【片渕須直監督】今年もワークショップを実施!徹底した時代検証の検証経講義にコアファンもため息[広島国際映画祭2020]
片渕監督は広島国際映画祭の初期頃から毎年ワークショップを行っており、世界中で高い評価を得た『この世界の片隅で』や、昨年公開の『この世界のさらにいくつもの片隅に』などについてもその進捗などを合わせて触れたりと、毎年広島に訪れていました。
現在新作を構想中と語る片渕監督。そのテーマに関連した事項として、京都についてのリサーチ中であることを説明。これまでに引き続き完成するまでHIFFのワークショップで紹介すると語り、この日会場を訪れたコアな片渕監督ファンを期待させます。
一方、徹底したリサーチの上で物語を構成するという徹底した作品作りが定評を呼んでいる片渕監督。代表作の一つでもある『マイマイ新子と千年の魔法』でも、あの清少納言が子供時代を過ごした周防の国(山口県防府市)をさまざまな観点でリサーチし、1000年前の少女として登場させていることを、この日どのようなリサーチで物語の発案を作ったか、その検証経緯を細かく説明します。
このような検証を行う理由として「自分の習い性だけど、この子供がどういう人生を歩んだか、資料的に眺めてみたかったんです。そうすれば別の物語として作ることができるのではと考えたので」と語る片渕監督。舞台となる街を実際の遺跡が発掘された現場の様子や、さまざまな資料を駆使して実際その時代の風土、人々の暮らしがどんなものだったのかなどといったことを検証、考察していきます。
こうした検証作業に関して「立体的に読み込んでいくと、意外にもいろいろなものが見えてきます。分かるところがあれば、そこは絵に描ける。シナリオハンティングをやっているようなものなんですよ」と語る片渕監督。
例えば枕草子の冒頭「春はあけぼの」「秋は夕暮れ」などといった誰もが知っているような項目からも、さまざまな観点で清少納言がこれを書いていたであろうと思われる場所を推測してみたり、清少納言の知人らしい人の残した文章から、歴史書にある清少納言の死亡時期に疑いがあることを発見したりと、学校の古文や歴史の勉強だけでは発見できない観点を次々と披露、観衆は皆感服した表情を見せます。またこの時代の考察するにあたり、特徴的なものとして「十二単」をはじめとした「当時の華やかな生活様式」を検証。さすがにいつもこのような姿ではないであろうという考えのもと、「普段着姿」をさまざまに調査した経緯をたどります。
そして片渕監督は清少納言は実は内気で、物陰からさまざまなものを観察していたという内容を『枕草子』に書いているところから「そこから見たものを生き生きと書いていると、情景が浮かんできます。
教科書に書いてある内容とは違う印象を味わえますので、その意味では(「枕草子」を)もっと多くの人に読んでほしいですね。平安時代って意外と面白いんだぜ、って思うし。周囲の興味深い人物の存在に気づくことも多いんです」と語り、現在取り組んでいる新作ではこのような人たちの心の中のドラマを「どう組み立てて面白く作れるか」と踏み込んだ構想を考えていると語り、新作への期待感をさらにあおります。
そして次回作も海外で広く浸透する作品にしたいと語り「完成がいつになるのかは未定ですが、ただの(日本の)エキゾチズムではない、リアルを感じてもらえる形で海外にまで持っていければと思っています」と意気込みを語りこの日のイベントを締めくくりました。
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