【陶磁器】陶器と磁器の違い!原料や特徴に代表的な有名産地を紹介
この記事の目次
陶器[原料と特徴]
陶器は土物とも言われ、その別名のとおり原料は陶土と呼ばれる粘土になります。焼成温度は800~1200度で焼かれます。
陶器には多孔質(肉眼では見えない細かい穴が表面に多く開いている性質)といった特徴があるため、陶器には吸水性があります。ただし通常、陶器は釉薬というガラス質の膜を塗り仕上げると、水を通過させることはありません。
多孔質であるからこそ、陶器は保温性が高いといったメリットがありますが、吸水性があるために醤油やお茶などの汚れが付きやすいといったデメリットもあります。
これを防ぐには使い始めはお米の磨ぎ汁で煮沸するなどの目止め処理が必要になり、長期使用しないときは、しっかり内側を乾かしカビを防ぐことが大切です。
磁器[原料と特徴]
磁器は石物とも呼ばれ、主な原料は陶石という石を粉にし、粘土に混ぜたものになります。陶石は、ガラスの材料にもなり、長石・けい石を多く含みます。焼成温度は1200~1400度で焼かれます。
素材が石で緻密性が高いのため、吸水性は無く汚れや臭いも付着しにくく、通常のお手入れも柔らかいスポンジと中性洗剤で洗うだけで問題ありません。また使い始めに目止め処理なども必要ないため、扱いやすい焼き物と言えます。
ただし、温度差には陶器より弱く、熱したあとに急に冷やすと割れやすい性質があります。また保温性は高くないため、温かい料理を盛り付ける前は、ぬるま湯にくぐらせて使用するのがおすすめです。
見た目でわかる違い
陶器と磁器の違いは見た目にも表れます。その違いとは、底面の素地の色と感触、器の厚み、釉薬の風合いです。
底面素地の色と感触
陶磁器を裏返すと、ほとんどのものに高台と言われる部分が付いています。この部分は、器を安定させるために欠かせません。
高台には色付けなどがされていないことが多く素地が露出しており、この部分がざらざらして白以外であれば陶器、白く滑らかであれば磁器です。
また中には素地が白っぽい陶器もありますが、触ると滑らかではなく若干のざらつきがあります。
器の厚み
厚みのあるものは陶器、薄手のものは磁器です。
また磁器には陶器と違い、光にかざすと透ける性質があります。この特性を利用し、半透明の磁器製品も数多く扱われています。
釉薬の風合い
陶器は土で作られ表面にざらつきがあるため、釉薬が均一にかかりません。このため、部分的に釉薬がムラになり、それがそれぞれの器の個性となります。
これとは逆に磁器は表面が均一のため、釉薬がムラなく塗布されています。磁器は釉薬のかかり方で風合いを出すのではなく、色柄などで美しさを楽しめます。
陶磁器[有名産地]
常滑焼
常滑焼とは、愛知県常滑市を中心に焼かれている陶器です。
歴史は古く、平安時代から安土桃山時代にかけて約3000基以上の窯が建設されたとされています。
江戸時代においては、比較的低温で焼く素焼きの技法だけでなく、高温で焼き締める真焼け技法も取り入れられました。また明治時代には機械化も導入され、それまでの製品に加え、煉瓦やタイルなど新しい製品も生産されるようになります。このようにさまざまな改良を経て、常滑焼は品質やデザイン、実用性を向上させながら現代に受け継がれています。
常滑焼の特徴は、土肌を生かした朱色の焼き上がりです。
この朱色は、粘土の酸化鉄が発色したもので、以前までは、釉薬を使わずに仕上げられていたため、その朱色を生かした製品が多くありました。近年では、釉薬を使い黒や茶色、緑色などに染められた製品もよく製造されるようになっています。
信楽焼
信楽焼は、滋賀県甲賀市信楽町で生産されている陶器です。
発祥は奈良時代、聖武天皇が、離宮である紫香楽宮の屋根瓦を焼くことだと言われています。
信楽は、温かな色の部分、光沢、黒褐色コントラストが魅力の焼き物です。
温かな色の部分は信楽で産出された土が焼成中に美しい緋色を発することで生まれ、光沢は、焼き上げの途中で信楽焼きに付着した灰が、ビードロ釉と呼ばれる釉薬代わりとなって出されるものです。
黒褐色の部分は灰に埋まった焦げの部分で、日本人の好む “わび・さび” の感性に合うとされ、信楽焼は長年茶器に珍重されています。
その他にも、徳利や火鉢、植木鉢なども豊富に製造されており、土質が大型製品の製造にも適していることから、有名な狸の置物もよく作られています。
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備前焼
備前焼は岡山県備前市伊部で生産されている陶器です。
備前焼の魅力のひとつに茶褐色の地肌が挙げられます。
