【漬物】健康的で多種多様な保存食! 漬物の歴史や種類を紹介
漬物の歴史
漬物が食べられていた記録は、すでに奈良時代の文献に残されています。当時はウリや青菜の塩漬けが提供され、保存性を高める効果が重宝されていました。塩が貴重だったため、漬物を食べていたのは貴族や僧侶など一部の人です。平安時代になると塩漬け以外にも、粕漬(かすづけ)や醤漬(ひしおづけ)なども食されていました。
その後、武士の台頭とともに禅宗が普及し、殺生を避けるための食事である精進料理が広まります。精進料理は菜食を基本とするため、野菜の栽培も盛んになり、漬物の受容も高まっていきました。
さらに、精進料理の影響を受けた懐石料理では、ご飯と漬物で食事を締めくくることが定番となります。これは漬物が味覚や嗅覚を一新する効果があると考えられたためで、抹茶を飲む前に、口の中をサッパリさせようという意図から生まれた習慣です。また、漬物を「香の物」と呼ぶようになったのも室町時代からです。
そして、江戸時代になると、野菜の種類や調味料も増えたことにより、漬物の種類も多様化していきます。一夜漬けやぬか漬けが誕生し、縁日では季節の漬物が販売されることもありました。江戸時代には、ほぼ現在と同じような漬物が作られるようになり、漬物に関するレシピ本も刊行されています。
植物性乳酸菌
漬物は塩などの調味料以外にも、乳酸菌の発酵による独特の味と香りを感じることがあります。
発酵とは微生物の働きによって食物が変化し、人間にとって有益な食べ物になることです。乳酸菌はブドウ糖や乳糖などを分解して乳酸を作り出すことで、食品のpHが酸性に偏り味や香りが変化します。
ぬか漬けや柴漬けを作る際に欠かすことのできない乳酸菌は、善玉菌を増やして腸内環境を整える効果があります。ヨーグルトやチーズなどに含まれる動物性乳酸菌と異なり、漬物に利用される植物性乳酸菌は酸に強いという特徴があるため、胃酸で分解されず生きたまま腸に届きます。
漬物の種類
奈良漬
奈良漬は、ウリなどの野菜を塩漬けにした後、酒粕に何度も漬けて作る漬物です。その歴史は古く、奈良時代に「かすづけうり」という記録があり、室町時代になると現在の奈良漬という呼称が登場します。古い時代の酒は白く濁ったどぶろくが一般的だったため、上澄み液を酒として飲み、底に溜まる沈殿物を酒粕として、奈良漬にも利用していました。
柴漬け
「千枚漬け」「すぐき漬け」と並んでに京都三大漬物として人気がある柴漬けは、平家滅亡後に京都郊外の大原に隠棲した建礼門院(1155~1214)が、当地の住人からシソで漬けた野菜を献上され、その名付け親になったと伝わっています。現在ではキュウリを漬けたものが一般的ですが、本来はナスを主体に乳酸発酵させたものを柴漬けと呼びます。柴漬け発祥の京都では、今でも茄子や赤シソと塩を加え、熟成発酵させた柴漬けが作られています。
すぐき漬け
現代でも京都土産として人気のあるすぐき漬けは、桃山時代に上賀茂神社の社家で考案されました。カブに似た野菜のすぐき菜を塩で漬け、発酵熟成させて作ります。今ではよく知られる「ラブレ菌」は、実はすぐき漬けから発見された植物性乳酸菌になります。
ぬか漬け
米ぬかに塩や水を混ぜて作ったぬか床に、野菜を漬け込んで作った漬物がぬか漬けです。江戸時代に精米技術が発達し、玄米を白米にする際に削ってしまうぬかを有効活用して生まれたエコな食べ物になります。代表的な発酵食品として認知されているぬか漬けは、野菜に付着した微生物が米ぬかのなかで増殖し、食材の細胞に入り込むことで、独特の味となります。
おわりに
漬物と乳酸菌を代表とする発酵は深いつながりがありますが、なかには、梅干しのように塩分が強く微生物が育たないため発酵をともなわない漬物も存在します。ひと口に漬物と言っても、その種類は多様であり、人によって好みも分かれてきます。そのため、いろいろ食べ比べたうえで自分のお気に入りの種類や味を見つけてみるのも面白いかもしれません。