【土偶】縄文の謎 何のために作られたのか?! 知れば知るほど面白い土偶の魅力に埴輪との違い
この記事の目次
土偶とは
“縄文時代に作られた土製の人形(ひとがた)”とよく説明されます。特に妊娠した女性をモチーフにした姿をしたものが多いのが特徴です。
一般的な説では、狩猟採集生活をしていた縄文人が、妊娠した女性の姿に思いを託して豊かな自然の恵みを祈って作ったものと言われています。また、祖先や自然を敬うこころとして作られたと言われています。
ただ作られた目的や使い方については分からないことも多く、土偶は歴史上の大きな謎のひとつです。
土偶は縄文時代から弥生時代中期にかけて1万年もの間作り続けられます。その長い期間を通して見えてくる特徴は、十字型の胴体、そしてわざと壊されていることです。
胴体は人間や動物が生きるための機能(生や生殖)をつかさどる場所と言えます。土偶の胴体を大きくして目立たせたのは、そんな縄文人の思いもあったのでしょう。さらに面白いのは、土偶にわざと壊された形跡があることです。
これは土偶が「再生」の役割をもっていたと考えられていたことから説明できます。木々が豊かな実りを繰り返すように、“人が生と死を繰り返しますように”といった祈りが込められていると考えられます。
埴輪と土偶の違い
同じ土製の人形として混同されやすい土偶と埴輪ですが、その違いは3つのポイントから説明できます。
[1]作られた時代
埴輪が登場するのは4~7世紀の古墳時代で、紀元前の縄文時代に作られていた土偶とは時期が違います。
[2]発見される場所
集落の周りで見つかることが多い土偶に対して、埴輪は集落からはなれた古墳の近くで出土します。
[3]モチーフ
埴輪は人間や動物だけでなく、円筒型や舟形、建築などの形が作られました。これも人の姿をモチーフにした土偶とは違うポイントです。
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個性的な土偶たち
遮光器土偶
出典:国立博物館所蔵品統合検索システム
この宇宙人のような個性的なたたずまい、一度は見たことがあるのではないでしょうか?
遮光器土偶は青森県の亀ヶ岡遺跡から発見された縄文時代晩期のものが有名です。遮光器とはイヌイットなどが雪の反射から目を守るために身に着けたゴーグルのことですが、これに目の表現が似ていることから名づけられました。
かんざしや首飾りなどの装飾が繊細に施されていて、この時代の服装を知るヒントにもなりそうです。
ハート型土偶
出典:Wikipedia 群馬県東吾妻町出土のハート形土偶
縄文時代後期に関東や東北地方で作られていたハート形土偶。
それらを代表するのは群馬県の郷原遺跡から発見された土偶です。ハート形にデフォルメされた頭部はこの時期の土偶の特徴ですが、一説では頭部は木の実(オニグルミ)を割ったものをモチーフにしたとされています。
岡本太郎の作品にも影響を与えたとされる、のびやかで力強さのある姿が魅力的です。
縄文のビーナス
出典:Wikipedia 土偶 長野県茅野市棚畑遺跡出土/縄文のビーナス。
丸みを帯びた優しい姿が印象的な縄文のビーナスと呼ばれる土偶です。ふっくらしたお腹や乳房が強調されていることから妊婦の姿をモチーフにしたものと考えられています。
長野県の棚畑遺跡で出土したこの縄文のビーナスは、約2万点見つかっている土偶の中でも異彩を放つ存在として知られています。その理由のひとつは雲母片が練りこまれ、きらきらと輝いていること。もうひとつは土偶の特徴でもある破損された痕跡が全くないことです。
もしかすると、縄文のビーナスは他の土偶とは使い方や目的が違ったのかもしれませんね。
仮面の女神
三角形の顔がどこかユニークな仮面の女神。
国宝である長野県の中ッ原遺跡で出土した縄文時代後期の土偶に代表されるものです。国宝の仮面の女神は右足が壊れた状態で出土しましたが、破片のいくつかは空洞になった胴体にはめ込まれていました。
このように、土の重みで壊れたのとは明らかに違う状態で見つかる土偶は数が多く、これがわざと壊されたと言われる理由なのです。土偶の使われ方について考える上で興味深い資料のひとつと言えますね。
縄文の女神
出典:Wikipedia 西ノ前遺跡出土
すらりと伸びた脚に省略された顔や腕、ふくらんだ腹部を見ると妊婦を表現しているのでしょうか?
縄文の女神と呼ばれる土偶はいくつかありますが、山形県西ノ前遺跡で見つかった縄文時代中期の土偶は国宝に指定されています。
特徴的なのはその造形美。人の体を抽象化したような表現は現代人から見ても新鮮で、圧倒されるような美しさがあります。現代アートのように鑑賞してみるのも、土偶の楽しみ方のひとつと言っていいでしょう。
中空土偶
出典:Wikipedia 中空土偶「茅空」の複製
中空土偶とは縄文時代後期の後半に見られる、中が空洞になった土偶のことです。土をくりぬく事で軽くなり、大きく作ったり、移動させたりするために便利だったと考えられます。
中でも、丸い顔に愛嬌のある表情が特徴の北海道著保内野(ちょぼないの)遺跡のものは国宝に指定されている貴重な例です。この土偶は女性的な部分と男性的な部分をあわせ持った中性的な姿が特徴です。
このような表現をすることで人を超えた神の姿を表しているという説もあります。
合掌土偶
出典:Wikipedia 風張1遺跡出土
何かに祈りを捧げているどこかユーモラスな姿に、思わず笑みがこぼれるこの土偶。
合唱土偶は、蹲踞(そんきょ:しゃがむ姿勢のこと)土偶ともよばれ、座りこんで手を組む姿をした土偶のことを指します。
代表的なのは国宝に指定されている青森県風張1遺跡で出土した縄文時代後期の合掌土偶です。この土偶は写実的に作られているのが特徴で、目や眉、指、女性器の表現までもが繊細に表現されています。
また一説には、この姿が古代の安産姿勢とも似ていることから、出産を表現しているとも言われています。
作られた理由
採集生活をしていた縄文人にとって自然の恵みがいかに大切かを考えると、1万年近く日本各地で作られていたことも不思議ではない気がします。縄文時代については謎が多く、土偶が何のために作られたのかについてはいくつかの説があります。ここでは代表的な二つの説を紹介しましょう。
身代わりにするため
日本では古代から病や怪我の原因を「ケガレ」のせいと考えてきました。このケガレを身体から移し取り除くために使われたのが身代わり、形代(かたしろ)と呼ばれるものです。
同じように縄文人が形代=土偶を使ったとすると、ケガレを移した土偶を破棄する、つまり壊す必要があります。
この説なら、土偶が欠けた状態で見つかる理由も説明できそうですね。
霊を慰めるため
古代人の死因として考えられるのが出産にともなう死です。成すすべもなく死んでしまった妊婦や胎児を弔うこともきっと多かったことでしょう。
土偶が妊娠した女性をモチーフにしたものが多いと説明しましたが、この霊たちを鎮め、安らかに送るために土偶が作られたとも考えられています。
まとめ
土偶の作られた理由や使い方については諸説あり、謎が多いのも事実です。
はるか昔の縄文時代の人々が何を考え、何を大切にしていたのか。
それをわたしたちに想像させてくれるのが土偶の魅力とも言えます。ぜひ一度土偶を間近で見てみて、縄文時代に思いを馳せてみてください。
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