【精進料理】仏教の教えを「食」で感じよう。精進料理の基本とルール、禁止されている3つの食材
この記事の目次
精進料理に適さない食材
精進料理とは「野菜や穀物など植物性の食材のみを使って作られた菜食料理」です。曹洞宗の開祖、道元がその礎を築いたと言われています。
仏教の守るべきルールである、戒律に従って作られている精進料理には、使うことが禁じられている食材があります。ここでは、精進料理で使用が禁止されている三つの食材と、なぜ適さないのかという理由を紹介します。
動物性の食材[肉や魚など]
皆さんご存じの通り、精進料理では肉や魚を使いません。これは生きとし生けるものの命を奪ってはいけないという仏教の「不殺生戒(ふせっしょうかい)」の教えのためです。
匂いの強い食材[五葷・五辛]
匂いの強い食材も禁止されています。匂いが強い食材というのは、「五葷・五辛」と呼ばれる「にんにく」「ねぎ」「らっきょう」「しょうが」「にら」などのこと。これらの食材には精神を高ぶらせる作用があるとされています。これが修行の妨げになることから禁止されています。
酒
お酒は、仏教の「不飲酒戒(ふおんじゅかい)」という決まりから、飲むことが禁止されています。お酒に酔うことで悪い行いをし、人を仏教の目指すところから遠ざけてしまうとされているためです。
※調理酒として調理に使うことは許されています。
精進料理の基本
精進料理は、厳密に言えば、材料選びから調理の工程、そして食事をいただくときの作法に至るまで細かいルールがあります。ここでは、精進料理を形成する考え方をご紹介します。
三徳六味
精進料理の基本のことです。
三徳は、
・軽軟(きょうなん)食べやすく調理されていること
・浄潔(じょうけつ)シンプルで清潔なこと
・如法作(にょほうさ)仏教の教えに則っていること
という精進料理の前提をまとめたものです。
六味は、苦味、酸味、甘味、辛味、塩味、そして淡味という味わいのことを指します。
特に「淡味(たんみ)」は食材本来の味を引き出す調理法のことで、精進料理の大きな特徴のひとつとなっています。
五法
精進料理で使われる「生、煮る、焼く、揚げる、蒸す」という調理法を指します。この5つの調理法を使い、食べやすく、味わい豊かな精進料理に仕上げます。
五色
青、黄、赤、白、黒の食材の色合いのこと。
・青…ほうれんそうなどの緑色の野菜
・黄…大豆やかぼちゃなど黄色の野菜
・赤…にんじんなどの赤色の野菜
・白…白菜やだいこんなどの白色の野菜
・黒…海藻類やきのこなど
精進料理では彩りの美しさだけでなく、栄養をバランスよくとり身体の調子を整えるという、薬膳的な考え方も大切にされています。
三心
精進料理で意識すべき3つの心がけのことを指します。
・喜心(きしん) 作りもてなす喜びと修行の喜びを感じる心
・老心(ろうしん) 相手を思いやり、丁寧に作る心
・大心(だいしん) 囚われを捨てた深い大きな心
この心がけは料理に対してだけでなく、生活の中で常に忘れてはいけない教えとしても伝えられています。
代表的な精進料理
精進料理として食べられている代表的な料理を紹介します。
胡麻豆腐
炒りごまをよくすり潰し滑らかに仕上げる胡麻豆腐。この手間のかかった調理法は、精進料理の「三心」がよく表れていると言えます。
精進揚げ(野菜の天ぷら)
衣に卵を使わず、野菜などを揚げた料理を精進揚げと言います。精進揚げは法要などの仏事で食べられることも多く、身近な料理でもあります。
もどき料理
野菜などで肉や魚などを真似て作った「もどき料理」も、精進料理の代表的な料理のひとつ。「がんもどき」や「あわびもどき」など、肉や魚の見た目や食感を再現して作られます。
精進料理を作る時の注意点
動物性の食材・調味料を使わない
注意したいのは、精進料理では動物性の油やだしも使えないということです。油であればラードやバター、だしについては鰹だしやあごだしなど魚介のだしは使用できません。
「淡味」を大切に
料理の味付けは濃くしすぎず、素材の味を生かした薄味に調味します。味付けを薄くすることで、食材の色も鮮やかに仕上がります。
食材を無駄にしない
野菜の皮やヘタなどを残さず使うことも、精進料理を作る際には欠かせない要素と言えます。皮まで柔らかく食べられるよう、「軽軟(食べやすく調理すること)」を意識することも大切ですね。
まとめ
食材選びから調理方法に至るまで、仏教の考え方が食事に表れている精進料理。
現在では寺院の宿坊(宿泊施設)や、一部の日本料理店で食べることができます。また、紹介したルールを守り、自宅で精進料理を作ってみると、精進料理がより身近に感じられます。
仏教の教えを基礎とした精進料理の考え方に思いを巡らせながら、おいしい料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。