【組紐】古くから美しく多様に進化! 生活とともにある日本の伝統工芸品。組紐の種類や制作工程
この記事の目次
組紐とは
組紐は、細い絹や綿の糸を斜めに織り上げた紐のことです。強度や伸縮性があるため着物の帯締めに最適で、組紐製品の主流となっています。
組紐の歴史は古く、奈良時代に仏教の伝来とともに仏具や経典、巻物の飾り紐として伝わってきました。
礼服や武具、茶道具の飾り紐として使われてきた組紐は、江戸時代には刀剣の下箱の飾り紐や羽織紐、印籠やタバコ入れの紐にも使われるようになりました。また、組紐の上に文字や柄を出す綾出(あやだし)という技法もこの時代に生まれ、美しく多様に組紐は進化していきました。
明治時代の廃刀令により組紐は衰退していきましたが、和装の普及とともに美しい組紐が再び注目され始め、今に至っています。
伝統の組紐
東京くみひも
東京くみひもの起源は江戸時代以前ともいわれていますが、生産が盛んになったのは江戸幕府が開かれてからです。
江戸時代初期は武士の生業として伝えられていましたが、中期以降は一般庶民に普及しました。武家社会と町人文化の影響を受け、華やかさとは対照的に「粋」を好み、侘び寂びの要素を加えた渋好みの味わい、気品の高さが特徴です。
現在は生産数は減少しましたが、東京都伝統工芸品として江戸の伝統を守り、手作りされています。
江戸組紐
江戸組紐は千葉県指定伝統的工芸品であり、千葉県松戸市で生産されている手組み、正絹の組紐です。
古来より武具などに使用されていましたが、鎌倉時代から実用的な組紐が作られ始め、江戸時代に入り、庶民がしゃれた柄などを取り入れて装飾品として発展させました。西の華やかな組紐とは違い、江戸組紐は地味で渋好みで品が良く、かたくて丈夫なのが特徴です。
現代ではさまざまな用途に使われ、アクセサリーとしても親しまれています。
京組紐
京都市や宇治市で生産されている京組紐は、平安時代の頃から仏具などの格の高い品に使われ、皇族や貴族などの装飾品として用いられていたことから京都で発展しました。
京組紐の特徴は複雑かつ繊細で華やかな柄と美しい光沢、気品あふれる色使いにあります。また、強度や締まりぐあいも評判で、実用性にも優れています。
京組紐は、基本的な組み方でも40種類以上あって、和装小物でたくさんの製品が作られており、伝統は現代に受け継がれています。
伊賀組紐
伊賀組紐は三重県の名張市や伊賀市で主に生産されています。
歴史は奈良時代まで遡り、仏教とともに大陸から組紐の技術も伝わりました。伊賀組紐は絹糸を主に金銀糸などを組み糸に使い、高台など組台を用いて編み上げ、和装には欠かせない工芸品となっています。
養蚕に適した気候、京都に近い土地柄ということもあり、明治時代中期から組紐は産業として発展しました。現在、手で組み上げる組紐の約90%が伊賀組紐となっています。
間々田紐
栃木県の伝統工芸品に指定されている間々田紐は、従来の組紐技術に、東京の組紐問屋の年季奉公から実家に戻った渡辺浅市が工夫を凝らして創案した、絹糸を手組みした小山市間々田で作られる組紐のことです。
草木染めの素朴で味のある風合いと、手組みならではの機械では出せない柔らかさと上品さ、帯締めは1度締めると緩むことがなく着崩れも起こさない特徴があります。
間々田紐は、栃木県の民芸品として今も伝統を繋いでいます。
組紐の組み方
角打ち
「角打ち」は「角組紐」といわれる種類の組紐の1つで、編み込んでいくと文字どおり、仕上がりが四角い断面になります。シンプルで角ばった外見になるため、可愛いというよりは格好いい印象の組紐になります。
平打ち
「平打ち」は「平組紐」といわれる種類の組紐の1つで、編み上がりは平たいリボンのような形になります。柄が見やすいのが特徴で女性に人気があり、着物の帯締めに使われたり、ストラップに使用する人も多い組紐です。
丸打ち
「丸打ち」は「丸組紐」といわれる種類の組紐の1つで、断面がロープのように丸くなり、組んだ目が蛇のように見えることもあります。編み方によっては編み目が美しく艶やかになるので、巾着袋の口を絞るための紐やブレスレットなどにも使われます。
組紐の制作工程
組紐の制作工程は、糸を組むだけでも相当な時間と根気がいる作業ですが、その下準備にも大変な手間暇がかけられています。効率よく品質の高いものを制作していくためには、糸の仕分けから加工まで、それぞれ細分化された作業を一つずつ丁寧にこなしていくことが大切なのです。
制作工程は大きく分けて6つあります。
[1]糸割り
[2]染色
[3]糸繰り
[4]経尺
[5]撚りかけ
[6]組み
制作工程には職人による勘と熟練の技が必要になります。
機械を使うこともありますがすべてを機械化、マニュアル化することはとても難しく、ほとんどが手作業となっています。そのため、想像以上に日数もコストもかかっています。これだけの工程を経ることによって、繊細な絹糸から丈夫で伸縮性があり、それでいて美しい艶を持つ組紐が誕生します。
機械では生み出すことのできない独特の風合いやしなやかさが、一つ一つの制作工程によって組紐に加わっていくのです。その姿に、日本人だけでなく海外の人も魅了されます。
日本古来から伝統を受け継ぎ、一時期は衰退の危機もありながら乗り越え、それぞれの時代に合うように多様な進化を続けてきた組紐の制作工程をここでご紹介します。
[1]糸割り
制作する組紐の仕様によって糸の分量を量りながら、糸を仕分けしていきます。
[2]染色
糸を染める作業で、色見本に合わせてムラなく染め上げます。無地染め、ぼかし染めなど、種類はさまざまです。
[3]糸繰り
染色して乾かした糸を、糸の束のままでは次の工程に進めないために、木管や枠に巻き取ります。単純な作業ですが、糸が切れたりしないよう注意が必要です。
[4]経尺
組紐を作るのに最も重要ともいわれる、糸を束ねる作業です。作る組紐によって、束ねる糸の本数や長さ、色、巻き取る枠の数が異なります。
[5]撚りかけ
経尺した糸に撚り(より)をかけます。撚りを丁寧にかけることによって強度が増して、美しい紐を組むことができます。
[6]組み
糸をおもりになる玉に巻き付けて、組台を使って組み上げます。使用する組台は作る組紐によって異なります。
まとめ
組紐は、職人が手間と時間をかけて編み上げた伝統工芸品です。
いにしえの文化を受け継ぎながら多様な変化と進化をして、時代になじんできました。そのため、種類や編み方も豊富で、それぞれ個性をもつ組紐がたくさんあります。ぜひ、手に取ってみてください。
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