【茶道】薄茶と濃茶の違いってなに!? 見た目、茶葉、手前の違いから茶事での役割を解説
見た目の違い
一般的に設けられているお茶席は、“薄茶”を提供されること多いので、茶道を習っていない人には、“薄茶”のほうに馴染みがあると思います。
“薄茶”は日常生活のなかでも、甘味処や公園の茶屋などで飲むことができ、淡い緑色の泡だった、シャバシャバとした見た目になります。
“濃茶”はペースト状に練ったお茶で、ドロリとした粘り気のある飲み物です。
先ほど述べた“薄茶”と異なり、“濃茶”は炭火のつぎ足しから、食事、そして喫茶までがセットになった「茶事」と呼ばれる、お茶のフルコースのなかで提供されるのが一般的です。
茶葉の違い
“薄茶”と“濃茶”に使う茶葉の製造方法は、基本的に違いがありませんが、品質の差は存在します。
同じ抹茶でも苦みや渋みの少ない上質なものが“濃茶”になり、若い木から採れた比較的質の落ちるものが“薄茶”になります。
さらに、一人前の量の差にも違いがあり、“薄茶”を1としたとき、“濃茶”はその3倍もの量を使用します。そのため、茶葉そのものの味がダイレクトに感じられる“濃茶”は、甘みの強い質の高い茶葉が使われるのです。
点前の違い
お茶を点てる所作や作法を点前(てまえ)と言いますが、これにも“薄茶”と“濃茶”の違いが存在します。細かな点前の違いや流派による差異はひとまず置いておくとして、もっとも根本的な違いはお茶を作るときの動作です。
“薄茶”は「点てる」という表現が使われることからも分かるように、茶筅で泡を点てるように混ぜて作ります。
それに対し、“濃茶”は「練る」と表現されるように、湯を注いだ後、茶筅で少しずつ練りこんでいくようにして作られるんです。
飲み方の違い
お客さんとして抹茶を飲むときにも、“薄茶”と“濃茶”の違いが表れています。
“薄茶”が一人一碗、お客さんごとに出されるのに対して、“濃茶”は一碗を数名で回し飲みします。
この回し飲みするという方法は、もともと「吸い茶」と呼ばれ、侘茶の大成者と言われる千利休の時代に確立されたようです。
また、“薄茶”の席では、なごやかに会話を楽しみながらお茶を飲むのですが、より改まった“濃茶”席では、静かにお点前を拝見し、お茶を飲むのがマナーとなっています。
道具の違い
“薄茶”と“濃茶”の差異は、茶碗や茶入れなどの道具にも存在します。
まず、茶碗に関しては、“薄茶”では柄や文様の入った、華やかな茶碗が好まれます。それに対し、“濃茶”では数名で回し飲みをするという性質上、大きめのサイズで冷めにくい厚めの茶碗が適しています。さらに、楽焼(らくやき)や萩焼(はぎやき)などの比較的、格の高い茶碗が使用されるのが特徴となっています。
抹茶を入れる容器に関しては、“薄茶”の場合は、棗(なつめ)に代表されるような漆器が使われるのに対し、“濃茶”では仕服に包まれている陶器製の茶入れを使うのが一般的です。
茶入れのなかには、唐物(からもの)と呼ばれる、中国で製作された非常に価値の高いものもあり、茶の湯への関心が高かった戦国時代には、一国に匹敵するほどの値打ちがあると言われていたんです。
茶事における“濃茶”と“薄茶”の役割
「茶事」の流れを把握することで、“薄茶”と“濃茶”の違いは、よりいっそう理解しやすくなります。
前述したように、茶事とはお茶のフルコースのことで、一般的な炉の場合は、以下のようになっています。
[炭手前]
(湯をわかすための炭のつぎ足し)
↓
[懐 石]
(お茶の際に振舞われる食事のこと)
↓
[濃 茶]
↓
[薄 茶]
お茶事では、懐石が出たり、お酒も出たりしますが、ハイライトはあくまで“濃茶”。“濃茶”に向けて、火の加減を整え、懐石を給仕し、茶室のしつらえなどを考慮していきます。
そのため、茶葉も上質なものを使用し、洗練された道具を用い、対話も遠慮するほど凛とした雰囲気で点前が行われるのです。
そして、“濃茶”が終わったのち、連客ともにほっとした気分で味わうのが、“薄茶”。茶事の感想などを語り合い、リラックスした空間でお茶を楽しみます。そのため、“薄茶”の席にはリラックスした雰囲気で楽しみくださいということで、煙草盆(たばこぼん)が用意されるのです。
わつなぎオススメ記事 >>【日本料理】懐石料理と会席料理は違う!それぞれの歴史から献立の流れについて紹介
おわりに
“薄茶” と “濃茶”と役割があり、様々な違いやルールがあります。
お点前によって様々なルールを身につけていけるのも茶道の楽しさのひとつではないでしょうか。
まずは、気軽に茶道に触れてみてください。
わつなぎオススメ記事 >>【茶道】初心者のための茶道具一覧!茶道体験にはこれがあれば安心