【守山龍之介】もっとも残酷で美しい物語。映画『虹が落ちる前に』吉兆エピソードにものづくり好き[インタビュー]
リンクした部分がたくさん
──主人公の「公平」役はどのような経緯で決まりましたか
監督が書類を見て “一度、会いたい” とおっしゃってくださり、直接お会いして話ししていく中で「公平」役に選んでいただきました。
最初、可愛らしいカフェで待ち合わせしましたが、満席で入れず近くの居酒屋で話しました。その際、お芝居の何を見せたわけでもなく、自分の事や考え方とか色々と話しました。「主演の公平をやりたいです」とも伝えていましたね。
今、考えると、話している時に表情や仕草とか見ていたのかな?と思います。
──「公平」を演じてみていかがでしたか。
悩んでいる部分であったり、結果に結びつかない焦りであったりと、当時の僕は、公平とリンクした部分をたくさん感じました。なので、最初、本を読んだ時からすんなり入ってきましたね。
自分自身と重なる部分が多かったので、この映画を撮り終えた時に俳優としても何か得られるものがあるのではないかと考えました。その事もあってより真摯に向き合いたいと思った作品です。
ただ、怖い人たちとの絡みや暴力的な世界の部分はイメージがつきにくかったので、どんな感じになるかなという興味はありました。
人に寄り添う映画
──演じる上で難しかった部分はありますか。
重なる部分も多くイメージがわきやすかったので、これはどう言う事なんだろうと悩む部分はありませんでしたが、セリフが際立つシーンが多かったので、これをどれだけ自然に伝えていけるかと言う部分では少し悩みました。
あと、最初にいただいた台本の最後は、白紙だったんです。なんで白紙なんだろう? 印刷ミスかな? と思ったら、ラストシーンは決まっているけれど、みんなに最後まで教えないという監督の意図だったようです。色々と想像しましたね。
──ラストシーンは想像通りでしたか。
僕の想像とは違いました。だからこそ“この作品いいな”と思いました。
夢を叶える作品って多いと思うんですけれど、現実ってそうならない事も多いじゃないですか。こうなればいいなと思っていることが叶わなかったり、夢が叶う部分もあるけれど、全てが思い通りになっているわけでないとか。嬉しかったり、時には悔しかったりと。現実にある日常生活や世界観がしっかり見られる映画だなと。これが支えになったり、人に寄り添う映画なのかなと思いました。
リアリティあふれたシーン
──守山さんの好きなシーンや見てほしいシーンはありますか?
作品後半の畦田ひとみさん演じる珠江ちゃんと公平が家で話しているシーンは見てほしいなと思いますね。
そのシーンは20分間くらい長回しで撮ったんです。その後、素材として何カットか撮ったんですけれど、通しで撮影しましたね。
長回しで撮ると聞いた時は、できるかな?どうなるかな?と畦田さんと一緒に悩んでいました。でも、いざ撮影が始まってみると、珠江ちゃんの優しさだったり、どうする事も出来ない寂しさとかを感じとる公平がそこにいました。今まで築いてきた関係性があったから自然と演じられましたね。
あのシーンは、ふたりともこの映画に真摯に向き合ってきたからこそ、生まれたシーンなんじゃないかなと思っています。何度も見ていただきたいシーンのひとつです。
──長回しをやってみていかがでしたか。
自分の中ではかなり間をとっているなと感じたのですが、自然に感じる対話でした。
人って考えながらしゃべるから、間は生まれるもので、セリフとかになるとすんなりと進んでいくことが多くそのシーンでの会話みたいになりがちで、よりリアリティがあふれたシーンに必要な間であり、空間だったのかと気づきがありました。
自信に繋がった映画祭
──各種映画祭で舞台挨拶をされていますが、反響はいかがでしたか。
全席満席になったりと目に見える反響も多くありました。カナザワ映画祭の審査員の方から「自然と拍手が生まれた作品だったね」、「早く劇場で公開した方がいい作品だよ」とおっしゃっていただいたので自信に繋がりました。
[映画祭情報 2022年3月7日現在]
「ハンブルク日本映画祭2022」ハンブルグ日本映画祭賞 受賞 / 「カナザワ映画祭」期待の新人監督賞 ノミネート
「門真国際映画祭2021」最優秀作品賞 受賞、守山龍之介 最優秀主演男優賞 受賞、畦田ひとみ 優秀助演女優賞 受賞、白磯大知 優秀助演男優賞 受賞 / 「第7回 賢島映画祭」入選、白磯大知 助演男優賞 受賞
──カナザワ映画祭の際、観光などはしましたか。
兼六園とか21世紀美術館行きたかったんですけれど閉まっちゃっていて行けなかったんです。
僕は金沢の街並みや文化が好きで、プライベートで行ったりもしていました。その時は、兼六園も21世紀美術館にもいけました。現代美術や建築物も好きなので、駅前で自転車を借りて数多くあるアートスポット巡りを楽しみました。
映画祭の時、みんなで女優のMEGUMIさんがオーナーを務める「カフェたもん」に行きました。ひがし茶屋街にあるんですけれど、町屋をリノベーションしたカフェで雰囲気もよくパンケーキがすごく美味しかったです。
幸運のしらせ
──映画タイトルが「虹が落ちる前に」ですが、「虹」のイメージやエピソードはありますか。
この映画がクランクインする日に、家を出ると虹がかかっていたんですよ!
