【植物】日本文化の植物のイメージは!? 蘭・竹・菊・梅の「四君子」に、松・竹・梅の「歳寒三友」を解説
四君子
[しくんし]
蘭・竹・菊・梅の4種類の植物は、気品を備えた風格を持っていることから「四君子」と呼ばれています。君子とは人徳や学識、礼儀を備えた人物のことで、古来より中国の文人の理想とされてきました。それぞれの植物が以下の点で君子の風格を持っていると考えられています。
蘭
ほのかな香りと控えめな姿から「善人蘭のごとし」と表現され、徳を持つ人物の象徴です。
竹
曲がらずにまっすぐ伸び、1年を通して青々とした姿を保っていることから、忍耐力や屈しない精神の象徴です。
菊
晩秋の寒さのなかで鮮やかに咲く菊は、精気を宿した高潔な花とされます。
梅
早春になると最初に花を咲かせることから、強い心意気を持つ花とされます。
四君子に選ばれている植物は四季の画題としても頻繁に用いられ、蘭は春、竹は夏、菊は秋、梅は冬の季節を表現する題材としても扱われています。それぞれ儒教の徳に適合するような人物をイメージさせることが、中国で四君子が重宝される大きな要因になっています。
歳寒三友
[さいかんのさんゆう]
歳寒三友とは松、竹、梅を指し、厳しい寒さのなかでも枯れることなく生命を宿し続けることから、辛い境遇でも屈することない優れた植物として捉えられてきました。
松と竹は常緑性のため冬でも色褪せることはなく、梅は寒さが残る時期でも花を咲かせることから、中国では困難にも耐え忍ぶ節操と清廉なイメージを持ち合わせた植物として尊重されています。つまり、逆境に置かれたときでも友達とするような素晴らしい人格を示す植物として、松と竹と梅が取り上げられているのです。
松竹梅
[しょうちくばい]
中国で生まれた清廉潔白というイメージを持った歳寒三友に対して、日本で松竹梅と言えば、おめでたい縁起物として認識されています。
正月や慶事の飾りものとして頻繁に利用され、門松をはじめ引き出物や装飾品などにもデザインされています。
梅は紅白の花をつける事からもめでたいイメージを抱かせ、松や竹は神様が宿る神聖な植物として扱われてきました。
中国では厳しい寒さを耐え忍ぶ精神力を尊重されていた松竹梅は、日本にもたらされると喜びや吉祥をもたらす植物として受容されたようです。
日本での菊と蘭
四君子のなかに取り上げられている菊と蘭は、日本ではどのようなイメージを持たれているのでしょうか。
菊についてまずイメージしやすいのは、皇室の紋章として利用されている点です。もともと後鳥羽上皇が菊を非常に気に入っており、衣服や刀などの道具に菊の紋章を入れたことが皇室との結びつきの始まりだと考えられています。今では菊は日本を代表する植物として、パスポートや硬貨の図柄にも使用されていることで知られています。
また、蘭については菊ほど日本人の生活のなかに現れる花ではありませんが、現代でも鑑賞や贈答用の植物として利用されています。大振りで比較的華やかな見た目をしいることから、菊と同様に威厳と権威を備えた花として受容されています。
おわりに
中国では植物と人間を結び付けて考え、特に清廉潔白なイメージを持ち合わせたものを好むという傾向にあります。
これは「仁(相手への思いやり)」や「礼(礼儀作法)」に代表されるような徳の高い人物を尊重する儒教の考え方が根底にあったからだと考えられています。
一方、日本ではもっと生活に密着した吉祥や権威などのイメージから、植物を捉えていることが分かります。
同じ植物でも国によってそのイメージが異なっているのは、とても面白い現象と言えるのではないでしょうか。