【松藤史恩】大衆演劇の世界で生きる、ひと月の出会いと別れ 映画『瞼の転校生』大衆演劇の魅力! お泊まり会も[インタビュー]
大衆演劇の世界で生きる中学生が経験した、ひと月の出会いと別れ
限られた時間の中で出会う人々と心を通わせながら、少しずつ成長してゆく姿を描いたヒューマンドラマ。映画『瞼の転校生』公開!
公演に合わせてひと月ごとに転校を繰り返していた、旅回りの大衆演劇一座に所属する中学生の“裕貴”は、期間限定の学校通いのため、学校に登校しても今まで通り誰とも話さず早退を繰り返す日々だったが、担任から不登校のクラスメイトへの届け物を頼まれ、そこで不登校なのに成績優秀な“建”と出会います。
地下アイドル「パティファイブ」のライブをきっかけに“建”が“裕貴”に興味を持ち始めたことで一気に仲良くなる二人。そこに“建”の元カノ“茉耶”も加わって、三人で過ごす時間がだんだん増えていく。“裕貴”は二人に役者として舞台に立つ自分を観てほしいと思いはじめるが、一ヶ月がまもなく終わろうとしてしまう。
映画で大衆演劇の世界で生きる子役“裕貴”を演じるのは「松藤史恩」。不登校で優等生の“建”を演じるのは「齋藤潤」。また、建の元カノで裕貴のクラスメイト“茉耶”役に「葉山さら」。そして高島礼子や佐伯日菜子などの名優をはじめ、村田寛奈、生津徹、タモト清嵐などの演技派俳優が勢揃いし好演しています。
さらに、日本文化大衆演劇協会の協力の下、大衆演劇「劇団美松」の市川華丸や座長・松川小祐司、太夫元・松川さなえも出演し「瞼の母」をスクリーンで披露します。
このたび、主演の松藤史恩さんに、大衆演劇をテーマにした作品の出演や大衆演劇についてお話をお聞きしました。撮影期間中に改めて数えた特技についてもお届けします。
映画『瞼の転校生』
松藤史恩 齋藤潤 葉山さら
村田寛奈 市川華丸 生津徹 タモト清嵐 佐伯日菜子 / 高島礼子
監督:藤田直哉
製作:岡田逸夫 廣瀬敏 企画:土川勉 桝井省志 プロデューサー:冨永威允 土本貴生 山川雅彦 井前裕士郎
脚本:金子鈴幸 撮影監督:古屋幸一 美術:趙心智 録音:坂元就 編集:鈴木真一
音楽:額田大志 タイトルデザイン:赤松陽構造 舞台演出:松川小祐司 助監督:山口晃二
製作プロダクション:アルタミラピクチャーズ デジタルSKIPステーション
製作:埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 川口市
配給:インターフィルム
2023年/カラー/5.1ch/ビスタサイズ/80分
© 2023埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 川口市
3月2日(土) ユーロスペースほか全国順次公開
この役ができたら嬉しいな
──映画出演の経緯を教えてください
オーディションによって出演が決まりました。
オーディションは藤田監督と脚本の金子さんのいる中で行われ、金子さんとセリフを合わせも行いました。すごく緊張はあったんですけれど楽しくできたと思います。
──大衆演劇をテーマにした作品と聞いた時の気持ちを教えてください
オーディションの話をいただいた時は大衆演劇をよく分かっておらず、どういうものなんだろう?と思っていました。
実際、調べたり見に行ったりすると、大衆演劇は歌舞伎から派生した演劇であり、舞踊ショーでは日本舞踊の振りや足の使い方が活かされているんだなって事に気づきました。元々、日本舞踊を習っていて、寺子屋(こども歌舞伎スクール)にも通っていたので「あっ!すごいこの役ができたら嬉しいな」って強く感じましたね。
──主演が決まった時はどんな気持ちでしたか?
オーディションからしばらくして、お母さんから「映画の主演が決まったよ」って言われたんですよ。
あぁ映画の主演。。。主演。。。主演!? って、頭の中で理解するまで時間がかかったんです。今まで1度も主演をしたことがなかったですし、大衆演劇のどこかで出演できたら嬉しいなと、主演を意識していなかったので驚きが先行していました。すごく嬉しかったです!
