【行事食】食で感じる季節の移り変わり！行事食に込められた願いとそのルーツ

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行事食が生まれた背景

日本は稲作を中心に発展してきた国であり、自然の恵みへの感謝と畏敬の念が人々の生活に深く根付いていました。そのため、五穀豊穣を祈る祭りや、神様に捧げる儀式・芸能が数多く生まれました。

祭りや年中行事の際には、特別な装いと飾り付けが行われるのと同時に、普段とは異なる特別な食事が用意されます。こうした食事は「ハレの食」と呼ばれ、日常を表す「ケ」と区別する、日本独自の価値観に基づいています。

現代でも、赤飯や尾頭付きの鯛の塩焼きは、お祝いの席に欠かせない行事食として親しまれています。また、行事食の中には、もともと貴族や武士の習慣だったものが、次第に庶民へと広まった例も多く見られます。そこには、子どもの健やかな成長や家族の幸せを願う気持ちが込められてきました。

代表的な行事食

正月［雑煮］

おせち料理やお屠蘇と並び、正月の代表的な行事食とされるのが雑煮です。

雑煮の起源には諸説ありますが、平安時代に貴族の「歯固め」の儀式で食されたことに始まり、室町時代には武士の酒宴料理として定着しました。その後、江戸時代に庶民へと広がったと考えられています。

正月料理として一般化したのは江戸時代以降で、神様へのお供え物を「お下がり」として食べる風習が由来とされています。正月に訪れる「年神様」を迎えるため、神棚や床の間に供えた餅を後日食べることで、その年の恵みを授かろうとする意味が込められています。

雑煮は、前年の収穫に感謝し、新年の豊作と家族の無事を祈る行事食として、今も大切にされています。

節分［豆］

2月3日の節分には、豆まきや恵方巻きを食べる習慣、玄関にイワシを飾る風習などが、現代でも広く行われています。豆まきの後に、年の数だけ豆を食べることで、一年の健康と幸せを願います。

もともと節分とは「季節の分かれ目」を意味し、「立春・立夏・立秋・立冬」の前日すべてを指していました。その中でも、旧暦で一年の始まりとされていた立春の節分が特に重要視され、現在の節分行事として定着しました。

季節の変わり目に邪気を払い、災いを遠ざけるための儀式として豆まきが行われ、さらに豆を食べることで福を体内に取り込むという願いが込められています。

土用の丑の日［うなぎ］

土用とは、「立春・立夏・立秋・立冬」の直前、約18日間の期間を指します。丑の日は十干十二支に基づき、12日周期で巡ってくる日です。この二つが重なる「土用の丑の日」は、年によっては複数回訪れます。

なかでも、暑さが厳しく体調を崩しやすい夏の土用の丑の日が、特に重要視されるようになりました。もともと夏の土用には、梅干しやうどんなど「う」のつく食べ物を食べる習慣がありましたが、そこにうなぎが加わったのは江戸時代のことです。

蘭学者・平賀源内が、夏場に売れ行きの落ちるうなぎを売るため「土用丑の日」の宣伝を行ったことがきっかけとされています。本来、うなぎの旬は秋から初冬ですが、ビタミンやミネラルを豊富に含むことから、夏バテ防止の食材として定着しました。

中秋［月見団子］

中秋とは、旧暦8月15日のことを指します。この時期は月の位置が高く、空気も澄んでいるため、一年の中で最も美しい月が見られるとされています。

お月見の風習は中国から伝わり、平安時代には貴族が和歌を詠み、管弦を楽しむ宮中行事として行われていました。江戸時代になると、月見は庶民の間にも広まり、収穫物を供える習慣が定着します。

もともと旧暦8月15日は里芋の収穫祭であったことから、里芋を供える風習がありましたが、江戸時代後期になると、米から作られた団子が主流になりました。十五夜にちなみ15個の団子をピラミッド状に盛り、秋の収穫への感謝と豊作への願いを表しています。

大晦日［年越しそば］

江戸時代には、月末の晦日（みそか）にそばを食べる「晦日そば」という習慣がありました。これが次第に簡略化され、一年の最後の日である大晦日のみにそばを食べるようになったものが、年越しそばの始まりとされています。

大晦日にそばを食べる理由には諸説あり、明確な定説はありません。細く長い形状から長寿を願う説、切れやすいことから一年の苦労を断ち切るという説、風雨に強いそばの生命力にあやかり健康を願う説などが伝えられています。

一年を締めくくる縁起物として、年越しそばは今も日本各地で親しまれています。

おわりに

年中行事と深く結びついた行事食は、現代の日本人の暮らしにおいても欠かせない存在です。正月に雑煮を食べ、大晦日に年越しそばを食べることで、私たちは季節の移ろいや時間の流れを自然と感じ取っています。

行事食には、今回紹介したもの以外にも、お彼岸のおはぎや牡丹餅、冬至のかぼちゃ料理など、日本の文化や風習が凝縮された食事が数多く存在します。

日々の食卓を通して、季節や行事の意味に目を向けてみるのも、日本文化を楽しむひとつの方法かもしれません。