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【安部伊織】不器用で痛くても心に寄り添う青春物語!映画『僕の中に咲く花火』日本酒って奥が深い[インタビュー]

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大切に向き合わないといけない

──主演が決まった時のお気持ちを教えてください

オーディションを受けていくなかで、「この役、自分に合っているかもしれないな」と感じるようになって。不思議と“決まる気がする”と思ったんですよね。

後日、清水監督とお話ししたときに、「オーディションの時、ビビッときた」とおっしゃっていて。「あ、やっぱりどこか通じるものがあったのかな」と、嬉しかったです。


──脚本を読んだときの印象は?

最終オーディションの前に、全体の脚本を読ませていただきました。その際、監督のプロフィールや経歴が書かれた資料も一緒に目を通したのですが、監督が歩んでこられた道のりや背景がとても濃く、たくさんの経験をされている方なんだと感じました。ご本人は「自分を投影した作品ではない」と話されていましたが、それでも脚本のなかに、経験した生々しさがにじみ出ていて、強い熱量を感じました。これはしっかりと、大切に向き合わないといけない作品だなと、強く思いましたね。


嘘をつかないこと。それが稔を演じる鍵

──主人公・大倉稔という人物を、どう捉えて演じましたか?

稔は、自分の感情さえ自分でうまく理解できていない、そんな不安定さを持った青年だと思います。心が揺れていて、混乱していて、でもそれがリアルな18歳なんじゃないかなって。

だから、「どうしたいか」とか「何を考えているか」と明確に描くのではなく、あえて“ぐちゃぐちゃなまま”にしておく。それでも嘘のないように演じることを大切にしていました。見てくださる方に「この子、何を考えているんだろう」って想像してもらえるようにと思っていましたね。


──演じていて、自分と重なる部分はありましたか?

あまり無いかなと思います。家庭環境や友人関係も稔ほど複雑ではないですし。ただ、僕自身も、少し“後ろ向きな思考の癖”があるんです(笑)。そういう部分の“思考の流れ”にはすごく共感できました。だから稔の気持ちは自然と理解できたし、「わからない」と感じたことは一度もなかったです。



心ほどくおでん屋さんに、日本の原風景

──印象的だったシーンを教えてください

ひとつ挙げるとしたら、おでん屋さんのシーンですね。

葵うたのさん演じる朱里に連れて行かれて、渡辺哲さん演じる店主と3人で会話するシーンなんです。色々と考え、心を閉ざしている稔が、少しずつ表情をゆるめていくんですよね。セリフは少ないけど、内面はすごく動いているシーンで、印象的でもあったし、作品としてもターニングポイントになる場面だと思っています。


──雨の中を自転車で走るシーンも印象的でしたね

ありがとうございます。あのシーンは、実はもともと晴れの予定だったんです。でも、ちょうど台風が直撃してしまって、「このまま行こう」という流れで撮ることになって。田んぼの中の一本道を、びしょ濡れで必死に走るっていう、まさに “日本の田舎の夏” みたいな風景になりました。結果的に、映画の空気感を象徴するような場面になった気がします。

僕の地元(山口県萩市)も似たような環境で、自転車移動も多かったし、田んぼに囲まれた風景も馴染みがあって。だからこそ、すごく懐かしさを感じながら演じていました。


日本酒って奥が深い

──興味のある日本の文化はありますか

日本酒です。

山口県って、日本酒づくりが盛んな土地で、「獺祭(だっさい)」をはじめ、たくさんの酒蔵があります。そんな環境で育ったこともあってか、最近になって「日本酒って奥が深いな」と感じるようになりました。

味はもちろん、地域ごとに文化があるし、器にも美しさもあるし。年々、もっと知りたい!と思うようになりましたね。


メッセージ

──本日はありがとうございました。最後にこの映画をどのような方に見ていただきたいですか。

大切な人を失ったり、どうしていいかわからない状況に直面したり、そんな経験って、誰しもあると思うんです。この映画が、そんな方々の気持ちに少しでも寄り添えるような作品になっていたら嬉しいです。

登場人物の心の中で何が起きているのか、明確に描かれているわけではありません。

でも、その“わからなさ”に触れて、感じたり、考えたりして、観た人の中に何かひとつでも残るものがあったら、それだけで十分だと思っています。ぜひ劇場でご覧ください。



おわりに

インタビュー中、映画のタイトルにも入っている「花火」について尋ねると、

「僕にとって花火は、“家族と一緒に見るもの”という印象が強いんです。実家では、毎年同じ場所に家族で行って見ていたので、夏の思い出って感じでした。でも、監督は“死のメタファー”として花火を捉えているそうで。空に “魂” が上がっていき、ドーンと花火が広がるのが “死” であり、その後に残る煙が“成仏した魂”と思っていると聞いた時は、“そういう考え方もあるのか!”と驚きました」と。

感じ方は人それぞれ、考え方も、受け取り方もさまざま。

死と生のはざまで揺れ動く「稔」を描いた映画『僕の中に咲く花火』から、感じる何か。皆さんの中に咲く花火を感じてください。

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ひで

ひで

興味から参加した川中島合戦戦国絵巻。
鎧をまとい、手には槍に模した棒、腰には模造刀を持ち、いざ、敵軍に向かって出陣!かなりのハイテンション!
イベントの仕事でご一緒した忍者の末裔。ガチの忍者の動きを真似てみるが、鍛錬されている動きについていけず、改めて、本物のすごさに気付かされる!
初めて、着物を着ても普段の動きと違い所作の大切さに気づく!
あれ?難しそうって思っていた芸能も少しわかっちゃうと面白いぞ!のめり込んでいくのがわかる!

日本の文化というと様々ではあるが、気になったものやその時出会ったものに「まずは、やってみよう!」で、学び、体験し、きっかけ作りとなるよう伝えていきたい。

知らないことを知るって楽しいことですね^^

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