【おかめ】穏やかな微笑み。幸せの象徴! おかめとおたふくは同じ!? 違いとは。それぞれの由来にエピソードも
おかめとおたふくの違い
ふと疑問に思うのが、おかめとおたふくは何がどう違うの?ということ。結論から言うと、おかめとおたふくは同じものを指しており、呼び方が違うだけなのです。
日本に古くからある狂言の面の一つであり、その呼び方はバリエーション豊か。狂言の世界では乙、乙御前(おとごぜ)と呼ばれており、人形浄瑠璃文楽ではお福といった呼び方もあります。
表記にも違いがあり、おかめをお亀、阿亀、おたふくをお多福、阿多福と表す場合もあります。呼び方は違えど、両者は同じものとわかるとなんだかすっきりしますね。
おかめの由来
おかめは、芸能の神様の一人である「アメノウズメ」が起源とされています。
アメノウズメは日本最古の踊り子とされ、あのアマテラスが天岩戸に隠れてしまった時に滑稽な踊りや舞を披露し、アマテラスを外に誘い出した神様です。
アメノウズメがユーモアたっぷりに神々を笑わせた姿と、狂言の世界での滑稽で憎めないキャラクターを演じる乙御前(=おかめ)には重なる部分があるかもしれません。
そのほかに伝わる由来は、特徴的な頬にあると言われています。
高くまんまると突き出した頬が甕(かめ)のようであることから「おかめ」と呼ばれるようになった説です。また、室町時代の巫女の名前、亀女からとったという言い伝えもあり、はっきりとした由来はわかっていません。
おたふくの由来
おたふくの由来には諸説あります。
一つ目が、前述した狂言の面である「乙」からきていると言われる説。「乙」の音が訛って「おた」と変化したと言われています。
二つ目は、下膨れの顔の形を表している説。顎を意味する「おとがい」が転じ「おた」となり、「膨れ」から「ふく」に変化し、特徴的な顔の形を表しています。
三つ目は、福を招くという意味を表す説。多くの幸せがあることを指す「多福」に接頭辞の「お」をつけお多福と呼ばれるようになった説です。
そのほか、ふっくらした頬の様子が魚の河豚(ふぐ)に似ているからといった少し信じ難いような話もあるほどおたふくの名前の由来は多様なのです。
幸せの象徴
かつて、おかめやおたふくのような顔立ちは美の象徴であると同時に、幸せの象徴でもありました。
時代の変化とともに美の基準は変わってくるため、今でこそおたふく顔と言う言葉はあまり歓迎されないかもしれません。しかし、おかめやおたふくの福々しい顔つきは五徳美人と言われ、幸せのヒントが詰め込まれているのです。
幸せの象徴として人々に愛され続けてきた理由は、内面の美しさが顔立ちに滲み出ていたからだと言えるでしょう。
[小さく一重まぶたの目]
仏像のような半眼に似ていることから、自分自身を内省する心を表現。
[豊かな耳]
他人の言葉に耳を傾けられるようにという意味。また、福耳を表すものでもありお金に困らない印でもあります。
[低い鼻]
おごらず、常に謙虚な気持ちを表現。
[おちょぼ口]
不満や愚痴などの余計なことは言わず、慎み深いことを表す。
[柔らかな表情]
穏やかで優しい心を表し、和顔施(わげんせ)そのものを表現。 ※和顔施とは、仏教の無財の七施の一つで、いつも穏やかな顔つきで人に接する行為
おかめのモデル!? 阿亀さん
阿亀さんは、自分自身を犠牲にしてまでも夫である「長井飛騨守高次(ながいひだのかみたかつぐ)」の名誉を守り抜いた非常に献身的な妻でした。
鎌倉時代、京都にある大報恩寺(千本釈迦堂)の建築を依頼された宮大工の夫は誤って大切な柱の一本を短く切りすぎてしまいました。困り果てていた夫に、建築の専門知識がない阿亀さんが、枡組という手法で短くなった柱の長さを継ぎ足すことを提案します。このアドバイスのおかげで工事は無事に進み、夫は窮地を救われます。
しかし、阿亀は女性である自分の助言で夫の仕事が成功したと世間に広まってしまうと、かえって夫の名誉を傷つけ迷惑をかけてしまうかもしれないと思い、上棟式の前日に自害してしまったのです。
この阿亀さんの夫を想う気持ちにあやかって、今日では「おかめ」は夫婦円満を象徴するシンボル的存在になっています。
おたふくのモデル!? お福さん
お福さんは、幸せを掴んだシンデレラストーリーのヒロインそのものでした。
京都の貧しい家で生まれたお福さん。ある時、道を歩いていると声をかけてきた男性がいました。その男性こそが、のちの夫となる叶福助だったのです。
叶福助とは、福助人形のモデルになった人と言われており、諸説ありますが京都の呉服屋の主人で大変なお金持ちだったと言われています。
福助の一目惚れで二人は結婚し、お福さんは貧しい生活から一転、幸せな暮らしが続いたと言われています。玉の輿に乗ったお福さんは、多くの幸せに恵まれたことから「お多福さん」と呼ばれるようになったそうです。
まとめ
いつも穏やかな微笑みを浮かべているおかめとおたふく。一見すると美人とは言えない顔立ちですが、そのにこやかで親しみやすい笑顔に内面の美しさが現れ、たくさんの幸せを呼び込んでいたのでしょう。
おかめやおたふくを見習って、いつでもどんな時でも笑顔を忘れずにこにこしていたいですね。笑顔でいることこそ、幸せの近道かもしれません。
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