この色合いは、生産地の鉄分を多く含んだ土と田んぼの底土を混ぜ合わせることにより生まれます。また釉薬を使わず焼き上げるため、わずかな火の温度、灰のかかり方、土の配合で多彩な変化を見せます。
窯の中の状態によって、出来上がりに予想外の色の変化が見られることを窯変といい、その製法により、同じものが製造されることがなく、すべて1点ものになります。
また青備前、黒備前、白備前といった茶褐色以外の焼き物もありますが、製造過程が難しく、偶然にしか出来ないものもあるため希少価値が高いです。
食器や酒器などが数多く作られているほか、花瓶や壺、オブジェなど大型のものもよく製造されています。
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美濃焼
美濃焼は、岐阜県の多治見市、瑞浪市、恵那市、土岐市、可児市、可児郡御嵩町で主に生産されています。
安土桃山時代、それまでになかった斬新なデザインと発想の焼き物として誕生してていると言われていますが、ルーツはまだ古く、平安時代に製造されていた須恵器が原型になっているとも言われています。
安土桃山時代からこの地方では様々な釉薬が開発され、その違いにより多くの色合いのものが作られ「黄瀬戸」「瀬戸黒」「志野」「織部」などが代表的なものでこれらは、美濃桃山陶と呼ばれています。
現在でも、美濃焼産地は、日本最大の陶磁器生産拠点となっており、和食器の全国生産の60%のシェアを占めています。
有田焼
有田焼は佐賀県有田町を中心に生産されている焼き物です。
17世紀初頭、朝鮮人陶工・初代金ヶ江三兵衛(通称:李参平)が有田町の泉山で陶石を発見し、焼き物にしたのが始まりと言われています。その積み出しが伊万里港より行われていたため、江戸時代は伊万里焼とも呼ばれていました。
有田焼と呼ばれ出したのは明治時代に入ってからになります。
有田焼の特徴は美しい色絵です。赤や青、緑、金色などを用い、磁器の余白を上手く生かした文様は国内のみならず海外でも人気です。
多くの有田焼が国の重要文化財にも指定されています。
瀬戸焼
瀬戸焼は愛知県瀬戸市で焼かれる磁器です。
ルーツとなった窯は5世紀末、古墳時代中期末に建築された「猿投古窯群」と言われており、9世紀頃には器の強度を高めるため釉薬を使い焼き物をする技法を確立しています。当時、人工的に釉薬を塗布するということをしていたのはこの地方だけでした。
陶磁器全般を、“セトモノ”とも呼ぶように瀬戸焼は国内の陶磁器の代名詞的存在です。また、海外にはセト・ノベルティとして置物や装飾品が多数輸出され、国内のみならず、海外にも通用する陶磁器です。
日本六古窯
日本六古窯とは、越前・瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前の窯元のことを指します。
これらの窯は、中世から現在まで生産が続く日本を代表する窯です。
昭和初期までは、中世から存続している窯は瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前のみとされ、焼き物の五産地と言われていましたが、その後の研究により越前の存在も明らかになったため、五産地に越前が加わり六古窯となりました。
この名称は、古陶磁研究家・小山冨士夫氏により昭和23年頃与えられたものです。
また、その後の調査で、六古窯以上に中世において盛んだった窯の存在も明確になっていますが、ほとんどの窯が淘汰され、六古窯のいずれかに集約されていったこともわかっています。
日本の焼き物のシェアの大部分を占めるのは美濃焼ですが、それ以外にも日本には伝統的な焼き物があることをアピールする目的で六古窯は制定され、朝鮮半島や中国から伝わった近代の窯と区別する目的も併せ持っています。2017年には日本遺産※に認定されました。
※日本遺産とは、文化庁が認定する世界に発信できる魅力をもつ有形・無形の文化財。
数年に一度、日本六古窯サミットが開催され、六古窯の代表者が一堂に集まり、シンポジウムや交流事業が行われています。サミットでは、各釜本の新たな取り組みや後継者の育成などについての発表もあり意見交換の場として設けられます。また、各窯元の作品も公開されているため、一般の来場者で賑わいます。
まとめ
素材や焼成温度が違うため、両者には見た目やお手入れ方法に違いが表れます。
また一口に陶器や磁器といっても、釉薬の有無や土質によって産地ごとに特徴はさまざまです。
陶磁器の特徴を知ることで、一層自分好みの焼き物を見つけやすくなるのではないでしょうか?
ぜひ、好みの焼き物を見つけて、器にあったお手入れをし長く器を使ってみてください。
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