【紬着物】紬[つむぎ]の魅力!種類や特徴を知ってお出かけしよう
この記事の目次
紬とは
「紬って何でできてるの?」
こんな質問をいただいたことがあります。ふと疑問に思ってしまうそんな気持ち、わかります。
紬は絹でできています。
蚕の作った繭から糸を取り出す方法は大きくわけて2種類あり、その方法によって「生糸」と「紬糸」に区別します。
「生糸」は蚕のはいた糸のはしを見つけ、そこから繭をほどいていきます。蚕が作った細い糸をそのまま使うかたちですね。
着物にするには細すぎるので、数本を合わせて1本の糸が完成します。
「紬糸」は、まず柔らかくした5~6個の繭を袋状に広げます。このふわふわとした状態を「真綿」といいます。
真綿は植物のワタからできる「木綿」とは別物です。両方とも着物の素材で使われますが、真綿=シルク、木綿=コットンですね。
この真綿をわずかにつまんで引き出し、指の先で細くまとめて糸にしていきます。手作業で行うと、一反分の糸を作るのに2~3カ月かかります。こうしてできあがった糸を、生地に織りあげる前に染色します。染めあがった糸を織り、紬の出来上がりです。
紬はフォーマルに使えない?!
絹からできている紬なのに、なぜ「フォーマルには使えない」のでしょうか。
それには紬のルーツが関係しています。もともと紬糸は、生糸にできない繭を無駄にしないために産みだされました。
生糸は繭から1本の糸をたどって引き出していくので、穴のあいた繭や、玉繭(複数の蚕が1つの繭を作ったもの)は使うことができません。こうした「くず繭」を利用するために考え出されたのが紬糸です。養蚕農家が商品化できない繭を使って、自分たちの普段着を作ったのが始まりなんですね。
現在では、丁寧に手作りされた紬は文化財としても扱われ、非常に高価なものもあります。しかし、もとは野良着であるというルーツから、フォーマルには相応しくないという考えが受け継がれています。洋服でもとても高価な普段着がありますよね。ビンテージのデニムであったり、スニーカーであったり。それをフォーマルで使わないのと同じことなんです。
紬着物を着てお出かけ
着物好きの人には大人気の紬ですが、あくまでカジュアルに使う着物です。
もとは普段着として作りだされた歴史があるためですね。しかし、洋服文化が定着した現代では着物自体が格上げされていますので、あまり厳密に考える必要はありません。親しい人との食事会・同窓会・観劇・ショッピング・美術館など「着物でおしゃれに出かけたい」という場面では、ほとんどの場合で着ることができます。
気を付けなければいけないのは、式ごとの場合です。
紬でも無地で紋が入っているものや、最近増えている訪問着仕立てのものは、礼装として扱われます。ただし、これをどこまでフォーマル扱いしていいのかは、実は意見がわかれるところなんです。「あくまで紬は普段着」という考えの人が見れば、良く思われないこともあるでしょう。
結婚式や式典に着ていくのは、ぐっと我慢して避けたほうが無難かもしれませんね。
紬に合う帯・小物
紬には袋帯・名古屋帯・半幅帯と、いろいろな帯を合わせることができます。
「染めの着物に織りの帯・織りの着物に染めの帯」という言葉を聞いたことはありますか?着物と帯の格を合わせましょうという意味で使われていますが、絶対のルールというわけではないんです。
紬は織りの着物ですが、染めの帯にこだわる必要はありません。カジュアルからおしゃれ着まで使える紬は、コーディネートの幅がとても広いのも良いところです。
注意していただきたいのは、袋帯の雰囲気です。
金糸銀糸が使われた礼装用の帯は締めません。吉祥文様が豪華に織られたような、重厚でいかにもフォーマルな帯も似合いませんね。
帯揚げ・帯締め・草履・バッグも、金銀がたくさん入った礼装用は避けましょう。
これさえ気を付ければ、紬のコーディネートはNGのことのほうが少ないとも言えます。個性を活かして、自由に楽しんでください。
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各地で織られる紬
大島紬
産地:鹿児島県奄美大島・鹿児島県鹿児島市周辺・宮崎県都城市
紬と名前は付いていますが、技術の移り変わりにより、現在では生糸で織られています。最大の特徴は「泥染め」という技法です。島に自生するテーチ木(車輪梅)の色素で糸を染め、鉄分の多い泥に浸し、繰り返しもみ込むことで艶のある黒や茶が生まれます。藍大島や白大島も人気です。
結城紬
産地:茨城県結城市・栃木県小山市一帯
結城紬の歴史は古く、奈良時代までさかのぼれます。完成までの工程のうち「手紡ぎ」「絣括り」「地機織り」の3工程が、国重要無形文化財・ユネスコ無形文化遺産に登録されました。かつては、藍・茶・浅葱・鼠色が主流でしたが、近年は色使いが多彩になっています。
信州紬
江戸時代初期、信州の各藩が養蚕を奨励したことから、長野県は各地に紬の産地があります。信州紬はその総称です。特徴の1つとして「天蚕」の作る緑がかった繭が使われます。一般的な白い繭の蚕は中国原産ですが、天蚕は日本の野山に住む蚕で、大変希少です。「山繭」とも呼ばれます。
上田紬
緯糸の打ち込みがしっかりしているためとても丈夫で、裏地を3回変えても着られるということから「三裏縞」とも呼ばれます。縞と格子が伝統的な柄です。
伊那紬
長野県南部、伊那谷地方で作られます。玉繭から取れる玉糸や手紡ぎ糸、天蚕糸を使い、山桜・白樺・リンゴ・イチイなどから抽出した染料を用いる素朴な風合いが魅力です。
置賜紬
産地:山形県米沢市・長井市・白鷹市
この地方を置賜地方と呼び、そこで生産される紬の総称です。米沢紬・長井紬・白鷹紬・白鷹御召・紅花紬などが含まれます。江戸中期の米沢藩主・上杉鷹山が織物を奨励して以来、山形は織物の一大産地になりました。
久米島紬
産地:沖縄県久米島
島の植物だけを染料に使い、泥で媒染して深みのある色合いを作ります。基本色は、黒褐色・赤茶・黄・鶯・鼠色など。仕上げに木槌で布を叩く砧打ちをして、布に柔かさと艶を出します。国の重要無形文化財に指定されました。
牛首紬
産地:石川県白山山麓、旧白峰村牛首付近
1つの繭に蚕が2匹入った玉繭を使うのが特徴です。一般的な紬のように真綿にせず2本の糸を繭から直接引き出すため、2本の糸が絡み、節の浮いた独特の質感の生地に仕上がります。釘に引っかけても破れず、釘を引き抜くほど丈夫だということで、別名を「釘抜き紬」といいます。
まとめ
産地によって特徴があり歴史もさまざまな紬は、とても奥が深い着物です。
同時に、軽くて着心地がよく、とても便利な着物でもあります。
伝統に思いをはせながら、楽しくお洒落に着こなしたいものですね!
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