【落語】粋な江戸落語!華やかな上方落語!違いや魅力をご紹介
この記事の目次
江戸落語のはじまり
落語はオチ(サゲ)があることから落とし噺が由来であると言われています。
江戸時代に鹿野武左衛門が座敷噺を芝居小屋や銭湯や屋敷に招かれて演じました。鹿野武左衛門の書いた「鹿の巻筆」は一話一話が長い笑話をおさめた書物で江戸落語の礎となっています。
その後、他の笑い話がブームとなり落語に大きな影響がありましたが、再び落語のブームが起こり、烏亭焉馬やその弟子の可楽、圓生、むらく、談笑などによって現在に近い形になりました。
この頃から落語を趣味・副業でなく職業とするようになり、弟子に芸を受け継いでいく仕組みが確立しました。
三笑亭、三遊亭、林家、柳家、柳亭、橘屋、古今亭、昔昔亭、鈴々舎、立川などの亭号ができ、今も使われています。
江戸落語に特徴的な三題噺という三つのお題から即席で話を作って笑わせるという名人芸が人気を呼び今も演じられている話もあります。
江戸落語の特徴
高座・小道具
落語では基本的に扇子と手ぬぐいを使用し、この二つで様々なものを表現します。
扇子は刀・槍、箸、筆、キセルなど細長いものや、開いた状態で手紙や提灯、目線の調節により舟をこぐ棹や櫓、魚釣りの竿などを表現します。
手ぬぐいは財布や本・帳面・証文、胴巻き、煙草入れ、財布、証文、巾着など幅の広いものや、紐や縄を表現します。丸めて芋にしたり、頭にのせて狐が化けるときの木の葉を表す人もいます。
落語家の手ぬぐいは、表現をしやすいように特別なサイズ・畳み方が決まっています。
演目・登場人物
江戸落語の演目は江戸っ子のほのぼのとしたやり取りで笑わす滑稽噺、怪談話、吉原を舞台とした廓噺、三題噺などがあります。
江戸落語独特の特徴的な話の種類に人情噺があります。牡丹灯籠、文七元結、真景累ヶ淵、八五郎出世、芝浜などの名作がそれに当たります。
江戸独自の文化が生んだ話に三軒長屋、黄金餅、大工調べ、佃祭り、よかちょろ、五人廻し、火焔太鼓、品川心中、目黒のさんまなどがあります。
酢豆腐(上方ではちりとてちん)、花見の仇討(桜の宮)、反魂香(高尾)、締めこみ(盗人の仲)、唐茄子屋政談(南京屋政談)、芝浜(夢の革財布)などは上方にも伝えらました。
どれも江戸の情景を思い浮かばせる素敵な演目ですね。
江戸落語にはいつもお決まりの人物が登場します。
酒好きで短期だが根はやさしい熊さん、騒がしくおっちょこちょいな八つあん、相当な天然で間抜けなキャラとして描かれるが優しいところもある与太郎、長屋の大家さん、物知りで知ったかぶりの癖のある横丁のご隠居、いつも亭主をしりに敷く長屋のおかみさんなどが登場します。
語を聞いて様々な登場人物を探すのも面白いかもしれません。
上方落語のはじまり
江戸時代に、大阪で米沢彦八、京都では露の五郎兵衛が道端で軽口(かるくち)辻咄(つじばなし)という自作の噺を披露しました。その後初代桂文治や松富久亭松竹が現れ様々な話が創作され、初代桂文治は初の寄席を神社で開きました。
明治時代には名人と言われる初代桂文枝が「三十石」などで人気を誇ります。この桂文枝には初代桂文之助(のちの2代目曽呂利新左衛門)、2代目桂文都(のちの2代目月亭文都)、初代桂文三(のちの2代目桂文枝、桂文左衛門)、初代桂文團治という四天王と呼ばれる弟子がおり、彼らはみな名人で人気が高かったのですが、初代桂文枝が死ぬと後継者争いが起こりました。
古典的で正統派を重んじる「桂派」と、派手に笑わせるのが特徴の「三友派」に分かれて競い合い、多くの新しい演目が作られました。
幕末~明治が上方落語の最盛期で、落語家は270人、演じられる演目の数も全派合わせて990を数えます。
大正から昭和の初めに、吉本興業が関西の寄席や諸派をすべて吸収して上方演芸を取り仕切るようになります。漫才人気や名人の他界により「上方落語は滅亡した」との声が上がるようになりました。
