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【バルタザール・コルマウクル監督】映画『TOUCH/タッチ』“反核”皆で話し合うきっかけに[広島国際映画祭2024]

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11月22日から3日にわたって行われた『広島国際映画祭2024』にて、2025年公開予定の映画『TOUCH/タッチ』がプレミア上映され、作品を手掛けたバルタザール・コルマウクル監督が登壇、撮影やキャスティングのいきさつなどについて語りました。


(C)2024 RVK Studios


バルタザール・コルマウクル監督トークショー


本作は、アイスランドに住む初老の男性クリストファーが人生でやり残したこと、「50年前に出会い、愛した大切な人が突然姿を消してしまった謎を解き明かすこと」を決意し。コロナ禍に世界が混乱する中でアイスランドを出発し、ロンドン・日本を旅しながら彼女を探す壮大なラブストーリー。2020年にアイスランドで発表されベストセラーになったオラフ・オラフソン著の「Snerting(原題)」が原作となっています。日本でも東京、広島、特に広島では広島市のほかに呉市、竹原市とさまざまな場で撮影が行われました。

国を超えたラブストーリーながら、物語には広島の原爆に関するテーマも織り込まれておりグローバルな要素を持った作品。コルマウクル監督は「シンプルだけど『世界で最も大きな犯罪、悪』が起きたときへと、静かに誘導してくれるような物語。ある意味『今、世界の人々がこの罪をまた繰り返すのではないか』ということをほのめかしているようにも思えました」と原作の印象を語ります。


一方で、本作で描かれる日本のイメージについて「私の母国、アイスランドって、あまり世界的には知られていないし。アメリカの映画なんかではバカにされたような描写をされることが多くて、見るのがすごく嫌だったんです。だから日本をそんな風に面白おかしく書くのは嫌だったんです」とコメント。

ロケハンの段階では広島の民泊で偶然、被爆二世であるという女主人との出会いがあり、そのときに聞いた話や見せてもらった彼女の持ち物は映画作りに大いにプラスになったこともあったと回想。場所によってさまざまな表情を持つ広島という場所に対して「人々のパワーがすごい。また来たいと思いました」と振り返ります。

また作品の注目ポイントはKōki,、本木雅弘という日本人俳優の起用ですが、本木の起用については日本のディレクターである奈良橋陽子によるキャスティングであったと明かし、主人公クリストファーの若き日の姿を演じた監督の息子パルミ・コルマウクルとの関係を絶賛。「二人の間に素晴らしい関係ができる中で、アイスランドという島国、日本という島国、その国は違えど島国同士という中でいい空気感を見せたかったんですが、特に本木さんは息子のやり取りの中で、彼を抱え込んでくれる感じのイメージを見せてくれました」と非常に安心感のある演技を見せたことに賞賛の声を止めません。

Kōki,の起用についてはLAのエージェントに「英語が話せる美人の日本人」というリクエストを送り、その中で監督のイメージだけで気になった一人を、奈良橋に頼んでオーディションに参加してもらうように頼んだという経緯をコメント。彼女の背景は全く知らなかった監督は、アイスランドで撮影しているときに現地で撮影現場を見ていた日本人が大騒ぎをしているのを見て、初めて彼女がどんな人物なのかを知った、というエピソードを明かします。


その一方で「オーラとか、そんな特別に光るものを感じたわけではないけど、仕事をしているときはすごく控えめで礼儀正しく、私を信頼してくれました」と、Kōki,の仕事に対する真面目な姿勢を指摘しつつ、まだそれほど演技経験があるわけでもない中で、パルミと息を合わせ徐々に演技を成長させていったことを評価点として挙げます。

そして改めて「広島の悲劇」について「これはどう考えても人類最大の罪だと思っています。今世界ではまた核が使われるのではないか、という危機が現れてきていますが、気になっているのは『若い世代の人がそれを意識していないような気がする』ことにあります」と語ります。

そして続けて今年日本被団協がノーベル賞を受賞したことを挙げ「世界がこの問題にようやく注目を始めたようにも感じます。だからこういった話を広げていかなければならないのですが、この映画を通じて、その『会話』が始まればと思います」と、作品に込めたメッセージと共に、自身の抱いた反核への思いを語ってステージを締めくくりました。


映画『TOUCH/タッチ』

映画情報

映画『TOUCH/タッチ』予告動画


(以下、『広島国際映画祭2024』公式サイトより)

ストーリー

アイスランドでレストランを営むクリストファーは、コロナウイルスの世界的流行が始まった頃、初期の認知症の診断を受ける。医師に「やり残したこと」を問われた彼は、旅に出ることを決意する。50年前、学生時代を送るロンドンで出会い恋に落ちたミコを探すために。

彼女は、愛し合っている中、突然姿を消したのだった。クリストファーの雇い主でもあった日本料理店を営む父・高橋とともにー。

薄れゆく記憶と戦いながら、ロンドンを訪れたクリストファーは、高橋の店で共に働いていたヒトミから、一通の手紙を見せられる。その住所をたどり、クリストファーは日本を訪れ、東京を経て広島へと向かう。そして、時を超えた切ない真実が明らかになるー。

もう一度、君に会いたいー


キャスト

エギル・オラフソン、Kōki,、パルミ・コルマウクル、本木雅弘、奈良橋陽子、ルース・シーン、中村雅俊ほか

スタッフ
監督:バルタザール・コルマウクル
原作:オラフ・オラフソン
撮影監督:ベルクステイン・ビョルグルフソン
製作:マイク・グッドリッチ/アグネス・ヨハンセン

(C)2024 RVK Studios


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桂 伸也

桂 伸也

“和”という言葉で表現されるものには、人によって色んなイメージがあると思いますが、私は“整然として落ち着いたもの”という雰囲気を感じ取っています。

普段は芸能系ライターとして活動を行っており、かなり“にぎやかな”世界に生きていますが、その意味で“和”という言葉から受ける雰囲気に、普段から強い憧れや興味をもっていました。

なので、そんな素敵な“和”の世界へ、執筆を通して自らの船を漕ぎ出していきたいと思っています。

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