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【落語】知っておきたい!落語のはじまりから有名な人気落語家の名前の由来

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落語のはじまり

Photo credit: tablexxnx via Visual hunt / CC BY-SA


室町時代後期から江戸時代初期にかけて、戦国大名たちの話し相手として仕えることを生業としていた人たちは、「御伽衆(おとぎしゅう)」と呼ばれました。

御伽衆は、政治や軍事の話から世間話まで、ありとあらゆるトピックスについて、大名たちと論ずるのが職分でした。江戸時代になると、御伽衆たちの講じる笑い話は、庶民の間でも人気になり、有料で噺を聞かせる人物が登場しました。

当時有料で観客に滑稽噺を聞かせて評判になったのが、京都の露の五郎兵衛(つゆのごろべい)、大阪の米沢彦八(よねざわひこはち)、そして江戸の鹿野武左衛門(しかのぶざえもん)、安楽亭策伝(あんらくていさくでん)の四人の御伽衆たち。この四人の噺家たちが落語家の元祖と呼ばれています。


落語家の亭号(ていごう)とは?


落語家(噺家)の芸名のうち、一般的にいうところの苗字の部分を亭号と言います。

入門すると弟子たちは師匠の亭号をもらって、その流派の一員となり、現在使われている亭号は40余。

その亭号を持つ落語家の数が3桁にも上るというものから、たった一人の噺家が名乗っている亭号まで、さまざまなものがあります。また、一門あるいは同亭号の最高位の名跡は「止め名(とめな)」と呼ばれ、この名跡を襲名した後は、隠居名への改名以外の理由で、他の名跡を襲名することはありません。

この止め名を襲名した落語家は、通常、同亭号の代表として一門を指導する立場にあるとされています。

亭号の由来

落語は、現在の東京で誕生し、江戸弁を話す「江戸落語」と、京都や大阪で誕生して関西弁を話す「上方落語」に分けられます。

ここでは、江戸落語、そして上方落語を代表する亭号、そして止め名をご紹介します。

三遊亭

[さんゆうてい]

「三遊亭」の開祖は、江戸時代に活躍した初代三遊亭圓生えんしょう
落語会最高峰の名跡の一つです。

三遊亭の歴史は、この人が活躍した江戸時代に遡ります。
三遊亭は三遊派に所属し、古今の多くの落語家たちがこの亭号を名乗り、落語会を盛り上げてきました。幕末から明治初期にかけて活躍した、初代三遊亭圓朝えんちょうは、自作落語などで注目を集め、落語の面白さをより多くの人たちに伝えました。

また、戦後になると、三遊亭の噺家たちは、司会者として、またレギュラーメンバーとして、人気長寿テレビ番組『笑点』に出演し、お茶の間でも人気となりました。

三遊亭の止め名は「三遊亭圓生」。

2008年には、この止め名を巡って継承問題が勃発。六代目圓生亡き後は、現在に至るまで、空き名跡となっています。

古今亭

[ここんてい]

「三遊亭」の開祖、初代三遊亭圓生の弟子だった、初代三遊亭圓太えんたが、三遊亭から独立して、初代古今亭志ん生しんしょうを名乗ったことから「古今亭」という亭号の歴史が始まりました。古今亭は三遊亭から分派したため、三遊派の所属とされています。古今亭の止め名は「古今亭志ん生」。

5代目古今亭志ん生は、20世紀を代表する不世出の落語家で、昭和古典落語の黄金期を担いました。5代目逝去の後は、5代目志ん生の実子であり、父にまさるとも劣らない実力の持ち主であった、3代目古今亭志ん朝しんちょうが名跡継承の最有力候補と見られていましたが、2001年に、63歳という若さで亡くなってしまったため、現在は空き名跡となっています。


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柳家

[やなぎや]

江戸時代に人情話の名人として名を馳せた、初代麗々亭柳橋れいれいていりゅうきょうが「柳屋」の開祖。

当時の江戸落語界は、滑稽話を得意とする柳派と、人情話を得意とする三遊派に二分していました。柳派の落語家は、亭号や名前に「柳」の字をつけることが慣例です。

柳家の止め名は、「柳家小さん」。柳家は、落語家として初めて人間国宝という栄誉に輝いた、5代目柳家小さん、同じく人間国宝となった「マクラの小三治」こと柳家小三治を始めとする、実力ある噺家を数多く輩出しています。

2006年に、それまで3代目柳家三語楼さごろうを名乗っていた、5代目小さんの実子が6代目柳家小さんを襲名し、現在は高座やテレビ出演などで活躍中です。

春風亭

[しゅんぷうてい]

