【ししおどし】仕掛けの総称!? 名前の由来に日本庭園で設置のはじまり。音の効果
ししおどしとは
ししおどしとは田畑を荒らすイノシシやシカ、鳥などを追い払うための農具のことで、鳥獣駆除のために設置された道具はすべて「ししおどし」と呼んでいました。
田んぼの案山子(かかし)や楽器の鳴子(なるこ)などもししおどしの一種です。
現在私たちがししおどしと呼んでいる竹製のもの、正式には「添水(そうず)」と言いますが添水もイノシシやシカ除けのために作られた道具でした。
しかし添水の音があまりにも風流であったことから人々に好まれるようになり多くの日本庭園で設置されるようになりました。
漢字で書くと
ししおどしを漢字で書くと「鹿威し」となります。
獅子脅し、獅子威し、と書かれている場合もありますが鳥獣駆除の背景を考えると日本に野生の獅子(ライオン)は存在しないので適当ではありません。
日本における「しし」は獣(けもの)の意味でありイノシシやシカなどを表しています。またししおどしには「しかおどし」の呼び名もあるため漢字では「鹿威し」と書くのが正式とされています。
ししおどしの仕組み
①水が竹筒に流れ込む
②竹筒の内部に水がたまっていく
③内部に水が満たされると重みで先端が下がる
④水がこぼれる
⑤内部の水がすべてこぼれると元の位置に戻る
⑥戻るときに反対側の竹の先端部分が石に当たり音が鳴る
ししおどしの起源
日本庭園に初めてししおどしを設置したのは江戸時代に徳川家の家臣であった文人・石川丈山(いしかわじょうざん)です。
石川丈山は自身の隠居所として京都市に「詩仙堂(しせんどう)」という山荘を建てました。詩仙堂は山のふもとにあったためイノシシやシカがひんぱんに出没して追い払うために考案されたのがししおどしです。
ししおどしの音はイノシシやシカを追い払っただけでなく、侘しい隠居生活の慰めにも役立ったようです。
石川丈山は庭園設計でも知られた人物ですが、彼が設計した京都市の「渉成園(しょうせいえん)」や京田辺市の「酬恩庵(しゅうおんあん)」にはししおどしが設置されています。いかに石川丈山がししおどしを気に入っていたかがわかります。
やがてこれらの日本庭園を手本にししおどしは全国へと広がりました。なお石川丈山の隠居所であった詩仙堂はその後、曹洞宗の寺院となり今も多くの人々が足を運んでいます。
音の効果
ししおどしはもともと鳥獣を追い払うための農具でした。人間の耳にはなんとも心地よく聞こえるししおどしの音ですが、あの音で鳥獣を追い払えたのでしょうか?
ししおどしの音、人間の耳には心地よくても動物には不快です。また警戒心が強い動物にとって静かな場所で突然鳴る音は恐怖でしかありません。
しかし動物には学習能力があるため音が鳴ってもそれ以外に害はないとわかると、ししおどしが鳴っても田畑に近づくようになってしまいました。
そのため短期的には効果がありましたが効果の持続という点では厳しかったと言えます。
一方、庭園にあるししおどしは私たち人間にリラックス効果やリフレッシュ効果をもたらします。ししおどしに流れ込む水音やししおどしが奏でるカコーンという音色、ししおどしの置かれた庭の風情、季節の情景、それらがひとつとなって私たちを癒してくれるのです。
まとめ
鳥獣駆除の道具であったししおどしが日本庭園に欠かせない装飾品となっているとはおもしろいですね。
動物には不快な音が人間には風流に聞こえたおかげ、とも言えるでしょうか。ししおどしを見つけたらぜひその音を味わってみてください。
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