1. TOP
  2. 風土 歴史
  3. 【お盆のお供え】なぜナスとキュウリを飾るの?精霊馬って何?

【お盆のお供え】なぜナスとキュウリを飾るの?精霊馬って何?

LINEで送る
Pocket

精霊馬とは

精霊馬を簡単に説明すると、お盆に先祖の霊を乗せて移動するための乗り物のことです。

お盆は古くから自宅へ帰ってくる霊を家でもてなすための行事として行われてきましたが、その霊たちが間違いなく帰ってこられるように作ったのが精霊馬なのです。

そのため精霊馬の多くは、キュウリやナスに割り箸やつまようじを刺して、四つ足の動物のように形作ります。お盆の時期、精霊棚(しょうりょうだな)・盆棚(ぼんだな)と呼ばれる祭壇にお供えと共に飾られます。

また、キュウリで作ったものを精霊馬、ナスで作られたものを精霊牛とすることもあり、これらはセットで用意されることも多いです。一説によると、現世へ来るときは馬で早く来てもらい、あの世へ帰るときは牛に乗ってゆったりと帰ってほしいという霊への心遣いを表現しているとされています。


お盆とは

お盆は7世紀ごろから日本で始まった盂蘭盆会(うらぼんえ)という死者の供養をするための仏教行事が元となっており、この盆という字をとって広く「お盆」と呼ばれるようになります。

しかし、実はこの盂蘭盆会はすべての死者の魂を供養するものであり、特に自分の祖先を祭るという意味はありません。自分の祖先の霊を祭ることは日本固有の神道的な習わしなのです。またお供えに魚を使うことがあるという点にも、神道のお祭りの特徴が表れています。

あらゆる霊を供養する仏教の行事が、自らの祖先の霊を祭る習慣があった日本の神道と混ざりあったものが日本の「お盆」となった、というのも興味深いですよね。


なぜキュウリとナス?


キュウリ

なぜキュウリやナスを使ってお供えを作ったのかについて、詳しい理由は分かっていません。お盆の風習が広まった江戸時代に手に入りやすかったこと、そして作物の恵みに感謝するという神道的な儀礼の意味をこめて、キュウリやナスを供える風習が広まったとされています。

また精霊馬はもともと「マコモ」というイネ科の植物で作られていたものであり、これをより手に入りやすい材料で作るために使われたのがキュウリ(やナス)だった、という説もあります。マコモは今も精霊棚の敷物として使われている神聖な植物で、当時の庶民には手に入りにくいものだったのかもしれません。


ナス

ナスで作った精霊馬のことを牛に見立てて精霊牛ということもありますが、ぽってりとしたナスの形や色はまさに牛の姿を彷彿とさせますよね。

精霊牛は霊をのせてゆったりと帰るための乗り物だと説明しましたが、こんな興味深い説もあります。それは、精霊馬に霊が乗り精霊牛はその旅の荷物や土産を載せて運ぶためのものだったというもの。

そもそも牛は古来から荷を引くため使われた動物で、実際は人が乗って居心地のいいものではありません。農民も多かった江戸時代の人々がそれを知らなかったというのは少々考えにくいことでもあるのです。

色々な説がありますが、力のある牛にお土産をたくさん載せて持ち帰ってもらいたいというもてなしの気持ちの表れだったと考えることもできますね。


精霊馬の飾り方

飾る時期

ここでは8月13~16日にかけて行われる月遅れ盆を基準に説明します。

精霊馬を飾るのは、始まる日である迎え盆の13日。そして送り盆である16日まで飾っておきましょう。先祖の霊は13日の夕方にかけて帰ってくると言われており、この日までに精霊棚やお供えなどを用意し、先祖を迎える準備をします。


飾る場所・方向

一般的に、精霊馬は精霊棚や盆棚と呼ばれる祭壇に位牌やお供えと一緒に飾られます。

向きは先祖の霊を迎えるため、迎え盆の期間は家の内側を向くように飾り、後半の送り盆の時期になると家の外側を向くよう供えるのが基本です。

しかし、地域の慣習によってさまざまな方法があるので、分からない場合は家の菩提寺などに聞いてみることをおすすめします。



精霊馬の処分方法

役目を終えた精霊馬はきちんとした手順を踏んで処分しましょう。以前はお祓いの意味をこめて燃やして処分したり、土へ埋めたり川へ流したりする、という習慣がありましたが、現代では難しい場合もあるので簡単な方法も紹介します。

手軽にできる手順としては、塩をかけて清めた後に半紙などの白い紙に包み可燃ゴミとして処分する方法があります。またお焚き上げを行っているお寺へ持ち込んで処分してもらうこともできます。


地域による違い

お盆は庶民に広まる中で地域に合わせて発展していった慣習で、時期やお供えの方法などにいたるまで、多様な形で行われています。 もちろん精霊馬の習わしについても同じように違いがありますが、中でも大きな違いは精霊馬を飾る地域と飾らない地域があるということです。

実は精霊馬の慣習は東日本が中心で、西日本では飾られることが少ないのです。

この一つ目の理由は、精霊馬が江戸時代に江戸の庶民を中心に広まったというのが大きいと考えられます。

もう一つの理由は仏教の宗派の違いです。西日本に信者の多い浄土真宗では、お盆に祖先の霊を家へ招く習慣がなく、お盆の行事もあまり盛んではありません。そのため西日本では精霊馬を使う家が少なかったのだろうと思われます。

西日本では精霊馬の代わりに「精霊舟」という、木やわらで作られた舟を作る地域もあります。お盆のお供えをのせたり飾りつけをしたりして川や海へ流し、死者の霊を弔うものです。長崎のお盆行事として有名な「精霊流し」も、この精霊舟が使われることで知られていますね。


まとめ

亡くなった霊たちを大切にするというのは、昔も今も変わらない人々の想いだと感じます。

最近はお盆の行事を盛んに行うことも少なくなっているかもしれませんが、一年に一度だけでもご先祖様のことを思い出し、感謝することも忘れずにいたいですね。


[わつなぎオススメ記事]
【風鈴】ひとつひとつ音色が違う!“風鈴のある生活” 様々な風鈴の効果に種類


\ SNSでシェアしよう! /

日本文化をわかりやすく紹介する情報サイト|わつなぎの注目記事を受け取ろう

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

日本文化をわかりやすく紹介する情報サイト|わつなぎの人気記事をお届けします。

  • 気に入ったらブックマーク! このエントリーをはてなブックマークに追加
  • フォローしよう!

ライター紹介 ライター一覧

ナツメミサト

ナツメミサト

好きなものは、各地の遺跡や博物館をめぐる旅行。
史料を見て、遺跡や城下町などをひたすら歩きまわっていると、
当時の人々の息遣いを感じることができます。
歩き疲れた後は、その土地ならではの食事もよりおいしく感じますよね^^

学生時代は中世~近世の日本史を専攻し、学芸員資格を取得しました。
政治史だけではなく、当時の一般の人々が「どんな考え方でどんな暮らしをしていたのか」という社会史や文化史にも注目し、みなさんに分かりやすくご紹介します!

この人が書いた記事  記事一覧

  • 【妖怪】「百鬼夜行」「魑魅魍魎」ってなに? 違いから語源・由来を紹介

  • 【鬼】体の色は「人の悪い心」を表す!?「5色」の鬼の由来とは。色によって持つ武器も違う

  • 【怪談】百物語とは? ルールを破るとどうなる!?注意点に正式なやり方、簡易的なやり方

  • 【八朔】“はっさく” 果物じゃない!? 旧暦8月1日「八朔」の行事。お中元の由来にも