【日本画】44年ぶりに公開!鏑木清方(かぶらききよかた)幻の名作『築地明石町』[東京国立近代美術館]
鏑木清方とは
ポートレート 鏑木清方(1956年) 根本章雄氏提供
鏑木清方(1878-1972)は東京神田に生まれ、浮世絵系の水野年方(1866-1908)に入門し、挿絵画家として画業をスタートさせました。日本画では文展、帝展を主たる舞台とし、美人画家として上村松園(1875-1949)と並び称されました。 清方は大正前期、鳥居清長の《隅田川船遊び》から着想した《墨田河舟遊》(1914年)に見られるように、浮世絵をもとにした近世風俗を主なテーマとしていました。
それに変化が見られたのは大正末のこと。1923(大正12)年に起きた関東大震災を契機に再開発が進むなかで、清方は失われゆく明治の情景を制作のテーマに加えます。 そうして生まれたのが《築地明石町》(1927年)や、《三遊亭円朝像》(1930年)、《明治風俗十二ヶ月》(1935年)、といった名作の数々でした。その後、展覧会向きの絵とは別の、手もとで楽しめる作品を「卓上芸術」と名づけ、画帖、絵巻などの制作に打ち込みました。
築地明石町
1927(昭和2)年、絹本彩色・軸装、173.5×74.0㎝
鏑木清方《築地明石町》1927(昭和2)年 絹本彩色・軸装 173.5×74.0cm 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio
鏑木清方《築地明石町》(部分)1927(昭和2)年 絹本彩色・軸装 173.5×74.0cm 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio
明治期に外国人居留地だった明石町。
洋館の垣根には水色のペンキが塗られ、朝顔が名残の花を咲かせています。
辺りは朝霧で白く霞み、佃の入江に停泊した帆船のマストを背景に、髪はイギリス巻、単衣の小紋の着物に黒い羽織姿の女性が、朝冷えに袖を掻き合わせてふと振り返る様子が描かれます。
新富町
1930(昭和5)年、絹本彩色・軸装、173.5×74.0㎝
鏑木清方《新富町》1930(昭和5)年 絹本彩色・軸装 173.5×74.0cm 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio
鏑木清方《新富町》(部分)1930(昭和5)年 絹本彩色・軸装 173.5×74.0cm 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio
1878(明治11)年に新築なった新富座は、ガス灯、絵看板、櫓のない建物が特徴の新式の劇場でした。
新富町は有数の花街でもあり、新富座の前を稽古や宴席に向かう芸者たちが行き交いました。
女性は黒衿の古風な普段着姿で、髪は潰し島田に結っています。蛇の目をさし、高くて歯の細い雨下駄で先を急ぐ様子が描かれます。
浜町河岸
1930(昭和5)年、 絹本彩色・軸装、173.5×74.0㎝
鏑木清方《浜町河岸》1930(昭和5)年 絹本彩色・軸装 173.5×74.0cm 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio
鏑木清方《浜町河岸》(部分)1930(昭和5)年 絹本彩色・軸装 173.5×74.0cm 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio
隅田川に架かる新大橋は1912(明治45)年まで木橋でした。
橋の対岸は深川安宅町。歌川広重の《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》にも描かれた火の見櫓は関東大震災まで残っていたと言います。
髪にバラの簪をさした娘が手にしているのは舞扇。浜町の藤間(藤間流三家のうちのひとつ)からの稽古帰りの姿です。
三遊亭円朝像
重要文化財 1930年 絹本彩色、軸
鏑木清方 《三遊亭円朝像》 重要文化財 1930(昭和5)年 絹本彩色・軸装 138.5×76.0cm 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio
墨田河舟遊
1914年 絹本彩色、屏風、六曲一双
鏑木清方 《墨田河舟遊》 1914(大正3)年 絹本彩色・屏風、六曲一双 各168.0×362.0cm 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio
鰯
1937年 絹本彩色、軸
鏑木清方 《鰯》 1937(昭和12)年 絹本彩色・軸装 72.0×86.0 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio
鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開
2019年11月1日(金)〜12月15日(日)
[会場] 東京国立近代美術館 所蔵品ギャラリー10室(東京都千代田区北の丸公園3-1)
[開館時間] 10:00〜17:00 ※金曜・土曜は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)
[休館日] 月曜日
[観覧料] 一般800(600)円 大学生400(300)円
*( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込
*高校生以下および18歳未満、障害者手帳等をお持ちの方とその付添者(1名)は無料
*本展の観覧料で入館当日に限り同時開催の所蔵作品展「MOMATコレクション」もご覧いただけます。
*同時開催の「窓展(仮称)」(11月1日〜2020年2月2日)は別途観覧料が必要です。
[主催] 東京国立近代美術館、文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会
[ホームページ] https://www.momat.go.jp/
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