3代目林家染丸を中心に、6代目笑福亭松鶴、3代目桂米朝、3代目桂春團治、3代目桂小文枝ら新しい四天王が上方落語協会を結成し力を合わせて落語会を開いたり本を発行したり失われていた明治期の人気演目を復活させるなど上方落語の保存・継承に努めます。その後テレビの放送や、東京の落語家による上方落語の紹介で全国的に認知されるようになったり、途絶えていた名跡の襲名が相次いで起こりその人気を取り戻していきました。
現在では落語家も270人ほどになり60年ぶりに天満天神繁盛亭や神戸新開地・喜楽館という寄席が建てられ、五代目文枝による五人の会結成、桂きん枝が小文枝を襲名など上方落語はさらに発展し続けています。
上方落語の特徴
高座・小道具
上方落語では扇子(江戸落語と同じ扇子を使う人もいれば、張り扇や九寸と呼ばれる種類を使う人もいます。)・手ぬぐいの他に見台(けんだい)と呼ばれる横40㎝×奥行23㎝×高さ24㎝の小さな机を演者の前に置き、書き物机や湯船、布団や床、「遊山船」では船の欄干、「寄合酒」ではまな板に見立てて演じます。
3代目桂春団治、桂枝雀、桂三枝など演じる噺によって大きな動きがあり使わない落語家や、基本的に使わない落語家もいます。
また演者のひざを隠すための小さな衝立のような膝隠(ひざかくし)を見台の前におきます。
見台の上には右に扇子か張り扇、左に小拍子(こびょうし)と呼ばれる小さな拍子木を置いきます。小拍子で見台を打ち、噺の合いの手などに使ったり、場面転換の際に叩いたり、裏方に効果音の合図に使います。
見台、膝隠、小拍子は上方落語のみで使われています。
演目・登場人物
上方落語では入門したときに東の旅の発端を口ならしに西の旅、北の旅、南の旅などの旅ネタと呼ばれるものを最初に習い技量を養っていきます。このような前座ネタ、中ネタ、切りネタと技量によってできる話が決められています。
他に芝居噺という分類もあり、歌舞伎の演目をもとにして作られた話で、足上がり、蛸芝居、七段目、本能寺などがあります。
池田の猪買い、算段の平兵衛、土橋万歳、有馬小便など上方固有の話もありますが、江戸から上方に持ち込まれた話や上方の話が江戸に移ったものもあり、同じ内容の話でも東西で演題が違うものも多いです。
一例に高津の富(宿屋の富)、らくだ、二番煎じ、青菜、時うどん(時そば)、三十石、貧乏花見(長屋の花見)、子ほめ、牛ほめ、地獄八景亡者戯(地獄めぐり)、宿屋仇(宿屋の仇討)、借家借り(小言幸兵衛)、立ち切れ線香(たちきり)、佐々木裁き(佐々木政談)、高倉狐(王子の狐)、寝床、近日息子、饅頭こわい、景清、笠碁、「百年目」などがあります。
このような話には決まって同じ登場人物が出てきます。
喜六、清八は江戸の八っあん熊さんや与太郎に当たります。上方落語の与太郎はどちらかというとボケる、あほを演じるという形に近いようです。
江戸落語と上方落語の魅力
落語には出囃子と呼ばれる落語家が登場するときに流れる音楽があります。もともとは上方で歌舞伎の下座音楽を取り入れて発達したものが、江戸落語に伝えられたようです。
上方落語でははめものと言うBGMを落語の時に流し、雨音、雪、雷、鐘船をこぐ音などを表現します。
江戸落語は笑いの中にも人情を伝えるという特徴があり、上方落語はボケとツッコミも含んだ豪快な笑いやお囃子による音楽の効果も大事にするという特徴があります。
「粋」な江戸っ子の渋みのある江戸落語の芸風、「とにかく笑わったもん勝ち」の大阪人の派手で華やかな上方落語という比べようがないほど魅力があります。
まとめ
粋な江戸落語に華やかで笑いの上方落語。
どちらも魅力的ですね。
まずは、江戸落語、上方落語気にせず、寄席や落語会に行ってみてはいかがでしょうか。
それから聞き比べも楽しいかもしれません。
わつなぎ関連記事 >>【落語】漫画・アニメにドラマで人気の昭和元禄落語心中!登場する落語演目のあらすじ解説
わつなぎ関連記事 >>【落語あらすじ】おもしろおかしい話!落語演目11選。与太郎も登場
わつなぎ関連記事 >>【落語・講談】話し言葉に話を読む!魅力からわかる落語と講談の違い