【調味料】地域で育まれた調味料!味噌・醤油・砂糖の特性を紹介
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地域による味噌の違い
味噌の原料は非常にシンプルで、大豆・麹・塩・水を基本としています。柔らかくした大豆を潰し、麹菌を混ぜ合わせて塩分と水を調節し、数か月発酵させることでペースト状の味噌が完成します。米に麹菌を繁殖させて製造した味噌を米味噌、麦を使えば麦味噌、大豆だけで麹菌を繁殖する場合は豆味噌となります。他には味わい(塩分濃度)によって「辛口味噌」「甘口味噌」「甘味噌」という区分や色合いの違いで「赤味噌」「白味噌」「淡色味噌」といった分類方法もあります。全国的には淡色で辛口の米味噌の生産量が多いものの、日本各地で様々な種類の味噌が製造されています。
信州味噌
[米味噌]
味:辛口 色:淡色
味噌の生産量の半分近くを占める信州味噌は、関東甲信越をはじめ全国的に利用される最もメジャーな味噌です。辛口淡色で豊かなコクを持っているため、みそ汁をはじめ様々な料理に合わせやすい万能型の味噌です。山に囲まれ寒さが厳しい信州では古くから貴重なタンパク源として味噌作りが奨励され、保存でき戦場に持ち運べる栄養食として武田信玄が味噌を広めたと言われています。
関西白味噌
[米味噌]
味:甘 色:白
西京味噌という名称でも知られる白味噌は、京都を中心に主に関西で製造されています。公家・宮廷文化の中で育まれた白味噌は、貴族の嗜好品として誕生し、上品な甘みと美しい色が特徴です。他の味噌と比較して米麹の割合が高いため、甘みが強く京都では和菓子にも利用されています。
東海豆味噌
[豆味噌]
色:赤
名古屋味噌や三州味噌とも呼ばれ、米麹や麦麹を使わず、蒸して丸めた大豆にそのまま麹菌をつけて製造する味噌です。赤褐色の色合い、濃厚な旨味、適度な酸味を特徴としており、どて煮や味噌カツ、味噌煮込みうどん等の名古屋めしに欠かすことのできない調味料です。
九州麦味噌
[麦味噌]
色:淡色
九州で製造される麦味噌は、一般的に塩分が控えめで麦麹の割合が高く甘めの味付けを特徴としています。ただ九州北部では辛口の麦味噌が製造されており、地域によっては麦麹に米麹を加えた合わせ味噌もあります。熊本の郷土料理の辛子蓮根や宮崎の冷や汁にも麦味噌が使われています。
地域による醤油の違い
醤油の製造は、一般的に蒸した大豆に麹菌をつけた小麦を加え、醤油麹を作ることかから始まります。その後、塩水を加えて諸味(もろみ)にし、櫂入れ(かいいれ)という攪拌作業を行いながら半年から1年ほど熟成させ、最後に火入れと呼ばれる加熱処理をして完成します。醤油は原料の割合や熟成期間などの違いから味や色合いが変化し、その特徴から「濃口」「淡口(うすくち)」「溜(たまり)」「再仕込」「白」という5種類に大きく分けられます。
濃口醤油
関東を中心に日本全国で使用されており、醤油の生産量の80%以上を占めています。江戸時代中期以降、握り寿司や蕎麦に欠かせない濃厚でコクのある醤油が千葉県の銚子や野田で盛んに生産されるようになります。関東では動物性の旨味がしっかりと溶け込んだかつお節が主な出汁に使用されるため、合わせる醤油も風味の強いものが好まれる傾向があったようです。
淡口醤油
京都や大阪を中心に関西で好まれる淡口醤油は、淡い色味と柔らかな風味が特徴です。関西では野菜や生臭さの少ない鯛やヒラメなどの白身魚を食べる機会が多かったため、素材の風味を生かす淡口醤油が普及したと考えられています。淡口醤油は塩分が少し高く、仕込期間を短くすることで、発酵を抑え淡い色に仕上げています。また、仕上げに米麹や甘酒を加え、わずかな風味付けをすることもあります。
溜醤油
東海地方で古くから使用されている醤油で、色が濃く独特の風味ととろみを持った醤油です。鎌倉時代に味噌の製造過程で樽の底にたまった液体が溜醤油の原型だとされ、現在でも大豆の割合が多く熟成期間も2~3年と長めに取り、旨味が凝縮されているのが特徴です。豆味噌とともに濃厚な名古屋めしのベースになっており、ひつまぶしのタレやきしめんの汁に溜醤油が使われています。
再仕込醤油
山口県柳井市が発祥とされる再仕込醤油は、二段仕込み醤油とも呼ばれ、塩水の代わりに生醤油を加えて仕込みます。通常の濃口醤油に比べて、2倍の原料と期間が必要なため、一般的に高級な醤油として知られています。溜醤油と濃口醤油の間に位置するような濃厚な味わいが特徴で、刺身や寿司につけたり煮物に使われたりします。
白醤油
主に愛知県で製造される白醤油は、淡口醤油よりもさらに薄い琥珀色をしています。3ヶ月程度の短い熟成期間と原料に大量の小麦を使用するため、大豆のアミノ酸が少なく淡い色に仕上がります。小麦のデンプンの影響で甘みと豊かな香りがあるため、吸い物や鍋料理などに使われています。
地域による砂糖の違い
日本で消費される砂糖のうち6割程度はタイやオーストラリアからの輸入に頼っています。生産量は少ないですが、現在でも地域によっては江戸時代から砂糖が作られ、和菓子などに利用されています。
黒糖
沖縄県と鹿児島県の離島で栽培されたサトウキビの搾り汁から作られた砂糖で、黒褐色の見た目とコクの強さが特徴です。一般的な白砂糖よりカルシウムや鉄、亜鉛などのミネラルを多量に含むことから、健康にも良い調味料として認知されています。沖縄県特産のサーターアンダギーやちんすこう、九州で作られる黒棒などのお菓子に黒糖が使われています。
和三盆
和三盆は「竹糖」と呼ばれる背丈が低く竹のように細い品種のサトウキビから作られます。この竹糖は徳島と香川の一部でしか栽培されていないため、大変貴重な品種で和三盆は高価な砂糖として知られています。上品な甘みとやさしい口溶けが特徴で、木型で固めた干菓子として食べられることが多いです。
おわりに
大豆などの穀物を原料とした醤油の範疇からは外れますが、魚介類を塩漬けにして熟成させた魚醬(ぎょしょう)も各地域に歴史ある調味料として受け継がれています。ハタハタを主な原料とした秋田県の「しょっつる」、イワシやサバなどを使った石川県能登半島の「いしる」、スズキ科のイカナゴを使った香川県の「イカナゴ醤油」は日本三大魚醤と呼ばれています。
鍋料理や汁物で使われる魚醬は、地域の味を伝える大切な調味料として現代に受け継がれています。