【日本画】知れば知るほど奥深い! 狩野派(かのうは)と琳派(りんぱ)の違い
この記事の目次
日本画の特徴
「日本画」の定義はあいまいなもので、現代では特定の絵画様式を指すものではなくなってきています。そのため、主に「板」「麻」「絹」「紙」などに「墨」「岩絵具」「胡粉」などを用いて「膠で接着させて描く絵画」として広く解釈されています。
「日本画」という名称は明治時代に「西洋画」に対してつくられた比較的新しいものです。この名称をつくったアメリカの美術研究家アーネスト・フェノロサは以下の点を日本画の特徴としています。
1 写真のように、写実を追わない。
2 陰影が無い。
3 鉤勒(輪郭線)がある。
4 色調が濃厚でない。
5 表現が簡潔である。
ちなみに明治以前の日本の絵画は「題材」「絵画様式」「技法」などにより「大和絵」「唐絵」「漢画」などそれぞれ名称がつけられていました。
絵師集団の狩野派とは
「狩野派」は日本絵画の歴史上最大の流派で、室町時代から江戸時代までの約400年にわたって画壇に君臨し続けた絵師集団です。
創始者は狩野正信。室町幕府の御用絵師で、漢画を得意としていました。そして後を継いだのが正信の子の元信。狩野派の基礎をつくりました。独自の様式を確立してマニュアル化し、一定の質を保った作品を生み出す集団制作体制を整えます。大量の発注をこなすためには集団で制作する必要がありました。そのため、絵師個人の個性よりも粉本(絵手本)で師匠のタッチを学び、絵の腕を磨くことが重視されたそうです。
狩野派の有名絵師
[絵師と作品]
狩野永徳[かのうえいとく]
唐獅子図屏風[からじしずびょうぶ]
出典:Wikipedia
狩野派の一族の中でも、随一の天才と謳われた大絵師である狩野永徳。狩野派3代目松栄の息子で、狩野元信の孫にあたります。
豪壮華麗な画風は織田信長や豊臣秀吉という天下人の心を捕らえ、「安土城」「大阪城」「聚楽第」などの障壁画を手がけました。破格の成功をおさめた永徳ですが、47歳で急逝します。過労が原因と考えられているそうです。
「唐獅子図屏風」はシルクロードから日本へと伝わった、権威・権力を象徴する聖獣を描いた作品です。金雲を踏んで睨みを利かす巨大な獅子の原形はライオンであり、装飾を施してこの姿になったといわれています。また、この屏風は豊臣秀吉が毛利攻めの際に毛利輝元に贈ったという伝承があります。このことから2頭の獅子は、実は秀吉と輝元を象徴しているという説も生まれました。
私淑継承の琳派とは
「琳派」は同じ傾向の表現手法を用いる造形芸術上の美術家・工芸家や作品の総称です。
主に絵師が自ら何年も昔の絵師を師として選び、作品を模写して学ぶ「私淑」によって継承されてきたそうです。私淑した絵師たちは師と仰ぐ絵師と面識はなく、生きていた時代が異なるため直接教えを受けることはありませんでした。そのため、「琳派」と呼ばれる人々は自分たちがひとつの集団を構成しているという意識はなく、知らぬ間にひとつの流れを成していきました。「琳派」という呼称が定着したのは1972年に東京国立博物館で開催された創立百年記念特別展「琳派」が決め手であったとされています。それまではさまざまな呼称が用いられたそうです。
琳派の有名絵師
[絵師と作品]
俵屋宗達[たわらやそうたつ]
風神雷神図屏風[ふうじんらいじんずびょうぶ]
出典:Wikipedia
琳派の祖といわれる俵屋宗達。記録が極端に少なく生没年不詳の謎の絵師です。
宗達は京都で「料紙装飾」「屏風絵」「扇絵」などを制作・販売する当時「絵屋」と呼ばれた絵画工房「俵屋」を営んでいました。絵は独学で学んだといわれています。町絵師から出発した宗達ですが、後に朝廷からは僧の位のひとつ「法橋」を授かるほどの一流絵師へと出世しました。
「風神雷神図屏風」は宗達の最高傑作と言われていて、国宝に指定されています。柔らかな量感ある雲は、絵具が乾かないうちに濃度や色の異なる絵具を垂らしてにじませる「垂らし込み」という技法が用いられました。この技法は宗達が発案したといわれています。色は重い感じにならないように墨に銀泥を混ぜているそうです。
狩野派と琳派の違い
狩野派
漢画に大和絵の手法を取り入れ融合させることで、一流派としての画風を確立させました。力強さと華麗な装飾性が両立した格式高い画風で、武家に好まれたそうです。流派は血縁や師弟関係による世襲で代々継承され発展しました。
琳派
大胆な構図、型紙のパターンを用いた繰り返し、垂らし込みの技法などが特徴です。意匠化や装飾美で「デザイン的」と形容されることもあります。流派は主に私淑によって継承され発展しました。
まとめ
連綿と継承された「狩野派」と時空を超えて継承された「琳派」。
日本絵画の伝統的な技法や天然の素材が紡ぎだす繊細な美しさは、さまざまな流派によって継承されました。
それぞれの流派の作品を鑑賞する際は、時代とともに変化する画風を楽しんでみてはいかかでしょうか。
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