【平山浩行】日本ワインにかけた熱い想い! 映画『シグナチャー~日本を世界の銘醸地に~』ものづくりが好きです。陶芸に靴に[インタビュー]
挑戦であり、やりがいを感じる
映画『シグナチャー~日本を世界の銘醸地に~』は、日本のワイン業界を牽引した麻井宇介さんの想いを受け継ぎ奮闘する醸造家 安蔵光弘さんの半生を描いた映画です。
──安蔵さんを演じるにあたり意識した部分はありますか。
ご健在で実在する方を演じるというのは難しい部分もあるんですよね。そんなに資料や情報があるわけでもないですし、映像とかで話し方を研究するくらいで。監督に「安蔵さんの人となりや話し方ってどんな感じなのですかね」って聞いたら、「そこは、あまり気にしなくて良いですよ」と助言してくれて、その時から少し気が楽になりましたね。
ところが、撮影は山梨なのでメルシャンの工場には安蔵さんがいるわけです。よく撮影時にいらっしゃってモニターを見ているんですよ。笑 “自分を演じられる” って想像できないから、どんな気持ちなんだろうと不安にもなりましたが、楽しんで見ている感じだったのでホッとしました。
時には安蔵さんに「この時どういう気持ちだったのでしょうか?」と聞きながら演じていた部分もありましたね。
──安蔵さんを演じてみてご自身と重なる部分はありましたか。
ものづくりという部分では一緒なのかなと思いますね。
僕も役者というお芝居を通じながら作品を作っていくし、醸造家はもちろんワインを作っていきます。形や工程が違うだけで、作り上げていくという部分ではすごく似ているのかなと。
役者は作品に愛情をかけないと良い作品ができないし、ワインも情熱みたいなものがないと美味しくはならないと思います。どちらも難しければ難しいほど、良いものができるような気がして。
僕自身、実在する方を演じるというのは挑戦でもありましたが、その難しさが増すごとにやりがいを感じ、良い作品へつながるのではないかとも思っています。
日本ワインに出会い、変わった
──平山さん自身、ワインは詳しいですか。
お酒には興味があるので飲んではいましたが、ワインはあまり深く学んでいなかったんです。特に日本のワインは多くの種類を飲んだことなかったですね。
単純に日本のワインに出会う機会がなかったからだと思うんですけれど、この作品のおかげで、さまざまな日本のワインを飲むようになり、美味しさが身にしみてわかるようになりました。
僕はワインを飲んで語るタイプではないけれど、“あぁなるほどな。こういう感じなんだな”とか、より味わいを楽しむようにもなりましたね。
──お酒の飲み方や選び方が変わったのでしょうか。
そうですね。和食を食べに行ったら日本酒や焼酎を飲みたくなるけれど、ちょっと白ワインを飲んでみようかなとか、最初のビールを白ワインにしてみようかなとか、お酒選びがちょっと変わりましたね。
あと、お店に行って日本のワインが置いてあれば選ぶと思いますね。ワインだけで飲むのもいいけれど、料理に合わせて飲むというのが一番美味しい飲み方だと思うので、飲んだ事があるワインがあれば、この料理にはこれが合うんじゃないかって選ぶようになりました。ワインの種類によってさまざま合わせられるので。
美味しさにつながる。地道な努力
──撮影は山梨で行われたんですね。
はい。オール山梨ロケでしたね。メルシャン全面協力のもと工場もお借りして撮影しました。
タンクを開けて、タンクの中を掃除するシーンがあるんですけれど、なかなか経験できないじゃないですか。実際に発酵しているところを見たり、使っている樽を見たりとかすごく勉強になりましたね。
──本物に触れてみるとワイン作りにも興味が湧きませんか。
可能であれば、作ってみたいです。
この間、お手伝いでぶどうの収穫行ってきたんですよ。ただ摘んでカゴに入れていくだけじゃなく、摘んでから良いところと悪いところを選定していくんですよ。青い部分は全部とらないといけないし、ちょっと腐っている部分や割れちゃっている部分も取らないと使えないんです。使える一房ができるまでかなり手間がかかるんですよ。それを数百房と選定して収穫する訳ですから本当に大変な作業なんです。