「春風亭」は柳派の一派で、柳派の開祖である初代麗々亭柳橋の弟子が、初代春風亭柳枝りゅうしを名乗ったことが、その亭号の始まりです。

春風亭の門弟には、戦後の落語会を新作落語で盛り上げた、5代目春風亭柳昇りゅうしょうや、現役活躍中の春風亭小朝こあさ、そして現在『笑点』の司会者として人気の春風亭昇太しょうたなどが名を連ねます。

春風亭の止め名は、春風亭柳枝りゅうし。この由緒ある名前は、1959年に8代目柳枝が死去して以降、空位となっています。

2006年に、8代目の愛弟子だった三遊亭圓彌えんやに9代目柳枝襲名の期待がかかっていましたが、実現しないまま、2006年に圓彌死去の一報が入りました。圓彌亡き後は、春風亭柳枝の名跡を襲名する落語家は、しばらく現れないのではとも言われています。

林家

[はやしや]

初代林屋正蔵はやしやしょうぞうが「林家」の始祖。

初代正蔵は、初代三笑亭可楽さんしょうていからくに入門すると、三笑亭楽我らくがとして活躍し、その後数回に渡って芸名を変えましたが、晩年は林屋正蔵と名乗り、これが「林屋」という亭号のはじまりとなりました。

明治期に入って5代目正蔵が「林家」に変更し、現在に至っています。林家と言えば、真っ先に思い浮かべるのは、初代林家三平さんぺいという人も多いのではないでしょうか。初代三平は、テレビ創世記にお茶の間を席巻して、「昭和の爆笑王」と称された逸材でした。

初代三平が亡くなってから、初代三平の次男が2代目林家三平の名を継承し、林家の止め名である林家正蔵は、林家こぶ平として活躍していた、初代三平の長男が襲名しました。

親子3代にわたっての真打昇進は史上初として、メディアの注目を集めました。

立川

[たてかわ]

「立川」を創設したのは、ブラックユーモアと毒舌で「落語会の異端児」と呼ばれた7代目(自称5代目)立川談志だんし

当時落語協会の会長を務めていた、師匠の柳家小さんと、落語協会真打昇進試験制度をめぐって対立し、その結果、7代目談志は、落語協会を脱会して「落語立川流」を創設し、立川の亭号を名乗り始めました。

7代目談志は、長寿人気テレビ番組『笑点』の発案者で、初代司会者であったこと、また、衆議院議員に当選し、6年間に渡って政治活動を行なっていたことなどでも知られています。

2011年に7代目談志が死去してからも、弟子の立川志の輔、立川談春そして立川志らく等が、テレビ番組などにも数多く出演するなどして活躍中ですが、立川談志の名跡は空位です。

[かつら]

「桂」の亭号は、初代桂文治ぶんじ家の菩提寺のあった、大阪市北区にある佳木山の山号から連想して名付けたのだとか。

桂文治という名は、元々は上方落語の名跡でしたが、3代目以降、一門は東西に分裂したため、3代目・4代目は東西それぞれの文治が活躍。

初代桂文枝ぶんしが上方5代目文治を継承しなかったことから、桂文治は江戸の桂一門の止め名に、そして桂文枝が、上方の桂一門の止め名となり現在に至っています。

上方の桂一門で有名な落語家と言えば、『新婚さんいらっしゃい!』でもおなじみの6代目桂文枝。

また、江戸の桂一門では、人気長寿テレビ番組 『笑点』で、番組開始当初からの大喜利メンバーとして、また2006年から10年間にも渡り、同番組の司会者としてお茶の間を沸かせた、桂歌丸うたまるがいます。

笑福亭

[しょうふくてい]

「笑福亭」一門の祖は、松富久亭松竹しょうふくていしょちくとする説もありますが、初代松竹については、実在の人物なのかさえ定かではありません。

2代目以降は、松富久亭から笑福亭と亭号を改め、落語道に邁進しますが、戦後になり上方落語全体を不遇の時期が訪れます。そんな上方落語の復興に尽力した、「上方落語四天王」の一人が、6代目笑福亭松鶴しょかくでした。

6代目松鶴は後人の育成にも力を注ぎ、笑福亭仁鶴にかく、笑福亭鶴光つるこ、笑福亭鶴瓶つるべなど、名だたるエンタテイナーを多数輩出しました。

笑福亭の止め名は笑福亭松鶴で、6代目松鶴没後、7代目松鶴として白羽の矢が立ったのは、仁鶴の7番弟子、松葉。しかし松葉は7代目松鶴襲名目前にして、病に倒れて帰らぬ人となり、死後に7代目松鶴を追贈されました。

これ以降、名跡の笑福亭松鶴は空位になっています。



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井筒屋

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