【“ハレ”と“ケ”】伝統的な世界観のひとつ。「ハレの日・ケの日」とは? 行事や食事について紹介
この記事の目次
“ハレ”と“ケ”とは
簡単に言うと、“ハレ”は「非日常」、“ケ”は「日常」を表す言葉です。
“ハレ”は正月などの年中行事や、冠婚葬祭などの人生儀礼など、節目となる非日常の時間や空間を指します。一方、“ケ”は“ハレ”以外の日、つまり普段の生活のことを表します。
“ハレ”の日の行事には、人々の衣食住に大きな変化があるのが特徴です。
正月を例に見てみましょう。
まずは着物で正装をして、お節や雑煮などの普段口にしないご馳走を用意します。家の中には鏡餅や門松を飾り付け、普段の住まいとは違う空間を作ります。
このように普段との違いを取り出してみると、“ハレ”の日の非日常性が見えてきます。
“ハレ”と“ケ”のはじまり
この“ハレ”と“ケ”を紹介したのは、民俗学者の柳田國男(やなぎたくにお:1875~1962)です。柳田はこの“ハレ”と“ケ”の繰り返しが、人々の生活のサイクルを形作っているとしています。
“ハレ”と“ケ”が生まれたのは、米作りが生活の基本になっていたためと言われています。
米作りには、田植えや稲刈りなど、農作業の節目となる作業があり、人々はこの節目の日に豊年を祈って神を祀り、普段口にしない酒やご馳走を楽しんでいました。この節目のお祭りがやがて“ハレ”となり、それ以外の日常を“ケ”と区別するようになったのがはじまりと言われています。また柳田は、現代になるにつれて、“ハレ”と“ケ”の区別が曖昧になっていったと論じています。
現代では“ハレ”の日に楽しむものだった酒は日常的に飲まれるようになり、晴れ着であるはずの制服やスーツも毎日身に着けるものとなっています。生活が豊かになるにつれて、“ハレ”は日常になっていったとも言えます。
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“ハレ”と“ケ”の語源
“ハレ”
“ハレ”は節目・折り目を表す「晴れ」が語源です。
雲が少なく太陽が出ていることを「晴れている」と言いますよね。しかし昔は今とは意味が違っており、雨が上がって太陽が顔を出すという天気の「変化」のことを晴れと言っていました。
天気の変わり目や境目を指す晴れが転じて、節目を意味するようになっていったと考えられます。
“ケ”
“ケ”を漢字で表すと、普段・日常という意味の「褻」が当てはまります。
農家で普段食べる米のことをケシネ(褻稲)と呼ぶこともあり、普段使いのものや日常的なものを表す言葉として、習慣的に使われていたと考えられています。
ケガレとは
“ハレ”と“ケ”に関係する言葉に「ケガレ」があります。一般的には「不浄」という意味の言葉ですが、“ハレ”と“ケ”のサイクルにはケガレが深く関わっていると言われています。
一説に、ケガレは普段の生活(ケ)を送る活力が「枯れた」状態だとされています。
坦々と生活を続けていると疲れがたまり、日常生活にも支障がでてしまいますよね。このケガレを取り去り、エネルギーを回復するための息抜きとして、ハレの日が用意されたのです。
こうして、「ケ」→「ケガレ」→「ハレ」という繰り返しが、日本人の伝統的な生活のサイクルを作っていったのです。
ハレの日の行事
ハレの日は、年中行事や冠婚(葬※)祭など人生儀礼などの行事を指します。
例えば、正月、お盆、祭り、七五三、お宮参り、結婚式、成人式、法会、などがハレの日に当たります。(※葬式は諸説あり)現代では誕生日や旅行なども、ハレの日と考えることができますね。
“ハレ”の食事と“ケ”の食事
“ハレ”
“ハレ”の食事は普段口にしない食材を使った特別なもので、白米や餅、肉、尾頭付きの魚、砂糖などの貴重な食材や、旬の食材などを使っているのが特徴です。
例を挙げると、寿司、すき焼き、赤飯、お節、年越しそば、うなぎの蒲焼、おはぎ、などがハレの日の食事に当たります。また非日常という点では、洋食などの外国料理も“ハレ”の食事と言えます。
“ケ”
一方の“ケ”の食事は、ご飯と味噌汁、漬物などのおかずという「一汁一菜」の形が代表的です。食材でいうと雑穀米や玄米、小魚、キノコや海藻、発酵食品などが使われ、毎食同じものを食べることも多かったようです。
日々必要なだけのシンプルな食事をとる“ケ”の生活を続けているからこそ、ハレの日のご馳走がかけがえのない楽しみとなったのです。
この食生活は今からたった6、70年前の高度成長期にがらりと変わり、ハレの日の食事であった洋食などが日常的に庶民の食卓に上がるようになってきました。時代とともに“ケ”の食事も変わっていったのです。
まとめ
“ハレ”と“ケ”は、日本の伝統的な生活のサイクルを形作るもの。
“ハレ”は非日常を、そして“ケ”はそれ以外の日常を表す言葉だということが分かっていただけたかと思います。
現代の豊かな生活の中で、“ハレ”と“ケ”の境目は曖昧になりつつありますが、「ケの日々」をただ坦々と過ごしているからこそ、「ハレの日」の喜びやありがたさがより際立ちます。
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