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【茶道】草庵の茶室!? にじり口とは!? 茶室の成り立ちと役割、そこに込められた思想を解説

 2020/09/19 伝統 芸道
 
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茶室が成立するまで

室町時代の中頃まではお茶を飲む専用の部屋はなく、連歌や能といった芸能の共通のスペースとして「会所(かいしょ)」と呼ばれる場所が利用されていました。この会所では、お茶を点てる部屋と飲む部屋が異なっており、出来上がったものを座敷に運び出して飲む、いわゆる点て出しの茶が振舞われていました。

この会所はしだいに床の間や棚が整えられ、中国産の「唐物(からもの)」と呼ばれる高価な道具が飾られるようになりました。
これを一般的に「書院の茶」と呼び、後に誕生する「草庵の茶(侘び茶)」と対照的な概念として扱われています。


草庵の茶の成立

15世紀後半から16世紀にかけて、書院建築から独立した私たちがイメージするような茶室が営まれるようになります。広さは四畳半ほどの狭いスペースで、内装も質素で無駄を省いたものとなっています。

この草庵の茶を完成させた人物が千利休で、彼が造ったとされる「待庵(たいあん)」は、わずか2畳の極小の空間です。

藁を練り込んだ土壁、竹材を多用した天井や窓など簡素な空間ながらも、主人と客が緊張感を持って向き合うように設計された茶室は、それまでの茶の湯には見られなかった新たな趣向となっています。


茶室の広さ

茶室は広さによって、「小間(こま)と「広間(ひろま)」に分けられます。四畳半以下を小間と呼び、四畳半以上を広間と言います。

広間では台子をはじめ種々の棚物を飾って点前をすることができますが、小間は棚物をいっさい用いることができません。

いわば小間はわび茶の世界であり、広間は書院の茶を行う空間として設計されています。


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入り口

茶室のなかで最も特徴的な部分のひとつが、屈まないと出入りできない「にじり口」です。このにじり口は草庵茶室に特有のもので、千利休が船小屋に入る漁師の様子を見て考案したと伝わっています。

にじり口を通る際には武将であっても刀を置かないといけないので、茶室内では身分の差がなく平等であるという考えがあります。また、小さな入り口を通ることで、茶室という空間を大きく感じさせるという効果もあるようです。

つまり、にじり口には、お茶会という非日常的な空間を引き立てる役割があるのです。


茶室では明るさの加減を大切にし、採光を調節して明る過ぎないほの暗い雰囲気が好まれます。そのため、窓の位置や大きさなどに工夫をこらし、茶室に適した光の加減を演出していくのです。
以下に茶室に使用される代表的な窓の種類を2つ挙げていきます。

下地窓(したじまど)

別名「塗残窓(ぬりのこしまど)」とも呼ばれています。茶室の壁は骨組みの上に土を塗って作りますが、一部を塗り残して骨組みを露出させ窓にしたものです。

連子窓(れんじまど)

窓枠を取りつけ、竹や木材を間隔をあけて並べた窓のことです。下地窓と同様にほとんどの茶室に備えつけられている代表的な明り取りの窓になります。

茶の湯に厳しさを求めた千利休は、茶室の窓を少なくし暗がりの強い空間を好み、そのあとの時代に活躍した古田織部や小堀遠州は、比較的窓の多い明るい雰囲気の茶室を好みました。


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床の間

茶室に入るとまず目に留まるのが床の間です。

掛け軸や花入などを飾る床の間は、茶室のなかでもっとも重要な場所とされており、入室するとまず初めに掛物を拝見することになっています。

掛物は、その日のお茶会のテーマを表す道具として利用され、亭主は床の間の飾りを中心に、他の道具の取り合わせを考えていくのです。


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露地

露地とは茶室への通り道として整備され、手を洗う蹲踞(つくばい)などが備え付けられた庭園のことです。

お茶会で床の間に飾られた花を引き立てるため、多くが色味や香りの少ない常緑樹で構成されているのが特徴です。お茶室に入る体を清めるとともに、心を落ち着かせるという効果が露地には期待されています。


まとめ

現代のお茶会では、邸宅や公民館の一室を茶室として利用するケースがほとんどだと思います。

そのため、露地やにじり口が設けられていることは稀で、上記したような草庵の茶室に触れる機会はなかなかありません。

しかし、本来の茶室の機能を知っておくことで、茶道が備えている思想をより深く理解できるのではないでしょうか。


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ライター紹介 ライター一覧

島塚 啓

島塚 啓

昔から歴史や文学などの日本文化が好きで、大学では学芸員免許を取得しました。
今でも茶道や美術鑑賞など五感を満たしてくれる体験を求めて、日々情報収集に余念がありません。頭のなかをいっぱいにした後は思いっきって一歩踏み出してみましょう!感動的な出会いはいつも僕たちを待ち構えているはずです……。

一生のうちで好きなことに費やせる時間は、ほんのわずかしかありません。そんな貴重な時間を大切に過ごすために、みなさまが日本文化に触れる一助になれるような記事が書ければいいと思っています。

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