そういった地道な努力があって美味しいワインにつながっているのだなって思いました。
実際に工場を見たり、収穫を手伝ったりして、自分でやってみたらどんな味になるんだろう!? っていう思いは強まりますね。
もう10年くらい。ものづくりが好き
──興味のある日本の文化はありますか。
抹茶を点てて飲むのが好きなんですよ。とは言ってもちゃんと習った訳ではなく、抹茶の粉を湯呑みに入れて点てるだけですけど。すごく好きで、緑茶の変わりに飲む事が多いですね。
あと、陶芸も趣味でやったりします。
以前、ある番組で陶芸の旅に行く機会があったんですね。その時は益子の方に行って窯元さんのところを何軒か訪ねたりしていたんですけど。そこからハマっちゃって都内にある陶芸教室に通うわけですよ。
ところが2年くらいで教室が遠方に移転してしまって通えなくなっちゃったんです。どうしようかなって悩んでいた時に、その番組でお邪魔したところに連絡して、「こういう理由で制作場所を失ってしまったんですけど、先生のアトリエをお借りできないでしょうか。」とお話をしたら、「ああいいよ」って、快く引き受けてくれたんです。
通うようになって、もう10年くらいになりますね。
──抹茶茶碗も作られましたか。
作りましたね。自分で作った茶碗で抹茶を点てて飲んでいます。抹茶茶碗のほか、食器なども作って自宅で使っています。独りよがりなんですけれど。笑
器づくりもそうですけれど、土を捏ねたり手を動かしたりと、ものづくりが好きなんですよね。
──チャレンジしてみたい日本の文化はありますか。
藍染とか染物をやってみたいし、反物も作ってみたいです。たくさん興味あるんですけど、どこで習えばいいのか。場所や時間の都合もあってなかなか難しいところがありますよね。
最近は、靴を作りたいなと思って、靴作りの学校にもたまに行っているんですよ。どんな工程でどんな事をしているんだろうって興味もあって。
あとスリッパが簡単そうだから作ってみましたが、さまざまな工程があって本当に大変でしたね。自分の足の型をとってから断裁して、1ヶ所1ヶ所縫い合わせる穴をあけていかないといけないんです。足が大きければ大きいほどたくさんあけないといけないんですよ。笑
さらに、自分の足にフィットするように中敷の間をパテで埋めていくとか、裏底のソールを貼る時にちょっと上げて貼り合わせると歩きやすいとか、角の落とし方とかも重要で、スリッパづくりも深いなぁと思いましたね。
ぜひ、劇場で。お楽しみください
──本日はありがとうございました。最後にこの映画をどのような方に見ていただきたいですか。
まったくお酒に興味が無い方にも見てもらいたいですね。
日本には素晴らしいぶどうがあり、丹精を込めて作ったワインがあるというのを知って、実際に飲んでみてもらいたいです。また、安蔵さんという醸造家がいて、日本のワイン業界を牽引した方々がいらっしゃるんだというところも見ていただきたいですね。
映画『シグナチャー〜日本を世界の銘醸地に〜』は、麻井さんとの関係性もひとつのテーマであり、安蔵さんと麻井さんの対面シーンはすごく印象的です。ぜひ、劇場でご覧ください。
おわりに
日本のワイン業界を牽引した麻井さんや想いを受け継いだ安蔵さんといった方々の熱意や意欲によって、日本のワイン文化や銘醸地が作られていったと思います。
平山さんも、演じることだけではなく映画づくりや手を動かしたものづくりに対して強い熱意や意欲を感じました。
平山さん演じる安蔵さんが、さまざまな人と出会い、世界に名を轟かせる日本ワインをどのように作り上げていくのか楽しみです。
芳醇な映画『シグナチャー〜日本を世界の銘醸地に〜』のひと時をお楽しみください。
ヘアメイク:佐藤由佳
場面写真