作り話だと思われるかも知れないですけれど、これ本当なんですよ。その時、写真撮ってみんなに「虹が出ているぞ!」ってLINEで送ったんで証拠もあります。笑
「虹」って、幸せの前兆だったり、吉兆の現れだったり、何かしら良きことに進む兆しのイメージがあるんです。なので、「虹」を見た時は、本当にびっくりして、これはいける!って思いましたね。
皆さんのサポートによって、多くの方に届けられる作品になったので、初日に見た虹は“幸運のしらせ”だったんだと思います。
「桜」に一目惚れ
──日本の文化について伺います。最近、興味をもたれている日本の文化はありますか。
盆栽です!
今年に入って、ふらっと街に出かけた時、出張出店されている「石木花 SEKIBOKKA」と言うお店に出会いました。器も手作りで石窯で焼かれて、その上に木であったりとか草を生やした盆栽を販売しているお店なんですけど、そのお店で「桜」に一目惚れして買ってみました。
今まで、植物を育てた事はなかったんですけれど、何かを育てるとか、愛情を注ぐとか、そんな趣味もいいなと思って育て始めました。
ちゃんと育てれば毎年咲くと言う話なので、毎年咲かせようと思っていますし、器を大きくして育てれば、幹も太く大きく育つと言っていたので頑張って育てます。今年初の桜は自宅で見ると言うのも乙ですよね。咲いたら僕のinstagramにアップしようかなと思っていますので見てください。(取材時は咲いていませんでしたが、その後咲いたそうです)
[守山龍之介instagram] @ ryunosuke_moriyama
購入樹木:旭山桜
購入先:石木花 SEKIBOKKA / instagram @sekibokka
PHOTO:守山龍之介さん提供
折り紙の可能性を感じた
──公平は作詞、作曲をやっていますが、守山さん自身、ものづくりなどに興味はありますか。
音楽は好きで、作詞、作曲も興味ありますがやったことはないですね。
今、コロナ禍で自宅にいる時間も多く、物語を書いてみるというのはチャレンジしてみてもいいかなぁとも思っています。ただ、簡単なことではないと思うので、覚悟を決めて真剣に取り組まないとだなと思います。今回、演者として携わりましたが、作家として映画作りに関わってみたいと興味を持ちました。
あと、木を使って物を作る事はすごく好きで、イベント大工のバイトをやったことあります。
──ものづくりが好きとのことでしたが、手づくりなどはしますか。
手づくりと言えるかわかりませんが、お正月に大阪の実家に帰った時、姪っ子や甥っ子が折り紙にハマっていて一緒に折り紙で遊びましたね。
皆さんがよく知っている鶴とか手裏剣とかではなく、YouTubeで折り方を解説している動画を見ながら少しづつ折り進めて、教えながら折って行く感じだったんです。それも、角と角を合わせて折るとかじゃなくて、“2mm幅に折ってもう一回戻してって追っていくうちにかなり小さくなったなと思ったら全部広げて、その出来た線をなぞって折り進めていく” みたいな感じですごく繊細な作業なんですよ。
動画を見ながらなので、今どう折った?とかどこまで折った?っていうのが何回か続いて、何度もやり直してたり最初から作り直しもしました。僕はポケモンのリザードンを作ったんですけれど、紙一枚から立体感のあるものが出来上がって折り紙の可能性を感じましたね。
──姪っ子さんや甥っ子さんは、完成しましたか。
最初は一緒に作っていたんですけれど、途中から飽きちゃっていましたね。僕の方が真剣になっちゃっていました。笑
出来上がったリザードンを見せたら喜んでくれたので良かったですし、僕自信がすごく感動していました。
メッセージ
──本日はありがとうございました。改めて、最後にメッセージをお願いします。
「虹が落ちる前に」という映画は、みなさんに寄り添える作品になっていると思います。
僕自身も悩んでいた時にこの映画と出会い、演じている中で支えられるものはありました。それはきっと演者とかミュージシャンを目指している方だけじゃなくて、皆さんに刺さる部分があって、その中で寄り添ってくれるものがあると思います。
悩まれている方はもちろんですけど、過去にこういう苦しみがあったりとか、未来に向けて進んで行こうと考えている方にも支えになる作品だと思いますので、ぜひ劇場でご覧ください。
「虹」のエピソードの際、守山さんのイメージする虹色は1色で何色だと思いますか?とお聞きしたところ、悩みながら「淡い紫をイメージしますね。合理的に考えたかもですが、7色ある虹の色をぎゅっとまとめて、混ぜてぱっとのばした時に僕は紫色になりそうな気がするなと。」
日本の伝統色では「虹色」という名前の色があり、黄色味がある淡いピンクです。この色は、光の反射にとって様々な色味に見えたからついた名前だと言われています。状況や見方、考え方でイメージする色は違います。
映画「虹が落ちる前に」も観た方によってそれぞれの色があり、皆さんの心に刺さる部分が様々あると思います。もっとも残酷で美しい物語、お楽しみください。
▼映画「虹が落ちる前に」予告編
虹が落ちる前に
守山龍之介、畦田ひとみ、白磯大知、末松暢茂、梶田冬磨、昆竜弥、板垣雄大、田宮拓、バンダリ亜砂也
監督・脚本・音楽・衣装:Koji Uehara
助監督・編集:Atsushi Nakajima 音楽:Hidetoshi Nishihara
2021年/115分
©「虹が落ちる前に」製作委員会
3月19日(土)より
東京:新宿K’s cinema、アップリンク吉祥寺、神奈川:横浜シネマリン、大阪:シネ・ヌーヴォほかにて全国順次公開
<公式HP> http://www.nijiochi.com/
<公式Twitter> @nijiochi