【あんこ】野菜や肉などの詰め物「餡」から誕生! あんこの歴史。作り方で分ける種類
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あんこの歴史
もともと「餡」という漢字は、中に詰めるものという意味があり、現在でも肉まんや餃子のなかに詰める具材を指す言葉として使われています。中国から日本に饅頭が伝わった当初は、餡は野菜や肉などの詰め物を指しており、現在のように饅頭の材料に小豆が使われるようになったのは鎌倉時代のことです。それも、塩によって味付けされた「塩餡」で、今のような甘い小豆あんが誕生したのは、室町時代から安土桃山時代にかけてのことだと考えられています。
江戸時代になると、中国やオランダといった海外を通して砂糖が輸入されたのに加え、国内でも黒砂糖や和三盆の生産がはじまったことにより、甘いあんこが出回るようになります。そして、茶の湯文化の浸透もあり、デザインや味が洗練された和菓子が京都を中心に発展し、現在のあんこの基礎が整えられました。
あんこの種類
つぶあん派やこしあん派という言葉があるように、あんこはいくつかの種類があります。分類の方法は様々ありますが、最もよく知られているのは、あんこの作り方によって4つに分ける方法です。
つぶあん
小豆をつぶさないように炊いて作ったあんこのことです。小豆をつぶさずに炊き上げることは難しく、その分小豆本来の風味や味わいを感じることができます。
こしあん
小豆を裏ごししてつぶし、皮を取り除いたあんこのことです。滑らかな舌触りが特徴です。
つぶしあん
小豆をつぶして炊き上げたあんこのことです。裏ごしや皮を取り除く必要はないため、初心者でも作りやすいあんこです。
小倉あん
甘く煮た大納言小豆など大粒の小豆に、こしあんを混ぜて作ったあんこです。京都の小倉山周辺で大納言小豆が収穫されていたことから、小倉あんという名称になったと言われています。
あんこの健康効果
あんこの材料である小豆は、古くから厄除けや魔除けの力があるとされ、お祝いの日に赤飯などで提供されてきました。化学的にも、ミネラルやビタミンB群、タンパク質を多量に含んでいることが分かっており、様々な健康効果があることが解明されています。
あんこに含まれる成分のなかでもサプリメントなどに多く利用されているのが、抗酸化作用のあるポリフェノールです。ポリフェノールには活性酸素を抑える働きがあり、身体の老化を予防する効果があります。アルコールの過剰摂取や紫外線を浴びることで増える活性酸素はシミや病気の原因になることが知られており、ポリフェノールはそれを抑える貴重な成分として重宝されています。
あんこを使った食べ物
和菓子をはじめ、あんこを使った食べ物は、今でも日本各地で大切に受け継がれています。なかには似たような食べ物でも、名称が異なるものがあるので、詳しく解説を加えていきます。
「ぼたもち」と「おはぎ」
お米の周りにあんこをまぶした食べ物を、一般的に「ぼたもち」もしくは「おはぎ」と呼んでいます。この2つの食べ物の違いは、作られる時期の違いという説が良く知られています。萩の花が咲く秋の彼岸で食べるのが「おはぎ」で、牡丹の花が咲く春の彼岸に食べるのが「ぼたもち」という区別です。また、その見た目も萩と牡丹の花の形に似ていることも、名前の由来になっていると考えられています。
なお、「ぼたもち」と「おはぎ」の区別の仕方は諸説あり、地域によっては、粒あんとこしあんの違い、もち米とうるち米の違いなども名称の差異に関係しています。
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「おしるこ」と「ぜんざい」
同じように「おしるこ」と「ぜんざい」も似たような食べ物でも名称が異なっていますが、こちらの場合は地域による違いが大きく関係しています。
関東では汁気のあるものを「おしるこ」、汁気のない小豆の餡に餅や白玉を加えたものを「ぜんざい」と呼んでいます。一方、関西ではこしあんを使った汁気のあるものを「おしるこ」、粒あんを使ったものを「ぜんざい」と呼んでいます。
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おわりに
小豆は小さいながらオールマイティな食材と言われ、古くから様々な食べ方が試されてきました。なかでも、あんこは日本文化を特徴づける食べ物であり、和菓子の発展にはなくてはならない存在です。
和菓子離れが叫ばれる近年ですが、改めてあんこの持つ魅力に触れてみることも新たな発見があるかもしれません。
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