【利休形】茶道具のスタンダード! 時を経ても色褪せない利休形の特徴と魅力を紹介
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日本の伝統文化である茶の湯の道具に「利休形(りきゅうがた)」と呼ばれるものがあります。
これは茶道の大成者とされる千利休が考案したり、設定したりしたデザインのことを指しています。400年以上を経た現在でも茶の湯の定型として重宝される利休形の特徴と魅力を紹介していくので、ぜひチェックしてみてください。
この記事の目次
利休形の成り立ち
本能寺の変の後、豊臣政権が構築されていく頃から千利休は「侘び茶」と呼ばれる新しい茶の湯のスタイルを押し出していきました。その過程で利休によって生み出された道具は利休形と呼ばれ、茶道具のスタンダードとして時代を超えて高い評価を受けています。
利休は茶の湯の理想に適った道具を生み出すため、竹や鉄、紙などの様々な素材を用い、草履や座布団といったささいな消耗品に至るまで、強いこだわりを見せています。これは現代の感覚で言うなら、照明器具やソファーなどインテリアのすべてにこだわりを持って空間をプロデュースするような作業になります。これら利休のセンスで選び抜かれた多くの道具は、機能性に優れていることに加え、高級感を抑えた簡素なデザインに特徴があります。
ここからは実際に利休の影響によって生み出された代表的な道具を概観していくことにしましょう。
楽焼
利休がプロデュースした道具の筆頭に挙げられるのが「楽焼(らくやき)」です。
ろくろを使わず手とヘラだけで成形する楽焼は、瓦職人だった長次郎(ちょうじろう)に命じて、侘び茶の精神にふさわしい茶碗としてつくられました。
機能面を重視した利休らしく、軽くて手のなかに納まりやすいような形状をしているのが楽焼の特徴です。また、陶土からつくられるため、熱さが伝わりにくいという性質も兼ね合わせており、客人にとっては抹茶を飲みやすく、亭主にとっては抹茶を点てやすい器になっています。
棗
棗(なつめ)とは抹茶の粉末を入れておく木製の容器のことで、その形が植物のナツメの実に似ていることから命名されました。
棗はすでに存在していましたが、その定型となる形を定めたのは利休だと言われています。その定型が江戸時代に浸透し、いまでは利休棗と呼ばれる以下のサイズが最も一般的になっています。
小棗:約5.0cm(一寸六分半)の大きさ
中棗:約6.6cm(二寸二分)の大きさ
大棗:約8cm(二寸六分半)の大きさ
また、利休は棗全体を黒漆で仕上げた「真塗(しんぬり)」と呼ばれるデザインを好んでいました。ほかの利休形の道具にも言えることですが、模様や図柄のない簡素なものが多く、色彩は黒を中心とした単色を好むという特徴があります。
竹花入
茶席に飾る花を入れる道具のことを花入(はないれ)と呼び、そのなかで竹を切って作られたものを竹花入と呼んでいます。それまで花入の材料は銅などの金属器が一般的でしたが、利休により竹で作られた花入も茶席にふさわしいものと認知されるようになりました。
そもそも竹花入は天正18年(1590年)の小田原城攻めの陣中で、伊豆の韮山の竹を取り寄せて作ったものが初めとされています。それまで「唐物(からもの)」と呼ばれる中国産の高級品が中心だった茶の湯の道具に、竹などの質素な材料でも十分にふさわしいことを証明しています。
おわりに
利休がデザインした茶道具はどれも機能的で、派手さはないものの洗練された美しさを持ち合わせています。
400年以上を経た今でも通用する利休のセンスは、茶道を学ぶ人だけではなく、デザインに関心のある人たちにも大いに参考になるのではないでしょうか。