【NEWS】多種多様な金の表現! 特別展「金屏風の祭典 ―黄金の世界へようこそ―」開催[岡田美術館]
この記事の目次
見どころ 1
金屏風約 30 件、次々と展開する黄金の世界
黄金で埋め尽くされる展示室は圧巻!
第 1 室「金雲の間」
力強い、優美、立体的など、実に多様な金色の雲
力強い金雲が地面近くを這うように巡って聖地を荘厳。画風から狩野派の作と考えられる屏風。
「鞍馬・厳島図屏風」(部分)江戸時代初期 17 世紀 岡田美術館蔵
第 2 室「金銀の間」
銀色の川にかかる黄金の橋の圧倒的な存在感
大きな切箔(きりはく)[金箔を切ったもの]で表した雲や銀色の波[現在は変色して黒くなっている]は、室町時代の 古風な屏風に倣ったもの。
「柳橋水車図屏風」(部分)江戸時代前期 17 世紀 岡田美術館蔵
第 3 室「金地の間Ⅰ」
金地に白菊だけを描いた幽玄な空間
地面と背景が一体化した金箔地に、花の白・葉の緑と墨色が映える、日本古来の典雅な配色。
尾形光琳「菊図屏風」(部分)江戸時代前期 18 世紀初頭 岡田美術館蔵
第 4 室「金地の間Ⅱ」
[光琳と光琳風]コーナー
尾形光琳は、金雲のない、金箔地が広がる屏風を好んで描いています。中でも『伊勢物語』を題材とした 燕子花図は、さまざまな画家がアレンジしながら描き継いだものです。
[近代の金屏風]コーナー
明治以降の画家たちは、「伝統と創造」を強く意識しつつ日本画の革新を図り、新感覚の金屏風を作りました。玉堂の富士図は、室町時代の雪舟風と江戸時代の琳派風を融合したものです。
見どころ 2
世界的にも珍しい「金雲」に注目!
「金雲」は、現実には存在しない大変不思議なもので、何を意味するかもわかっていません。 世界の美術において特異なこの「金雲」を、日本の画家たちはさまざまに使いこなしてきました。画面の荘厳、空間の奥行きの表現、場面転換、不要なものの隠蔽など、金雲はいくつもの役割を果たします。
金雲が花鳥画に華やぎをもたらす
木々と山々の間に金雲を配して画面に奥行きを作るのは、狩野派が得意とした手法。 8 曲 1 双のまま残る、桃山時代の貴重な屏風。
狩野派「春夏花鳥図屏風」(部分)桃山時代 16 世紀 岡田美術館蔵
あら不思議、金雲と地面が一体化?
よく似た室町時代の屏風は、地面に銀砂子を撒き、雲母も使っていました。桃山時代の流行に合わせて金箔多用の屏風に大変身したものです。
「競馬図屏風」(部分)桃山~江戸時代初期 17 世紀 岡田美術館蔵
行列は静かに流れる金雲のなかに
寛永 3 年(1626)、後水尾天皇が二条城に行幸した折の記録的な屏風。幅の広い帯のような金雲が静かに流れ、行列を際立たせながら、歴史的な盛儀を典雅に装っています。
「二条城行幸図屏風」(部分)江戸時代前期 17 世紀 岡田美術館蔵
見どころ 3
特別展示 ライブペインティングの金地の絵を披露
現代日本画家・福井江太郎氏による琳派の継承
岡田美術館の風神・雷神の大壁画「風・刻(かぜ・とき)」は、江戸時代初期の俵屋宗達による金屏風を創造的に模写し、2013年秋の開館時に完成させたものです。作者の福井江太郎氏(1969~)は、以前から、現代の日本画家としては稀な「金地に描く」画家である一方で長年行ってきたライブペインティングでは、主に紙の素地と墨を使ってきています。
2023 年 5 月 13 日に開催した 10 周年のイベントにあたっては、両者を組み合わせた金地・着色のライブペインティングに初挑戦。描いたのは、光琳の燕子花図を髣髴とさせる花菖蒲の絵です。
福井江太郎「楽」令和 5 年(2023) 撮影:橋本憲一 岡田美術館蔵
岡田美術館
2013年10月、箱根・小涌谷に開館。全5階、展示面積約5,000㎡という屋内展示面積としては箱根随一を誇る広大な館内に、日本・東洋の陶磁器や絵画などの美術品を常時約450点展示しています。日本で受け継がれてきた美術品を大切に守り、美と出会う楽しさを分かち合い、次代に伝え遺したい、との願いから、美術館が構想されました。美術館の正面を飾るのは、現代日本画家・福井江太郎氏によって描かれた縦12m、横30mに及ぶ風神・雷神の大壁画「風・刻(かぜ・とき)」(2013年)です。他にも深見陶治氏、諸井謙司氏、樂雅臣氏など、現代作家の作品が屋内外に展示され、来館者をお迎えします。