【和ろうそく】温かみのある光に神秘的な炎を灯す! 歴史に作り方、和ろうそくの魅力に迫る。
和ろうそくの歴史
和ろうそくの歴史を遡ると、ろうそくのルーツとなった「蜜ろうそく」が奈良時代に中国より伝来したのがはじまりとされています。
蜜ろうそくとは紀元前3世紀頃、中国や西洋諸国で生まれた最も原始的なろうそくです。その後、仏教とともに普及していた蜜ろうそくは、遣唐使が廃止されるとともに廃れていきます。
平安時代からは松脂(まつやに)、室町時代からは櫨の実(はぜのみ)を原料とした和ろうそくが普及していきます。
江戸時代に入ると、外出時の提灯の需要の増加に伴い、本格的に生産されるようになりました。また、時代の流れとともに原料を変え、広く普及していきました。しかし、明治時代に入ると安価で安定した灯りを灯す西洋ろうそくの台頭とともに、衰退の一途を辿ることになりました。
原料と作り方
原料は、木蝋(もくろう)と呼ばれる櫨の実の油を用いて作られています。西洋ろうそくとの大きな違いはこの原材料にあり、和ろうそくが植物性の原材料を使用するのに対し、西洋ろうそくはパラフィンという石油由来のものを原材料としています。
作り方には、「清浄生掛け(しょうじょうきがけ)」と「型流し」の2種類の製法があります。
伝統的な製法である清浄生掛けは一本一本職人の手で丁寧に作られます。全ての工程を手作業で行うため1週間〜10日間ほどかかると言われています。
[1]芯巻き
竹串や木の串に和紙を巻き、灯心草の皮を剥いた髄の部分を重ねて巻き付けていく。バランスよく巻きつけることが求められる繊細な作業。
[2]蝋つけ
芯をつけた串を木蝋につけて乾燥させる。この作業を繰り返すことで年輪のような美しい断面になる。
[3]木蝋ねり
熱を加えつつ程よい粘りが出るまで丁寧に練り続ける。練りが足りない場合、ひび割れが発生することもあるため重要な工程。
[4]蝋ぬり 下掛け
木蝋にお湯を加えながら、素手で蝋をすくいとり芯に塗り重ねていく。
[5]蝋ぬり 上掛け
下掛けが済んだ芯に質の良い木蝋をさらに重ねていく。
[6]芯切り
火を付けるための芯を切り出す。
[7]底落とし
串からろうそくをはずし、底を切って大きさを整える。
和ろうそくの魅力
和ろうそくの魅力はなんといっても、その神秘的な光を放つ炎の美しさにあります。温かみのある柔らかな光には、ほっとできる安堵感とやすらぎを感じられるでしょう。
清浄生掛けの製法で作られた和ろうそくは、竹串を引き抜いた後にできる空洞部分に空気の流れができることで、大きく揺らぎのある炎を生み出します。その構造上の特性によって、風のないところでも絶えず表情を変えていく炎は見るものを飽きさせません。
ゆらめくろうそくの炎には「1/fゆらぎ(えふぶんのいちのゆらぎ)」の効果があると言われています。規則性と不規則性の調和したリズムが織りなす炎のゆらめきには、リラックス効果を感じられるでしょう。
植物性の原料で作られている和ろうそくは、煤(すす)が出にくいことや油煙も少ないことから、仏壇を傷めずお手入れがしやすいため重宝されています。西洋ろうそくと比べ高価ではありますが、長い目で見ると経済的といえるでしょう。
もともとは仏具として使用されることが多かったですが、最近ではその佇まいの美しさや機能性が見直され、活躍の場が広がっています。植物性由来の原材料のため、安心して使えることや環境にやさしいことも魅力の一つです。また、生活の中にインテリアとして取り入れやすいようにアレンジされたものも生まれ、今まで親しみがなかった層にも受け入れられてきています。
和ろうそくの種類
大きく分けて2種類の形があります。
ラッパのように上部が大きく、真ん中がくびれている形をした「イカリ型」と、上部が少しだけ大きく下に向かうにしたがってまっすぐ細く伸びる「棒型」です。また、和ろうそくの色には赤、白、金、銀のような多様な色があり、それらは宗派や地域、使用用途によって適した色があるとされています。
そのほか、寒い地域で生まれた絵ろうそくも和ろうそくの一つです。
華やかな絵付けが施された絵ろうそくは、寒い地域に住む人々が生み出した、知恵と工夫が詰まった和ろうそくと言えるでしょう。
和ろうそくとひとくくりにしてしまうにはもったいないほど、豊富な種類があることがお分かりいただけたと思います。
白と赤
主に白色と赤色のものが使われており、白色は葬儀、3回忌までの法要や日常的に仏壇に灯すものとして用いられます。対して、赤色はお正月、お盆、お嫁入りなどのご先祖様に嬉しい報告や、お願い事をするときに使う慣わしです。
赤色の和ろうそくは別名「朱ろうそく」とも言われており、浄土真宗で好んで使われています。浄土真宗の開祖である親鸞聖人の命日の11月28日前後に行われる「報恩講」の際に用いられるのもこの朱ろうそくです。
絵ろうそく
鮮やかな色彩で花の絵が描かれている絵ろうそく。元々は冬の寒さが厳しい東北や北陸で生まれたろうそくでした。
冬の寒い時期に、仏壇に生花をお供えすることができないため、お花の代わりになるようにろうそくに花の絵を描いたのが始まりとされています。絵ろうそくは、「枯れない花」として普段は火を灯さずに仏壇にお供えします。そして、仏様の大切なときに火を灯してあげるとよいとされています。家を数日間空けるときやお花をお供えできないときにはこの絵ろうそくが活躍してくれるでしょう。
現在では、花の絵に限らずポップなイラストが施された絵ろうそくも誕生し、時代に合わせた変化を遂げています。
和ろうそくの使い方
大きな和ろうそくを安全に使う際には少し注意が必要です。
西洋ろうそくとは違い、芯が大きいためそのままでは炭化した芯が残り続けてしまいます。炭化した芯が残ると炎が大きくなってしまい、危険があるため適宜、「芯切り」という作業を行なってあげましょう。使用する前の長さまで芯の根元を残し、その上部を芯切りばさみやピンセットでつまみ、長さを調整します。ひと手間かかる作業ですが、安全に使っていくためにはとても大切な作業です。
まとめ
和ろうそくに馴染みがなかった人も、ほんの少し知ることでぐっと身近な存在に感じていただけたのではないでしょうか。
実際に使ってみるとより魅力を実感できると思います。仏具としてだけではなく、まずは生活の一部に気軽に和ろうそくを取り入れてみるのもおすすめです。