏図》
伊藤若冲《紫陽花白鶏図》江戸時代・18世紀 個人蔵 展示期間:6月24日~7月6日
川内倫子《無題》
川内倫子《無題》シリーズ〈AILA〉より 2004年 作家蔵 © Rinko Kawauchi
刀 剣 × 鴻池朋子
「原始の記憶を呼び覚ます」
そもそもは戦場における武器であった刀剣は、次第に権威の象徴、信仰、そして鑑賞の対象となり、神聖な美しさが求められるようになった。
一方、文化人類学的な視座から自然との共生を思索してきた鴻池朋子は、人間の思惑のみに閉じるアートに違和感を持ち、近代社会が失った生命力を取り戻すような壮大なインスタレーションを展開し、生きること、創作することの根源的な意味を問うてきた。
神話的イメージが描かれた巨大緞帳と、聖俗両面の顔 を持ち、時代を超えた煌めきで現代人をも魅了する刀剣の出会いが新たな物語を紡ぐ。
刀 銘 兼房
刀 銘 兼房 室町時代・16世紀 個人
鴻池朋子《皮緞帳》
鴻池朋子《皮緞帳》2015年 高橋龍太郎コレクション © Tomoko Konoike
北 斎 × しりあがり寿
「軽妙洒脱 浮世の富士」
自ら「画狂人」と号するほど描画に没頭した、葛飾北斎。
世界的に知られる〈冨嶽三十六景〉は46枚組の人気作品で、富士山を臨むさまざまな風景に、江戸の庶民の姿を生き生きと描いた。
北斎を敬愛するしりあがり寿が本展覧会に出品するのは、〈冨嶽三十六景〉全作品を現代風に解釈し、社会批評的視点やユーモアを加えたパロディ〈ちょっと可笑しなほぼ三十六景〉(2017年)です。
例えば、《神奈川沖浪裏》では、波を太陽フレア、富士を地球に換骨奪胎。嵐の海の波間から富士を臨む北斎の視点を踏まえながら、宇宙旅行が可能になったときに地球がどう見えるか、という近未来的想像力を加えた。
葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》
葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》江戸時代・19世紀 和泉市久保惣記念美術館 展示期間:8月5日~8月24日
しりあがり寿《ちょっと可笑しなほぼ三十六景 太陽から見た地球》
しりあがり寿《ちょっと可笑しなほぼ三十六景 太陽から見た地球》2017年 作家蔵 展示期間:8月5日~8月24日
仙 厓 × 菅木志雄
「無限は、シンプルだ。」
仙厓は、江戸時代の臨済宗の僧で、あらゆるものを禅画として描いた。
「厓画無法」(仙厓の絵に法は無い)を宣言し、禅の教えをわかりやすく、ユーモアを交え民衆に伝えた。
仙厓が禅の悟りの境地をひとつの簡素な円に託したように、「もの派」の論理と方法論を確立して活躍してきた菅木志雄も、その膨大な思考の軌跡を、今ここにあるもの、あるいは、そのものの在様にシンプルに集約させている。
インド哲学の〈空〉の思想に共鳴する菅は、石や木、アルミ、ワイヤーなど、身近な素材に手を加えることなく、空間に置くことで、ものと人との在様に新たな存在の場を与えてきた。
仙厓義梵《円相図》
仙厓義梵《円相図》江戸時代・19世紀 福岡市美術館(石村コレクション) 展示期間:6月24日~7月6日
菅木志雄《支空》
菅木志雄《支空》1985年 作家蔵 撮影:菅木志雄
円 空 × 棚田康司
「木を彫る、いのちを造る」
円空は、諸国を巡り約12万体の仏像を彫ったとも伝わる江戸時代の僧。
作風に変遷はあるが、丸太を断ち割り、簡素な彫りで仕上げた。微かな笑みを浮かべた仏像は、庶民の心に寄り添い、人々を魅了してきた。
簡素な表現のなかに木の生命力を感じさせる円空仏に関心を寄せてきた棚田康司は、円空同様、一本の木から像を彫り出すことで継ぎ目のない木彫を制作してきた。
大人になる一歩手前の多感な時代の少年少女の姿を、木に内在する命のゆらぎや振動に重ねて表現している。
円空《善財童子立像(自刻像)》
円空《善財童子立像(自刻像)》 江戸時代・17世紀 岐阜・神明神社
棚田康司《つづら折りの少女》
棚田康司《つづら折りの少女》 2019年 作家蔵 撮影:宮島径 © TANADA Koji, Courtesy of Mizuma Art Gallery
仏 像 × 田根剛
「挑むのは祈りと光の舞台」
承和元年(834年)開基の天台宗の古刹西明寺(滋賀県)では、光差す池の中から薬師如来、日光菩薩、月光菩薩が現れたと伝わる。
本展覧会では、全身を漆箔で覆われ美しく輝く日光・月光の2軀の菩薩を展示する空間を、気鋭の建築家・田根剛が創造する。
場所や土地の記憶を徹底的にリサーチし、未来の建築を思考する田根は、軍用滑走路を生かした エストニア国立博物館や、日本の新国立競技場のコンペで出した古墳スタジアム案などで知られ、国際的に注目を集めている。
《月光菩薩立像》
《月光菩薩立像》鎌倉時代・13世紀 滋賀・西明寺
《日光菩薩立像》
《日光菩薩立像》鎌倉時代・13世紀 滋賀・西明寺
田根剛《エストニア国立博物館》
田根剛《エストニア国立博物館》2006-16年 © Takuji Shimmura | Image courtesy of DGT.
