【斉藤俊幸監督、立川直樹監督】映画『原爆資料館~語り継ぐものたち~』“語り継ぐ者たち”が見つめた原爆資料館の70年[広島国際映画祭2025]
2025年11月30日、広島国際映画祭2025にて映画『原爆資料館 ~語り継ぐものたち~』のプレミア上映とトークショーが開催され、作品を手掛けた斉藤俊幸監督、立川直樹監督が登壇しました。
映画『原爆資料館 ~語り継ぐものたち~』トークショー
本作は、広島ホームテレビの開局55周年を記念して制作されたドキュメンタリー映画。開館70年を迎えた原爆資料館の歩みと、それを支えてきた人々の活動を描きます。斉藤監督はこれまで「ドキュメント広島 原爆資料館 閉ざされた40分 ~検証G7広島サミット~」など、原爆資料館に関連した番組を複数手掛けてきました。立川監督はそのプロデューサーを務め、20年にわたる原爆取材や、かつて原爆資料館長を主人公としたドキュメンタリー制作にも携わっています。

作品は、テレビ局に蓄積された膨大なアーカイブ映像と新規取材によって構成されています。アーカイブパートを担当した斉藤監督は、「初代の方から、先輩たちが取材してきた人たちは、それぞれの時代で強い思いを持って仕事をつないでいるのだと改めて感じました」と語りました。
アーカイブ映像は総量15TBにおよび、本編の3分の1以上が発掘素材で占められる構成となっているとのこと。歴代の館長の思いが込められた映像の中から、趣旨が重複する部分を整理する形で素材を選んだといいます。

1970年代から残っている膨大な素材に対して立川監督は「例えば8代目館長の川本さんが展示物について『これは人間の叫びです』と語られたことが、とても印象に残っています。どの素材にも強い思いがあり、すべてを映画に収められなかったことは申し訳なく感じています」と、完成した作品を前に、唯一の心残りを明かします。

音楽は2024年の映画『悪魔は存在しない』で音楽制作を行った石橋英子が担当しました。立川監督は「昨年の『広島国際映画祭 2024』でプレミア上映された『悪魔は存在しない』を観て強い印象を受け、音楽を依頼できないかと関係者に相談したところ、可能性はあると言われたのでアプローチしました」と制作経緯を説明。石橋は原爆資料館を視察し、そこで受けた印象を基に楽曲を制作したといいます。
一方、2023年のG7広島サミットで各国首脳が原爆資料館を訪れた際、取材が厳しく制限されたことにも言及しました。立川監督は「昔の映像を見ると、ほぼどこでも入って状況を収録できていましたが、2016年のオバマ大統領来訪あたりから、メディアとしての立場にもどかしさを感じるようになっています」と話します。
斉藤監督は、G7期間中の出来事について「館長が『悔しい』と語っていたことが非常に印象的でした」と述べ、「歴代館長が、被ばくの実情を『こう見せたい』という強い思いを持って役目を務めてこられたことを深く感じました」と振り返りました。

映画『原爆資料館 ~語り継ぐものたち~』情報

(以下、『広島国際映画祭2024』公式サイトより)
映画『原爆資料館 ~語り継ぐものたち~』ストーリー
累計8000万人が訪れた…広島市の原爆資料館。壊滅した街で始まった“ガレキの展示室”は、どのようにして世界有数の“悲劇の記憶の博物館”となったのか
“核戦争の瀬戸際”と言われる今、世界へ静かに訴え続ける原爆資料館の歴史と、そのメッセージを伝えるドキュメンタリー映画。
2万2000点あるという遺品、それぞれに込められた悲劇の記憶。そして被爆直後に広島に入り、単身、瓦礫を集めて回った長岡省吾初代館長のエピソードから、その成り立ちを探る。さらに歴代の館長、学芸員たち、いわば“遺品の守りびと”の活動の歴史と舞台裏にも迫る。
資料館に眠る開館直後の貴重な映像のほか、広島ホームテレビの開局以来、55年間の取材映像を交え、原爆資料館の70年間の時間軸で資料館の原点を描いた。
スタッフ
監督:立川直樹監督、斉藤俊幸
撮影:熊田好洋
制作年:2025年
上映時間:104分
制作国:日本
(C)広島ホームテレビ
