【木炭】日本の文化の名脇役! 木炭の作り方から歴史、食材を美味しくする秘密を紹介
この記事の目次
木炭の歴史
日本では約30万年前の遺跡から炭の痕跡が発見されており、古くから木炭が生活に利用されていたことが分かっています。
当初は料理の煮炊きなどに使われていましたが、弥生時代後期には製鉄の熱源として、さらに奈良時代には大仏の鋳造にも使用されるようになりました。その後、山間地域では1950年ごろまで重要な収入源として炭焼きが続けられ、里山の保全にも役立っていました。
木炭の製造方法
木は繊維とミネラルで構成されており、そのまま燃やすと二酸化炭素と灰になります。しかし、窯のような酸素を供給できない条件で蒸し焼きにすると、酸素が炭素と結びつくことができず、そのまま残って木炭となります。つまり、不純物の少ない木炭は炭素の塊であり、燃やすと長く安定した火力を出すことができます。
木炭の製造方法は、産地や窯の大きさによって若干異なっていますが、以下に代表的な作り方を紹介していきます。
①原木の調達
材料となる木は、クヌギ、ナラ、カシなどの広葉樹が一般的です。品質を一定にするため1種類の木が使われることが多いです。
②窯詰め
窯内部の大きさに合わせて木を切り、奥から隙間なく詰めていきます。詰め終わると窯の入り口をレンガなどで閉じます。
③炭化
火をおこし徐々に水分を飛ばし、窯の大きさや木炭の用途に応じて、1日から1週間ほど蒸し焼きにします。この工程では酸素の供給量を最小限に抑え、窯内部を高温の状態に保ちます。
④精錬(ねらし)
炭化が終わると、少しずつ空気を送り込み、炭を硬く焼き締める精錬の作業に入ります。精錬が進み過ぎると木炭が焼失してしまうので、非常に技術のいる仕事になります。
⑤窯出し
火を消し窯が冷えるまで待ってから、木炭を取り出します。炭焼きは「木伐り3年、窯作り10年、炭焼き一生」という言葉があるほど、難易度の高い作業です。
木炭の種類
木炭の種類は大きく黒炭(くろずみ)と白炭(しろずみ)に分けられます。用途によって使用される木炭は異なり、一般的に白炭のほうが黒炭よりも高級品になります。
黒炭
クヌギやコナラを材料とし、400℃から700℃の低温で炭化させた木炭です。素人でも着火しやすく燃焼時間も1〜2時間程度なので、現代ではバーベキューに用いられることが多いです。
他にクヌギの黒炭は茶道でも利用され、断面に放射状の細かい割れ目が入っている様子が菊の花のように見えることから菊炭(きくすみ)とも呼ばれています。クヌギの黒炭は火力が強く香りも良いため、昔からお湯を沸かす燃料として重宝されてきました。
白炭
仕上げの段階で1000℃から1200℃程度まで窯の温度を上昇させた後、消し粉(土と灰を混ぜて水を含ませたもの)をかけて急激に冷ました木炭です。表面に灰がついて白っぽいので白炭と呼ばれ、叩くと金属音がするほど硬いのが特徴です。着火しにくいという難点はありますが、安定した火力を長時間にわたって得られるため、焼き鳥やうなぎの蒲焼きなどを作るプロの料理人が使用しています。
白炭のなかでも特に有名なのが紀州備長炭で、最高級の品質を誇る白炭として知られています。江戸時代に備中屋長左衛門(びっちゅうやちょうざえもん)がウバメガシを材料に生み出したことから、備長炭という名称になったと言われています。
炭火で調理
炭火を使うと美味しく焼きあがる理由の1つに、ガス火と異なり水分をほとんど含まない点があげられます。水分が少ないと料理がベチャとした仕上がりにならず、表面をパリッと焼くことができます。また、炭火の調理には赤外線の放射熱を利用しているという特徴もあります。
熱の伝わり方には「対流」「伝導」「放射」の3種類があります。フライパンに熱が伝わって食材を焼くのは伝導、エアコンで空気が温まるのは対流にあたり、どちらも物質を介して熱が伝わります。
それに対し、放射は大きな熱量を持つ赤外線(電磁波)によって、直接、物を温めることができます。そのため、炭火で焼くと中までしっかりと火が通り、ふっくらとした焼き上がりになるのです。うなぎ屋さんや焼き鳥屋さんで炭火を好んで使うのには、こういった理由があります。
おわりに
燃料として良質な木炭は、食材を美味しく焼き上げ、煙・炎・臭気を出さないという特徴があります。
古くから培われてきた炭焼きの技術は、生産量こそ少なくなったものの、現在まで連綿と伝承されています。
日本の文化を豊かにしてきた先人たちの知恵に、改めて感謝しないといけないかもしれません。
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