女形が安心してできる
──こども歌舞伎スクール寺子屋で学ばれていたんですね
小学校6年生の時に卒業しましたが3年間くらい通っていました。
歌舞伎演技に必要な発声や所作、立役・女形の稽古、日本舞踊など学んでいました。歌舞伎の出演はできていないんですけれど、寺子屋で学ぶ事によって歌舞伎に触れることができました。
──大衆演劇の中の娘役(女形)へはスムーズに入れましたか
女形得意なんです。歌舞伎や日本舞踊では女形をやる事も多く、自分にすごく合っているなと思っています。でも立役や男性役もやってみたいなと思いますが、今は女形が安心してできますね。
スイッチが入る感覚
──化粧もご自身でやられるんですか
本映画にも出演されている市川華丸さんに化粧してもらっていました。作中で化粧するシーンは自分でやっていますが見よう見まねでしたね。
──化粧すると気持ちに変化はありますか
何かスイッチが入る感覚があります。
小学校1年生の話なんですけれど、ある演目でうまく演技ができなくて、セリフ回しも全くできなかった時があったんです。本番になって白塗りになった瞬間からスイッチが入ったような感覚で、完璧にこなしたっていう話があるんです。正直、自分はあまり覚えていないんですが、その時の動画を見るとすごくうまくできているなって思えるんです。
化粧をすると演技の形や姿勢なんかも変わってきますね。
特技が31個も
──松藤さんから見た“裕貴“はどのような子ですか
裕貴はすごく意志の強い男の子だと思います。
作品の中で、“自分はこの役者の道で”っていうシーンがあるんですけど、既に、裕貴の中で大衆演劇の道を進んでいくと決めていて、お父さんに“ちょっと考えてみろ”って言われても考えは変わらない強い意志を持っているんです。
ただ、性格は少し控えめな男の子なので、同年代の普通の友達と関わるのが苦手な感じで。建くんっていう友達ができるんですけど、その子とも最初はうまく接しられない感じでしたね。
──“建“くん役の齋藤潤さんとは撮影期間中どのように過ごされましたか
潤くんは話もおもしろいし本当によくしてもらっていました。待ち時間には役の話よりもたわいもない話や特技の話をしていましたね。
例えば、当時使っていた携帯がパカパカと開け閉めができるタイプで、投げでパタンってカッコよく閉じることができるというくだらない特技とか(笑)、運動系の特技だと2級取得したスキーや7年ほどやっているテコンドー、パルクールなんかの話をしていました。
ある時、特技がいくつあるか数えてみようってなって数えてみたら31個もありましたね(笑)自分でもびっくりしました。
大衆演劇の魅力のひとつ
──体を動かすのはお好きなんですね
そうですね。好きなのでよく運動はしています。
女形が得意なんですけれど、アクションシーンが入る役とかもやってみたいですね。今回、大衆演劇に触れたので武士や侍の役もやってみたくなりました。
──映画に出演される前と後では大衆演劇のイメージは変わりましたか
すごく変わりました。大衆演劇を見たり演じたりして、お客さんとの距離がすごく近いなと感じました。
舞踊ショーの時、お客さんが演者にフラワーレイをかけたり、お札を団扇状に貼り付けて襟元に挟んだり、公演終了後には送り出しもあって直接お話ができるんですよね。あと、舞台中でもお客さんをいじったりもするんです。
大衆演劇の劇場は、演者・裏方、お客さんが一体となる空間なんです。演者さんとの距離も近く、娯楽として楽しめるのが魅力のひとつなのかなって思いました。
メッセージ
──本日はありがとうございました。最後にこの映画をどのような方に見ていただきたいですか。
多くの方に見ていただきたいですが、特に僕と同年代の方に見てもらいたいですね。
裕貴は大衆演劇の道を歩んでいくって決めているけれど、人にはそれぞれの道があって、進学、就職、と人それぞれ。進む道を考えるきっかけにもなったらなと思います。でも、一番は、大衆演劇っていうものに触れてもらって、実際に見に行ってくれたら嬉しいです。その前に、映画『瞼の転校生』を劇場でご覧ください。
おわりに
演芸場に数日泊まらせていただく“お泊まり会”に行っているという話ですので詳しく伺ってみると、「演芸場には楽屋や部屋がいっぱいあってその中で劇団員さんが暮らしているんですよ。たくさんの衣装や小道具、あとは布団があって、秘密基地のような場所に、僕も一緒に泊まらせていただいたんです。座長さん副座長さんと稽古をつけてもらったり、演劇中は舞台袖から見たりと特別な経験をしました。あとは、みんなでゲームしたり銭湯に行ったりもしました。本当に楽しいお泊まり会なんですよ。また行く予定なです。」と、松藤さんは、大衆演劇の魅力のひとつでもある“演者さんとの距離の近さ”を、より近い距離で体感しています。
幼少期から所作や舞踊を習い、今、大衆演劇の魅力にひかれている松藤史恩さんの演じる裕貴。限られた時間の中で心を通わせながら、少しずつ成長してゆく物語をご覧ください。
瞼を閉じると瞼に写るのは松藤史恩さんの姿になることでしょう。