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【源氏物語】平安ラブストーリー! 源氏物語のあらすじと紫式部について徹底解説

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源氏物語とは

「源氏物語」は、今から約1000年前の平安時代に「紫式部」によって書かれた日本最古の長編小説です。しかも古典であるにも関わらず、世界20カ国以上に翻訳された世界的にも評価の高い作品。

70年に及ぶ主人公・光源氏の生涯と子どもや孫の時代を書き、登場人物はなんと500人以上。

そんな彼らの心情を表した和歌は795首、全帖が紫式部の執筆ではないのではという説もあります。そして、源氏物語は、歌人であり作家でもあった紫式部が遺した唯一の物語です。

源氏物語は、全54帖から成り、その内容は「光源氏」の誕生から始まり、栄華を極めるまでを第1部、光源氏の晩年を描いた第2部。そして、光源氏没後の子孫たちをメインに据えた第3部の3部構成であると考えられています。

物語は、主人公の光源氏の人生を通した恋愛模様、そして彼の栄枯盛衰、政治闘争など、平安時代の貴族社会が表現されています。

のちに源氏物語は写本が出回り過ぎてしまい、内容にばらつきがみられるようになったことで、本当の物語が分からなくなっていました。

こうした事態を正すために平安時代から鎌倉時代に活躍した貴族「藤原定家(ふじわらのさだいえ)」と「源光行(みなもとのみつゆき)」「源親行(みなもとのちかゆき)」親子が改訂版を作成。藤原定家が改訂した源氏物語を「青表紙本」、源光行・源親行のものは「河内本」と呼ばれます。

ちなみにこの藤原定家は、のちに「小倉百人一首」を選定した人物としても有名です。


源氏物語のあらすじ

物語は、光源氏の不遇の生まれからはじまります。

身分の低い「桐壺更衣(きりつぼのこうい)」は、ときの帝「桐壺帝(きりつぼてい)」からの寵愛を受け、光源氏を身ごもりました。そして生まれた光源氏は、誰もが褒め称える美しく知的な青年へと成長。ただ幼い頃に母を亡くしたことで、母の面影を求めて多くの女性達と関係を持ちます。

光源氏と恋に落ちる女性達は、いろいろなタイプのそれも魅力的な女性ばかり。

第1部は、光源氏の愛の物語とも言われますが、母に似ている父の後妻「藤壺中宮(ふじつぼのちゅうぐう)」に恋をして愛し合ってしまいます。そして、最初の正室となる「葵の上(あおいのうえ)」との結婚、「空蝉」や「夕顔」、「六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)」との恋。

第2部は、光源氏の苦悩の物語。正妻に近い立場にあった紫の上の病や、預かった腹違いの兄弟「朱雀帝」の娘が青年貴族「柏木」と恋に落ち、子供を身ごもります。その姿を見て、光源氏は若い頃の藤壺中宮との過ちを思い出しました。病だった紫の上が亡くなると、光源氏はついに出家を決意。

第3部は、光源氏の亡くなったあとの世界。光源氏の孫達が恋に悩み、苦悩しつつ成長する姿が描かれています。


主な登場人物

光源氏

[ひかるげんじ]

第1部と第2部の主人公。

父・桐壺帝と母・桐壺更衣との子で、のちに臣籍降下(天皇の子だけれど、姓を与えられ臣下になること)して源氏姓を賜ります。母を早くに亡くしたことで、その面影を求めて多くの女性と恋愛を重ねます。


桐壺更衣

[きりつぼのこうい]

光源氏の母。

光源氏が3歳のときに病気で死去します。桐壺帝に寵愛されましたが、天皇の多くいる后の中でも「更衣」の位はあまり高くなく、他の身分ある后たちからのいじめを受けることもありました。


桐壺帝

[きりつぼてい]

光源氏の父。

身分の低い桐壺更衣を寵愛しましたが病気で亡くします。また、桐壺更衣の父も亡くなっていることから、後見人のいない光源氏の将来を案じ、彼を臣籍降下させました。


藤壺中宮

[ふじつぼのちゅうぐう]

光源氏の父・桐壺帝は、藤壺が桐壷更衣に似ていたため、女御の藤壺を妻のひとりとして入内させます。そして、光源氏の初恋の相手でもあります。成長した光源氏と関係を持ってしまい、藤壺は男児(のちの冷泉帝)を出産し、中宮となります。


頭の中将

[とうのちゅうじょう]

桐壷帝治世の左大臣の嫡男。

そして光源氏の従兄であり、親友・恋の競争相手でもあります。「頭の中将」は、役職名でもあるため、年齢と経験を積むにつれ呼び名が変化していく人物です。


葵の上

[あおいのうえ]

頭の中将の妹で、光源氏の正室。

光源氏が年下であったことや、女性遊びが激しかったこともあり夫婦仲は冷めていました。結婚後10年目にして待望の男児(夕霧)を出産するも、他界。葵の上は、物語上では光源氏の愛人のひとり、六条御息所の生霊に襲われ亡くなったとされています。


紫の上

[むらさきのうえ]

光源氏の妻のひとりで、藤壺中宮の姪。

幼少期に、一緒に暮らしていた祖母が亡くなったことで、光源氏に連れ去られ養育されます。成長後は光源氏が唯一思いを寄せる人物として、また物語中の容姿、知性、性格などでも最上級の女性として表現されています。


作者・紫式部ってどんな人?

