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【組子細工】0.1ミリの世界!高度な技術に美しいデザインの組子細工とは?特徴や歴史を紹介

 2020/03/30 造形 芸術
 
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組子細工とは

組子細工とは、建具の一部……障子だったり欄間だったりに施される細工のことです。その材料は、木目がまっすぐの杉や、耐久性に優れた檜などの針葉樹が使われることが多いそうです。

古くから培われてきた伝統技術で、木材が重要な日本の建築が生み出した工芸品とも言えます。実際、組子細工があるだけで、一気にその室内が日本らしくなります。また、組子越しに日の光が降り注いだときに、木のパーツが作り出す影模様は綺麗で風情が感じられます。

組子細工は、細かな木片をひとつずつ組み上げていくわけですが、釘を使って留めたり繋いだりすることはありません。パーツに溝や穴を作り、鉋・ノコギリ・ノミなどの道具を駆使して、0.1ミリ単位で少しずつ調整しながら作っていくのです。少しでも調整が狂うと、全体に影響を及ぼします。それゆえに、木片のひとつひとつを見極めながら作業していく必要があります。

組子細工の仕上がりが美しければ美しいほど、根気が要ることが窺えます。その美しい姿は技術の結晶であり、職人さんのさまざまな努力が込められているのです。


組子細工の歴史

組子細工の歴史は、飛鳥時代にまでさかのぼると言われています。当時建立された法隆寺の金堂や五重塔には、欄干(高欄)に組子細工が使われていました。

時代がくだって、室町時代ごろになると建築様式が変化し、書院造が主流となっていきます。書院造は、平安時代から主流となった寝殿造よりも建具が発達して、間仕切りとして襖や障子が多く取り入れられるようになりました。これに併せて組子細工も発展したと言われています。太平の世である江戸時代に入ってからは特に、華やかな細工が普及していったようです。

そうして、日本人の生活に寄り添ってきた組子細工ですが、それからさらに時が流れた現代は残念ながら需要が減ってきています。日本人の生活様式が変わり、日本建築の家や和室を設けた家が減少していったからです。高度な職人技術が必要な技術ゆえに、これからどのように伝統を継承していくのかが課題とされています。


組子細工のデザイン

細かく美しい模様で、人々を魅了する組子細工。その模様にも、いくつか種類があります。

まず、菱、三つ組手、格子、籠目といったシンプルな線で構成された模様。これらは、装飾が比較的控えめな代わりに、さまざまな室内に溶け込みやすいデザインと言えるでしょう。

それから、直線を生かしつつ、もう少し複雑な形を作っているのが麻の葉、亀甲、桜、胡麻、竜胆といった模様です。特に麻の葉や亀甲は、衣服の模様でもよくある柄で、日本らしさを感じられるのではないでしょうか。

組子細工は直線だけの構成ではなく、優美な曲線を描く梅、七宝繋ぎ、青海波などもあります。

また、これらを組み合わせたり、さらに複雑な図案にした、八重麻の葉、桜亀甲、七宝亀甲といった模様も存在します。

このように幾何学模様を敷き詰めていく形式が多い組子細工ですが、実は一枚絵のように作り上げることも可能です。襖や障子全体を一枚のキャンバスに見立て、細かい木を組み合わせて、大きな図像を作り出すのです。こちらはある程度のスペースを確保する必要がありますが、その分見ごたえがあります。


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組子細工の作り方

[1]デザイン決め

どんな組子細工を作るのかデザインを決めます。


[2]木材選び

デザインが決まったら、どの木材を使うかを選びます。

木材にはさまざまな個性があります。
種類が違ったり同じ種類でも別々の木から取ったなら、違うのは当然のことですが、たとえ同じ木でもどの部分を使うかで見た目の印象が異なるのです。
それぞれの板の持つ個性、風合いを見て、その時々にふさわしい板を選びます。


[3]切り出し

組み上げる文様に合わせてパーツを切り出していきます。

このとき形が不揃いだったり、木の乾燥具合などの特性を考えないで切り出したりすると、後の組み立てがうまくいきません。慎重に計算してパーツを確保する必要があります。


[4]組み立て

パーツを切り出したら、組み立ての作業に入ります。

先述のとおり、釘は一切使わず、蝶番のようにつなぐための金具も用いません。宮大工の技法にあるように、木と木を組んで繋ぎ合わせていくのです。

“機械ではなく職人さんの手でひとつひとつ組んでいき模様を作っていく”

それを知ってから、改めて組子細工を見れば、どれだけ気が遠くなるような作業かわかると思います。見た目の美しさだけでは測れない価値が、そこには存在しています。


まとめ

何気なく見ていたはずの組子細工は「そんなに手間がかかっていたんだ」と驚いている方も多いのではないでしょうか。

日常の風景にそっと華を添えてくれる組子細工は、職人さんの手により古くから培われてきた伝統技術です。
未来に残るよう大事に守っていきたいですね。


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nishi

nishi

大学では日本文化や比較文化を学んでいました。美術の学芸員資格を持っていて、一番の趣味も博物館・美術館めぐりです。気になる展覧会があれば、新幹線や飛行機に乗ってでも足を運びます。「推し」は酒井抱一。
普段は花や鉱石、文学などを愛でながらのんびり過ごしています。ゲームのシナリオライターでもあるため、サブカルチャー方面にもアンテナを張るようにしています。
好奇心が原動力。「楽しい!」という気持ちを、いろんな人と分かち合うのが好きです。いつか自分の趣味をふんだんに盛り込んだ展示イベントを企画できたら……と野望を抱いています。

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