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【大姫】運命に翻弄された生涯! 木曾義高との悲恋に悲劇的な後半生

 2022/04/05 風土 歴史
 
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大姫の生い立ち

大姫は、1178(治承2)年に、源頼朝と北条政子の間に生まれました。実は「大姫」とは「長女」を意味する通称であり、本名は「一幡」だという説もあります。

大姫の父・頼朝は後に鎌倉幕府を開き、征夷大将軍になった人物ですが、大姫が生まれた当時は伊豆に流された流人の身でした。そのため、頼朝と政子の結婚は、政子の父である北条時政に反対されたほどです。

そうした境遇の中でも、大姫はすくすくと成長し、6歳の時に木曾義高との運命的な出会いを果たします。


大姫と義高の出会い

源頼朝と源義仲(木曾義仲)は、同じ源氏でも仲が悪く、政治的な対立関係にありました。ところが、両者は1183(寿永2)年に和議を結ぶことになります。

この時の和睦の条件が、頼朝の娘・大姫と義仲の息子・義高の婚約だったのです。こうして、大姫と義高は出会いました。大姫6歳、義高11歳の時です。

元々は政略結婚だったとはいえ、二人はとても仲睦まじかったと伝わっています。幼い二人がお互いを思い合う純粋な心は、親同士の政治的な思惑とは全く別のところにあったのです。


大姫、義高の逃亡を助ける

しかし、大姫と義高の幸せな日々は長くは続きませんでした。

頼朝と義仲が再び対立し、1184(寿永3)年の正月に、義仲は頼朝が送り込んだ軍勢によって討たれてしまったのです。こうなると、義仲の息子である義高の立場も危うくなります。義高は頼朝にとって娘婿とはいえ、義仲に対するいわば「人質」でした。義仲を討った以上、息子の義高を生かしておくと、いずれ父の仇である自分を討ちに来ると頼朝は危惧し、義高の命を奪うことにしました。

このことを察知した大姫は、義高を密かに逃がすことを決意します。

義高の同年配である側近・海野幸氏が義高に成り代わって双六を打っている隙に、女房姿に扮した義高は大姫の侍女に囲まれて屋敷を抜け出しました。ところが、夜になって計画は頼朝の知るところとなります。

激怒した頼朝は、義高の身代りとなった幸氏を捕え、堀親家に義高を討ち取るように命じました。その後まもなく、義高は親家の郎党である藤内光澄に誅殺されてしまいます。

享年12歳。あまりにも短い生涯でした。


大姫の悲劇的な後半生

義高が亡くなったことを知った大姫の心は深く傷つき、嘆きと悲しみの中で床に臥せるようになります。わずか7歳の少女にとって、あまりにも過酷な運命です。

母の政子は、大姫が病になったのは義高を討ち取った藤内光澄の配慮の無さが原因だとして、頼朝に迫って光澄をさらし首にしてしまいました。こうした状況の中でも、頼朝は大姫の新たな縁談をまとめようとしたことが、2度あります。

その目的は、朝廷との関係強化でした。

1度目は、1194(建久5)年8月。

大姫の病状が一時小康状態に入ったため、頼朝の甥に当たる公家の一条高能との縁談を図りました。しかし、大姫は「そんなことをするなら、深淵に身を投げる」と言って、断固拒否しました。大姫が、いかに義高のことを深く思い続けていたかが分かります。

2度目は、後鳥羽天皇への入内工作です。

時の天皇に娘を嫁がせることによって自らの権威を高めるやり方は、藤原氏など歴代の権力者が行なった方法を踏襲したものでした。頼朝は、1194(建久5)年の10月から上洛の準備を進め、翌年の1195(建久6)年2月に政子と大姫らを連れて上洛しました。

上洛の表向きの目的は、東大寺の落慶法要に参加することでしたが、都では大姫を後鳥羽天皇の妃にすべく入内工作を行ないました。頼朝は多大な労力をかけて入内工作を行ないましたが、その間大姫の病はいよいよ重くなり、1197(建久8)年7月14日に亡くなりました。享年は20歳。

木曾義高のことを一途に思い続け、恋に生きた生涯でした。


まとめ

生まれた時代が違えば、仲睦まじく幸せな一生を送れたかもしれない大姫と義高。

大姫は、過酷な時代状況や周囲の思惑に翻弄されつつも、ひたすら一途な思いを貫きました。そのはかなくも純粋で一途な生き様は、日本の歴史の中に咲いた一輪の花とも言えるものです。

大姫と義高は、今もこれからも皆さんの心の中で生き続けていくことでしょう。


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大島太郎

大島太郎

学生時代より、日本の歴史、伝統的な思想や文化に関心を持ち、探求を続けています。

「グローバル化」が叫ばれる昨今、日本人としての固有性、日本独自の文化とは何なのかという問題意識を持っています。

形に表れた文化だけでなく、その根底にある「心(和の心)」あるいは「道」というものにも一層の関心があります(日本文化には茶道・華道・剣道・柔道など「道」が付くものが多いです)。

日本文化を発信していくお手伝いが出来ればと思っています。

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