【金継ぎ】お気に入りの器が蘇る! 伝統技法「金継ぎ」の魅力。技法の種類に簡単な方法
この記事の目次
金継ぎとは
破損した陶磁器や漆器などを漆と金を使って修復する技法です。金、継ぎ、とありますが、修復の中心素材は漆で、金はその上の装飾になります。漆で修復したあと、仕上げに金粉を蒔いて金継ぎが完成です。
漆は、塗料として有名ですが、接着剤にもなりますし、小麦粉と木粉を混ぜればパテに、土を混ぜればペーストになり、破片同士の接着や欠けた部分を埋めることが出来る素材です。また、天然素材で耐久性も高いので、食器などに使っても安心です。
漆で修復したあと、仕上げに金粉を蒔いて金継ぎが完成します。
金継ぎで現れた模様は「景色」と呼ばれ、独特の美しさがありますし、漆は使えば使うほど味わいが出るので、経年変化も楽しめます。
最近では、本物の漆の代わりに樹脂系接着剤を用いた簡易的な金継ぎキットもあるので試してみてください。
金継ぎの歴史
破損した器を漆で修復していた形跡は縄文土器にもみられます。この技術に金の加工が加わり、金継ぎとなるのは室町時代です。
室町時代、足利義政は「馬蝗絆(ばこうはん)」という青磁茶碗を所持していました。しかし、ある時底部の破損に気が付き、代わりを求め中国に茶碗を送ります。ですが、「これに代わる優れた青磁茶碗は現存しない」とのことで、底部の割れはカスガイでくっつけられ送り返されてきます。これが、割れた茶碗を修復するという発想のルーツだといわれています。このカスガイでの修復はあまり美しくなかったため、美観と芸術性を求め、漆と金での修復へと独自に変化していきました。
破損部分を器の歴史と見なし、美しいとするのは日本固有の感覚で、金継ぎに似た技術は世界で類を見ません。ですが、「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」の登場人物・カイロ・レンが金継ぎから発想を得たヒビ入りのマスクを付けるなど、その美しさは世界的に知られています。
金継ぎの魅力
金継ぎの魅力は、同じものが製作できないのでオリジナリティがあることです。また、金色と元々の器の色のコントラストも美しく、魅了される人が多いです。さらに、手間と時間をかけて器を修復するので、ますます器に愛着が持てるのも魅力です。
伝統技法となると数十年かけて習得となりますが、金継ぎはそこまで時間を必要としません。
プロを目指す場合でも2〜4年、趣味レベルならより短期間で習得している人が多いです。また、作業は学習机くらいの作業スペースがあればできますし、必要な道具も1万円以内でセット販売されています。このような手軽さも金継ぎの魅力のひとつですね。
金継ぎの種類
本漆金継ぎ
漆と天然素材(小麦粉・木粉・米粉・砥の粉など)のみを使った昔ながらの技法です。3種類の金継ぎの中で一番習得が難しく、マスターしている人は少ないといわれています。
完成までの時間が1週間〜1ヶ月と長いですが、仕上がりは美しく、耐久性は高いです。
使用している本漆・天然素材の安全性は長い歴史の中で実証済みなので、食器は本漆金継ぎでの修理がおすすめです。
簡漆金継ぎ
欠片の接着や破損部分の穴埋めにエポキシパテや瞬間接着剤などの合成樹脂、仕上げの金粉の接着のみに漆を使う簡易的な金継ぎです。
本物の漆と比べ乾燥時間が短く、1日で完成します。
仕上げに漆を使うので、難易度はやや高いですが、本漆金継ぎほど難しくありません。合成樹脂が漆でコーティングされていますので安全性は高めですが、食器には使用しない方が無難です。
簡易金継ぎ
漆・金粉を一切使わないのが簡易金継ぎです。穴埋めや接着には合成樹脂、仕上げには合成うるしと呼ばれる金色の塗料を用います。見た目は本漆金継ぎと近くなりますが、全く違うものです。
作業は簡単で、1日で修復が完成します。
合成樹脂や合成うるしは本物の漆ではないので、かぶれや取り扱いに注意がいりませんが、化学物質を使っているので、口に付ける器には簡易金継ぎは向いていません。絵皿など観賞用のものなどをなおすようにしましょう。
器の修復の仕方
金継ぎに必要な道具
本漆金継ぎをするのに主に必要なものは以下のとおりです。
①生漆
②小麦粉
③砥の粉
④木粉
⑤金粉
⑥ヤスリ
⑦蒔絵筆・小筆
⑧ヘラ木
簡漆金継ぎなら、②~④の代わりに合成樹脂系の接着剤を使います。簡易金継ぎをする場合は、①~⑤の代わりに合成樹脂系接着剤と合成うるしを使用します。
ほかにも、サラダ油やアルコール、クリアファイル、計量スプーン、ビニール手袋があると便利です。
サラダ油・アルコールは筆やヘラの洗浄に、クリアファイルは作業板として使用できます。また、漆などを計量するために計量スプーンや作業中はかぶれ防止のためにビニール手袋を使用しましょう。
金継ぎの手順
手順は本漆金継ぎ・簡漆金継ぎ・簡易金継ぎ、どれでも同じです。
① 割れた部分に漆を塗り、乾かす
② 割れた欠片と器を小麦粉・漆・水を混ぜた接着剤でくっつけ、乾かす
③ 欠けなど欠損部分があるなら、漆・木粉・砥の粉・水で作ったパテやペーストで埋め、乾かす
④ 余分なパテやペーストを削り、乾かす
⑤ 仕上げに漆を塗り、金粉を振ってから乾かす
各作業後の乾燥は本漆金継ぎの場合、①・③・④は1日、②には2週間必要です。簡漆金継ぎや簡易金継ぎの各乾燥時間は1日程度です。
時期や湿度によっては目安よりかかるため、確認しながら次の工程に移りましょう。
金継ぎ修理の注意点
金継ぎには向いていない素材もあるので注意しましょう。
1つはガラスで、漆が剥がれやすいので、金継ぎにはあまり向いていません。このため、ワイングラスのステムをなおした場合、強度がないので、観賞用となります。ガラス用の漆もありますが、取り扱いが難しく対応していない修理工房も多いです。
ガラス以外にも土鍋など直火にかけるものには金継ぎができません。漆が熱に弱いので、煮えるほどの高温は厳禁だからです。さらに、金に熱を加えるとスパークしてしまい危険です。
同様の理由で、金継ぎした器は蒸し器や電子レンジ、オーブンにはかけられなくなるため注意しましょう。これらに注意しておけば、金継ぎによる修復は強度が高く安全に使えます。
まとめ
伝統技法と聞くと敷居が高いイメージですが、どなたでも取り掛かりやすいです。
また、お気に入りの器が破損しても修理できるのが最大の魅力ですよね。興味があったら、ワークショップや動画・本などがあり、習うことも独学で学ぶこともできます。
ぜひ、素敵な金継ぎの世界を堪能してください。