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【蚊帳】かつての夏の風物詩 “かや” とは? 浮世絵の題材にも。歴史や素材による特徴

 2022/08/14 風土 歴史
 
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蚊帳の歴史

日本生まれと思われがちな蚊帳ですが、実は紀元前6世紀の中東が発祥の地とされています。では、日本での蚊帳の始まりはいつでしょうか。

歴史は古く、奈良時代まで遡ります。蚊帳についての最も古い記述は、奈良時代初期に編纂された「播磨国風土記」に残されています。元々は、中国の百済や呉から渡来した縫衣工女(きぬぬいのおみな)や蚊屋衣縫(かやのきぬぬい)と呼ばれる女性技術者によって日本へ伝わり、当時高級品であった絹や麻をふんだんに使った蚊帳は貴族を中心に広がっていきました。

蚊帳が本格的に作られ始めたのは、奈良時代になってからです。

中国から伝わった方法で絹や木綿で作られた蚊帳を「奈良蚊帳」と呼びます。室町時代に入ると、奈良蚊帳の人気ぶりに目をつけた近江八幡(現在の滋賀県)の商人が素材を麻に変えて「八幡蚊帳」として売り出すとたちまち評判を集め、蚊帳の普及に一役買ったのでした。

時代は進み、ようやく庶民に広がり始めたのは、江戸時代に入ってからのこと。しかし、まだまだ麻が貴重な時代、安価な和紙素材で作られた紙帳(しちょう)も登場しましたが、通気性が悪く快適とは程遠いものでした。明治時代になると海外綿糸の大量輸入に伴い、低価格かつ加工のしやすい木綿のおかげで一気に綿素材の蚊帳が普及することになります。

それから、昭和40年ごろまで増加の一途を辿った蚊帳。最盛期は250万帳もの蚊帳が売れていましたが、衛生環境の改善に伴う蚊の減少や、住環境の変化などにより蚊帳を使う家庭が少なくなっていったのです。


浮世絵の題材

蚊帳は浮世絵にも度々登場し、いかに人々の生活に身近なものだったかという様子がわかります。

歌川国貞の「夕立景」には雷が鳴り響く中、女性が耳を塞ぎながら蚊帳に入るという姿が描かれています。現代でも雷が鳴って恐ろしいときは蚊帳の中に入るとよいという言い伝えが残っており、聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

麻には絶縁機能があり、電線の漏電防止の役割を担っていたり、機能の面から見ても理にかなっているのです。その他に、麻は古くから神聖なものとして神事の際に用いられ、人間の力が及ばない不思議な呪力があると考えられていました。そのため、麻で作られた蚊帳には外の世界と内の世界を区切る結界の役目を果たしてくれると信じられていたのです。


蚊帳の素材と特徴

蚊帳は時代に合わせて、素材を変えてきました。現在は麻、木綿、レーヨン、ナイロンが主な素材です。

それぞれの素材に特徴があり、中でも麻は通気性に優れている他、熱伝導率の良さが蚊帳の中にこもりがちな湿気をうまく外へ逃がしてくれます。また、虫にも強く耐久性に優れているのが特徴。

素材の配合によって本麻、両麻、片麻の3つに分けられます。

麻のみで作られている本麻は、最も通気性に富んでいて涼しいのが魅力ですが、やはりお値段が少し高くなります。麻特有のシャリシャリとした素材感は、目にも涼やかさを感じられるのもポイント。麻、レーヨンで構成されているものは両麻と呼ばれ、レーヨンが含まれる分価格が抑えられてお手頃。片麻は縦糸に綿、横糸に麻とレーヨンを使用したものです。

その他、ナイロンや綿100%のものなど機能性と予算のバランスで自分にあったものを選ぶとよいでしょう。

最近では虫除け製品などが使えない肌の弱い方や、なるべく自然の風を感じて寝たいといった様々なニーズに対応できる蚊帳が見直されつつあります。電気を使わずに涼を感じられるエコな商品なので、節電対策にもなりますね。


蚊帳の種類

現在では蚊帳の種類はバラエティ豊か。伝統的な吊り下げ式、天蓋のようなベッド蚊帳、赤ちゃんをエアコンの空気や虫から守るベビー蚊帳、虫がよりつかないようにする食卓蚊帳、テント風な作りでより通気性に特化した屋外用蚊帳とその種類は多岐に渡ります。

蚊帳を作っている会社ではオーダーメードや修理といった形で対応してくれるため、自分にあったものを長く使っていけるのも魅力の一つです。


蚊帳の使い方

和室で使う場合、長押にフックや金具を設置しそこに蚊帳の四隅についている吊り手を引っ掛けます。長押がない部屋の場合、壁面に直接フックを取り付けそこに引っ掛ければ、どんな部屋でも設置が可能。設置する際、蚊が侵入しないようにしっかりと蚊帳の裾を床につけておくことがポイントです。


蚊帳のお手入れ

蚊帳は洗濯できるの? と気になる方も多いのではないでしょうか。

残念ながら、天然素材のものは表面にでんぷんのりでコーティングしてあることがあるため、洗濯は基本的にはできません。もし汚れてしまった場合は、固く絞ったふきんで優しく押すようにして拭いてあげると多少の汚れは気にならなくなるでしょう。

天然素材のものでどうしても洗濯したいと言う場合は、平織(ひらおり)の蚊帳は織り目を固定するためにでんぷんのりでコーティングしているので、そのような加工が施されていないからみ織のものであれば洗濯することも可能。ナイロンやポリエステルといった化学繊維を使用した素材の蚊帳は、気兼ねなく洗濯ができるので万が一汚してしまった時も安心ですね。


蚊帳の保管方法

蚊帳は夏のシーズンの間は毎日使うものなので、基本的にシーズン中は出した状態のままが良いでしょう。ただ、広げたままだとどうしても邪魔になるため、一方の壁面側に寄せて吊り下げた状態で収納するのが手軽でおすすめです。

シーズンが終わった後の保管方法は、軽く埃などの汚れを落とした後、陰干しをし高温多湿の場所を避けて保管しましょう。


まとめ

防虫効果に加え、涼をいかにしてとるかという先人の知恵が詰まった蚊帳。

利便性のみならず、いつもの部屋の中に幻想的な空間を作り出す蚊帳は、ほっとやすらぐ癒しを与えてくれるでしょう。忙しい現代人にこそ蚊帳の中でゆっくり体を休める時間は必要なのかもしれません。

ぜひ、まだ味わったことのない方は一度体験してみてはいかがでしょうか。


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ふくやま ひとみ

ふくやま ひとみ

日本文化と聞くとどこか難しくて敷居の高さを感じてしまいがち…
少し前までは私もそんな一人でした。

意外と知っているようで知らない日本のこと。
自然と歳を重ねるごとに、日本文化を大切にしていきたいなと思うようになりました。日常に溢れる日本文化から伝統文化まで、幅広く興味を持って日々、知識を吸収中です。

趣味は旅行。
知らない街を歩いて巡るワクワク感が好き。旅行の楽しみは、その土地ならではのおいしい調味料や地元の郷土料理を発掘すること。
ご当地ならではの手ぬぐいの収集も趣味。

まずは、明日友達に話してあげようくらいの気軽さで日本文化をより身近に感じてもらえたらと思います。
日本文化を知るきっかけとなるような記事をお届けしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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