乾 山 × 皆川明
「自然の神秘、デザインの魔法」
江戸時代の陶工・尾形乾山は、高級什器の世界で卓越した造形を展開し、花卉を切り取った華麗なかたちを琳派の意匠で彩った。さらには、文人的な美意識をも、うつわの中に表現してみせた。
デザイナーの皆川明は、主宰するブランド「ミナ ペルホネン」による服や家具、うつわなどを通じて、良質なデザインを身近なものとするライフスタイルを提案しつづけてきた。
自然に着想を得た模様、うつわやテキスタイルなどの内と外とで異なる意匠、平面と立体の感覚の交差など、両者の類似性を浮上させ、優れた想像力が生み出す魅力を提示します。
尾形乾山《銹絵百合形向付》
尾形乾山《銹絵百合形向付》江戸時代・18世紀 MIHO MUSEUM 撮影:越田悟全
minä perhonen《ring flower》
minä perhonen《ring flower》2005-06年 秋冬コレクション
蕭 白 × 横尾忠則
「いつの世もアヴァンギャルド」
江戸時代の絵師・曾我蕭白は、奇妙で時に醜悪なモティーフを水墨や濃彩で破天荒に描いたが、その大胆な描法、空間把握の基盤には高い画技があった。
横尾忠則は、蕭白に魅了され、オマージュ 捧げてきた。
奇想の絵描きとして強烈な個性を放つ二人は、先達の作品から引用や借用をし、新たな表現に昇華させたことでも共通する。横尾は、古今東西の美術や自らの記憶などに由来する、あらゆるイメージが一体となった絵画で知られ、蕭白もまた、狩野派や曾我派、中国絵画などを吸収し自らの画風を打ち立てた。
曾我蕭白《群仙図屏風》
曾我蕭白《群仙図屏風》(左隻) 江戸時代・18世紀 2曲1双 東京藝術大学 展示期間:6月24日~7月6日
横尾忠則《戦場の昼食》
横尾忠則《戦場の昼食》 1990 / 2019年 作家蔵(横尾忠則現代美術館寄託) 撮影:上野則宏
横尾忠則《寒山拾得2020》
横尾忠則《寒山拾得2020》2019年 作家蔵 撮影:上野則宏
古典×現代2020―時空を超える日本のアート
2020年6月24日(水)〜8月24日(月)
[会場] 国立新美術館 企画展示室2E
[休館日] 毎週火曜日
[開館時間] 10:00~18:00
※入場は閉館の30分前まで ※当面の間、夜間開館は行いません。
[展覧会ホームページ] https://kotengendai.exhibit.jp
【事前予約制(日時指定券)の導入】
混雑緩和のため、本展では事前予約制(日時指定券)を導入します。
入場にあたっては、すでにチケット等をお持ちの方も含め、どなた様もオンラインで「日時指定観覧券」もしくは「日時指定券(無料)」の予約が必要です。
予約完了後に、申込完了画面またはご購入確認メールのリンクから、チケットをプリントアウトしてお持ちになるか、またはスマートフォン等の画面にてQRコードを表示いただき、入場の際に係員にご提示いただきますようお願いいたします。なお、電話等では予約をお受けできません。
詳細は、本展ホームページのチケットページ(https://kotengendai.exhibit.jp/ticket.html)をご覧ください。