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【裂地】地味だけど奥が深い仕覆の世界! 名物裂とは? 裂地の分類の仕方を分かりやすく紹介

 2021/09/09 伝統 芸道
 
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名物裂とは

主に室町時代から江戸時代にかけて、中国などから渡来した茶入れの仕覆に使用された裂地を名物裂(時代裂)と呼んでいます。

有名な茶入れのなかには複数の仕覆を備えているものもあり、例えば、現在では重要文化財に指定されている「松屋肩衝(まつやかたつき)」には4種類もの仕覆が添えられています。しかも、それぞれの仕覆を取り繕ったのが、各時代を代表する茶人である村田珠光、千利休、古田織部、小堀遠州だということも、この茶入れの大きな魅力になっています。


裂地の分類について

大名家や社寺などで珍重さていた裂地を含めると、現在では約500種近くの時代裂があると言われています。その分類を最初に定めた書物が、松江藩主の松平不昧が1791(寛政3)年に著わした『古今名物類聚(ここんめいぶつるいじゅう)』で、106種166裂が図入りで紹介されています。

現代では裂地の分類に関して、

①地色に基づくもの

②動物文様や幾何学文様などのデザインに基づくもの

③糸や織り方の違いによるもの

という3つのパターンで区分されることが多いです。そこで、この3つの要素について順に解説していきます。


①地色について

地色とは、柄や文様以外のベース部分の色を指しています。どうしても柄に目が行きがちですが、この地色を確認しておくことが裂地の理解には欠かせない作業になります。
また、裂地の色には様々な名称があり、すべてを把握することが難しいため、ここでは主なものを挙げていくことにします。

【赤・茶系】
桜色:桜の花のような薄いピンク色
えんじ色:濃い赤系の色
しゅろ色:植物の棕櫚の毛のような灰みのある茶色

【白・黄系】
山吹色:山吹の花のような鮮やかな黄色
利休白茶:灰みがかった黄褐色。千利休をイメージさせる上品な色。

【青・緑系】
萌黄色:萌え出る若葉のような黄緑色
海松色:海藻の海松のような茶色を帯びた深い黄緑色
浅葱色:緑がかった薄い藍色


②デザイン(文様)について

裂地に織り込まれている代表的な文様は以下のようなものがあります。代表的な文様を押さえておくだけでも、裂地への理解が深くなります。

【動物系】
花兎文:前足を上げたウサギと花樹を組み合わせた文様。
鳳凰文:四霊の1つ。吉祥文として扱われる。

【植物系】
梅鉢文:梅の花を図案化した文様。5つの丸で梅の花弁を表現している。
唐草文:蔓植物が絡んだり伸びたりした形を図案化した文様。

【その他】
宝尽文:宝物を並べた代表的な吉祥文様。
流水文:水が流れる様子を図案化した文様。


③織り方について

茶道に関心が高い方なら裂地と聞いてまず思い浮かぶのが、金襴や緞子といった織り方の違いだと思います。『古今名物類聚』でもこの識別方法によって分類されているため、伝統的な仕覆の区分の仕方として知られています。

【金襴(きんらん)】
豪華な金糸が特徴的な金襴は『古今名物類聚』でも掲載数が多い代表的な名物裂と言えます。金箔を漆で和紙に貼り付けた平箔(ひらはく)と呼ばれる糸を織り込んで文様を作っているのが特徴です。

【緞子(どんす)】
先染めした経糸(たていと)と緯糸(ぬきいと)を複数本飛ばして織り上げた裂地を緞子と呼んでいます。光沢があり手触りも滑らかなため、仕覆として茶入れを痛めにくい効果も持っています。

【間道(かんとう)】
間道とは縞模様のことです。中国の広東地方で作られていたことが名前の由来とされ、千利休が初めて茶入れの仕覆に使ったと言われています。

【錦(にしき)】
2色以上の色糸を1本の糸のようにして織り上げた裂地です。必要とする色の糸を表面に浮かせて文様を作り出しているので、色糸の数が多いほど華やかで複雑な柄を織ることができます。

【紹巴(しょうは)】
強い撚りのかかった糸を使用した紹巴は、山形状の地紋を持っており、薄手で柔らかい裂地になります。


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おわりに

名物裂の種類は多く、いろいろな名称があるため、最初は取っつきにくい印象を持つかもしれません。

しかし、大まかなパターンは決まっているため、地色・文様・織り方に注目して見ていくと、だんだんと仕覆の理解が深まっていきます。

一見地味に見える仕覆でも、いろいろな面白みがあるので、ぜひ実際に手に取って確認してみてください。


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ライター紹介 ライター一覧

島塚 啓

島塚 啓

昔から歴史や文学などの日本文化が好きで、大学では学芸員免許を取得しました。
今でも茶道や美術鑑賞など五感を満たしてくれる体験を求めて、日々情報収集に余念がありません。頭のなかをいっぱいにした後は思いっきって一歩踏み出してみましょう!感動的な出会いはいつも僕たちを待ち構えているはずです……。

一生のうちで好きなことに費やせる時間は、ほんのわずかしかありません。そんな貴重な時間を大切に過ごすために、みなさまが日本文化に触れる一助になれるような記事が書ければいいと思っています。

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