紫式部は、平安時代中期の作家であり、歌人。

父は「藤原為時(ふじわらのためとき)」で、身分はあまり高くありませんが、「花山天皇(かざんてんのう)」に漢学を指南するなどした博学な人物でもありました。

紫式部は970(天禄元)年に生まれ、父の才能を受け継ぐように漢文を読みこなし、才女としての呼声の高い人物でした。998(長徳4)年に結婚し女児を授かったものの、三年後に夫と死別。そしてのちに、紫式部の評判を聞き及んだ「藤原道長」に召し出され、娘の「中宮彰子」の女房兼家庭教師として仕えるようになります。

全54帖にわたる源氏物語は、このときの宮仕えで書き上げたと言われています。


「紫式部」の名付け親は誰?

この「紫式部」という名前は中宮彰子に付けてもらった名前です。

後宮(天皇の妻達のいる住まい)で働く女性を「女房」と言い、ここで働く際は、本名とは違う名前を名乗ります。だいたいは、父親など親類に関わる名前を付けることが多いです。

紫式部も例によって、父が「式部」の役職だったことから付けられたと言われています。


紫式部と中宮彰子の主従関係

紫式部は、源氏物語の他にも「紫式部日記」と呼ばれる日記を著しています。

紫式部日記には、宮中で起きた行事や、細々とした諸事について書かれており、もちろん主人である中宮彰子についても多くが書かれています。

「つらいことも多いけれど、この方(中宮彰子)に仕えることができる私は幸せだ」や「この方といると、沈んだ気持ちが嘘のように明るくなれる」など非常に中宮彰子を慕っていることが伝わるエピソードがあるのです。

名前については前述したとおりですが、「紫」は源氏物語に登場する「紫の上」にちなんで、中宮彰子が自ら付けたと言われています。

主人が、数十人はいたとされる自分の女房達にわざわざあだ名を付けることはあまり無いことで、ここでも中宮彰子が紫式部を気に入っていることが分かります。


現在の「源氏物語絵巻」

いわゆる源氏物語絵巻と呼ばれる絵巻物は、実は紫式部が生きた時代に描かれたものではありません。

また絵巻物とは、文字だけではなく絵画と詞書(ことばがき)と呼ばれる文章が交互に入った絵画形式のひとつで、絵画のみのものもあります。

この源氏物語絵巻は平安時代末期に書かれ始め、同時代にも複数描かれた形跡がありますが、宮廷画家「藤原隆能(ふじわらたかよし)」の描いた絵巻が最古であると言われています。かつては全帖を藤原隆能がひとりで描いたとされていましたが、現在はそうではなかったという説が浮上し、今も多くの研究が進められています。


各地に伝来した国宝・源氏物語絵巻

伝来した源氏物語絵巻の中には、国宝に指定されているものもあります。ここでは国宝の源氏物語について見ていきましょう。

[徳川美術館]

愛知県名古屋市の徳川美術館にある源氏物語絵巻は、絵15面、詞書28面が所蔵されています。もともとは、徳川家康が持っていましたが亡くなった際の形見分け「駿府御分物(すんぷおわけもの)」として、徳川家康の9男である尾張徳川家に伝来。1952(昭和27)年に国宝に指定されました。

[五島美術館]

東京都世田谷区にある「五島美術館」にある源氏物語絵巻は、絵4面、詞書9面が所蔵されています。絵巻は、蜂須賀家が所蔵していましたが、明治20年頃に売却され、その後実業家の「益田孝」氏の所蔵となり、戦後になって「東京コカ・コーラボトリング」の創業者・「高梨仁三郎」氏が所蔵。続いて「東急グループ」の「五島慶太」氏が買い取り、現在は五島美術館が保管しています。徳川美術館と同様に1952(昭和27)年に国宝に指定されました。


まとめ

源氏物語は、1000年も前に書かれたと思えないくらい、色褪せない魅力・面白さがあります。

それはやはり、どの登場人物も恋に人生に思い悩むそんな姿が人間臭くて共感しやすいからではないでしょうか。

知らないうちは、古い物語だし難しいのではないかと思うかもしれません。

でも知ってしまえば、昔の人も、現代人と同じような悩みがあったのだなと、むしろ親しい友人のように感じることができるはず…。

 

源氏物語はどの世代にも愛され続け、明治の歌人「与謝野晶子」氏や、明治から昭和の文豪「谷崎潤一郎」氏なども現代語訳を手掛けています。

また現代の小説ですと「瀬戸内寂聴」さんや「角田光代」さんの現代語訳版が有名です。そして漫画ですと「大和和紀」さんの「あさきゆめみし」がおすすめ。

小説では、それぞれの作家さんの表現の違いが楽しめて、漫画でしたら分かりやすく美麗なイラストで理解を深めることができます。


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藤原 一葉

藤原 一葉

歴史や伝統文化、美術など、興味のある方はもちろんのこと、そうでない方にも楽しんでもらえる文章を目指しています!

物心ついた頃から、読書、歴史、世界遺産などに興味を持ち、大学では日本美術史を中心に学んできました。将来的に、趣味と仕事を兼ねることができたら人生楽しいだろうと好きなことを活かせる仕事を探し、行政の歴史書編纂所に勤務。その後、Web制作業、校正業を経て、現在は副業でライターのお仕事をしています。

趣味は、読書、美術館・博物館めぐり、アクセサリー作り、ヒトカラなど。

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