【茶道】季節を楽しむ!茶の湯の季節感「四季を感じさせる茶道具」を紹介
この記事の目次
季節を代表する菓子と茶花
茶道の場合、季節を感じられる仕掛けは多岐にわたっており、例えばお菓子や茶花から四季の移ろいを感じ取ることができます。
桜餅を食べれば春が来たことを実感しますし、カシワの葉に包まれた柏餅を見ると5月5日の端午の節句を思い起こします。
床の間に飾る茶花は植物のため、当然ながら季節によって咲く品種が異なり、その時期に相応しい花が選ばれます。
例えば、椿(ツバキ)と木槿(ムクゲ)は「冬の椿、夏の木槿」と呼ばれるほど、夏と冬を代表する茶花として古くから好まれてきました。
冬の寒さに耐えて花をつける気品ある椿と、暑さのなかで涼やかに咲く木槿は、茶席には欠かせない要素となっています。
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四季を代表する茶道具
ここからは春夏秋冬の各季節を表現する茶道具を具体的に見ていくことにします。
ただ流派や個人の考えによっては使用する時期に若干の違いがあるため、今回取り上げる道具がその季節だけにしか絶対に使えないという訳ではありません。
春
釣り釜
[つりがま]
名称からも想像できるように、釣り釜とは天井から鎖で吊るして使用する釜のことです。
大まかなイメージですが、古民家などで囲炉裏を囲んで食事をする際、鍋や鉄瓶を天井から吊るしている光景を想像すると分かりやすいと思います。
茶道では11月から4月までは小さな囲炉裏のような炉を使って湯を沸かします。それが冬を越し次第に暖かくなってくる気候に合わせて、小ぶりで火元から遠ざけることができる釣り釜を使用するようになってきます。吊るされた釣り釜がゆらゆらと揺れる様子は、「陽炎」や「春風」といった春の風情を感じさせる意味合いがあると言われています。
旅箪笥
[たびだんす]
茶室に据えて水差しなどの茶道具を飾り置く棚物の一種に旅箪笥と呼ばれるものがあります。
これは千利休が豊臣秀吉の小田原城攻めに従った際に考案したことから、別名利休箪笥とも呼ばれています。
その名前の通り旅先にも持ち運べるように作られたもので、屋外で茶会を催す野点(のだて)の雰囲気を演出できるようになっています。春の爽やかな時期に、現代でいうピクニック感覚でお茶を飲めることから、旅箪笥は桜が咲くころに多く利用される茶道具となっています。
夏
平茶碗
[ひらちゃわん]
お皿のように平べったい茶碗を平茶碗と呼び、主に夏に使用されることから夏茶碗とも呼ばれます。
口が広いためお茶が冷めやすく、見た目にも涼しさを感じてもらえるようになっています。夏の茶道具はいかに涼感を醸し出せるかがポイントになるため、絵付けには朝顔や波の模様などが多く描かれています。
釣瓶水指
[つるべみずさし]
井戸から汲み上げた水の入った釣瓶をそのまま水差に転用したのが、釣瓶水指になります。
もともと利休の師匠の武野紹鴎(たけのじょうおう)が、釣瓶をそのまま水屋に置いて使い始め、さらに利休が茶室に持ち出して点前を行ったことが、この水差しのはじまりだとされています。
水に濡らした木地のまま使用し、井戸から汲み上げたままの様子を演出するため、涼感を秘めた夏の茶道具として浸透しています。
秋
鉄風炉
[てつぶろ]
5月から10月までは「風炉(ふろ)」と呼ばれる持ち運びのできる釜を掛ける道具を使用します。
そのなかでも鉄製の風炉を鉄風炉と呼び、新茶から1年間飲んでいたお茶が残り少なくなった名残の秋に使われることが多いです。
鉄製の風炉は一部が欠けたり割れたりすることがあり、独特の侘びた風情を与えてくれます。また、火窓と言われる開口部が大きいものが多いため、火のついた炭が見えやすいことや鉄製のため熱伝導率が高く茶室が温まりやすいことも秋に好まれる理由のようです。
茶壷
[ちゃつぼ]
昔は初夏に摘み取った茶を壺に詰め、11月になると壺の封を切って新茶でお茶を点てることが習わしとなっていました。その名残で今でも11月になると、床の間に茶壷を飾る風習が残されています。
茶壺の口を切って新茶を取り出すことを「口切り」と言い、茶の正月とも呼ばれるほどお目出たい季節となっています。
冬
筒茶碗
[つつちゃわん]
夏の平茶碗と対照的に、縦に細い形をした茶碗が筒茶碗です。
細長い形をしているため熱を保ちやすく、寒い季節に温かいお茶を飲むことができる利点があります。千利休の有名な教えに「夏は涼しく冬暖かに」というものがあり、茶道ではいろいろな工夫をこらして「涼」や「暖」を感じてもらうことが大切になってきます。
手燭
[てしょく]
手で持ち歩けるように柄を付けた燭台を手燭と呼びます。
主に銅製で夜間にロウソクを立てて持ち運べるようになっています。手燭が使用されるのは、夜咄(よばなし)という冬の夜に開催される茶事のときで、手燭の明かりを頼りに露地を進まなくてはなりません。敢えて夜が長い時期にろうそくの明かりのなかでお茶会を行うことによって、冬の風情を感じ取れるようにしているのです。
おわりに
茶の湯は冷暖房器具がない時代に誕生したため、道具に工夫を凝らしながら、その季節を楽しめるようなアイデアが詰まっています。
それは自分だけの満足のためではなく、茶室内でお客さんに快適に過ごしてもらえるような思いやりの心が基礎になっているのではないでしょうか。
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