【信楽焼】なぜ?たぬきの置物!意味がある。信楽焼の特徴や歴史を紹介
信楽焼とは
出典:Wikipedia
信楽壺 ロサンジェルス・カウンティ美術館蔵
出典:Wikipedia
信楽壺 室町時代 箱根美術館蔵
信楽焼は、滋賀県甲賀市信楽を中心に製造されている陶器です。
鎌倉時代後期、信楽に常滑焼の技法が伝わり製造が始まったといわれています。
信楽は良質の陶土に恵まれていること、茶の湯が盛んな京や奈良に近く茶器の需要が高かったことを背景に、焼物が発展を続けてきました。多くの窯が、時代の流れとともに縮小したり閉鎖されたりする中、今日でも古くから残る信楽焼は貴重です。
2017年4月28日に日本遺産に認定され話題となった日本六古窯は、平安時代から鎌倉時代にかけて始まった窯をいい、信楽の窯はその1つに数えられます。
信楽焼の原料となる粘土は、長石・石英・珪砂などが多く含まれ、粘性が高いことが特徴です。粘性が高いと成形がしやすいため、大物作りにも、細かな小物細工にも適しているといわれています。
信楽焼の焼成温度は1200℃以上と非常に高いです。高温で焼成されることにより焦げや赤褐色の素朴な肌が生まれ、これが何ともいえない信楽焼の魅力となります。
信楽焼の特徴・技法
信楽焼は小物だけでなく大物も多いこと焦げや赤褐色の焼き上がりが特徴とお伝えしましたが、特徴はそれだけではありません。
自然釉(しぜんゆう)を使った風合いが魅力のひとつです。
釉とは、陶器の表面を覆っているガラス質の部分のことで、この部分があることにより陶器には余分な水分が染み込みません。また、釉によりさまざまな色合いや風合いが生まれるため釉は陶器の見所でもあります。
通常、釉は焼成前に器に釉薬を塗布することにより生まれますが、信楽焼の釉は焼成中に降りかかる灰により出来上がります。このように、天然のものから出来る釉を自然釉と呼びます。
自然釉のため完成は職人にも予想が付かず、窯の中の器の位置、火の流れ、天候、燃料の薪の種類などによって同じ時期に焼いた器でも、同一のものは出来上がりません。
自然釉により、信楽焼は黄緑や緑・褐色に変化したり、ビロード釉などを形成したりと非常に美しいです。
最近では、自然釉だけでなく人工的な釉薬を用いた信楽焼も誕生しており、自然釉とは一味違った風合いで、自然釉と人工的な釉薬の対比も信楽焼の面白味となっています。
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たぬきの置物はじまり
たぬきの置物は、明治時代に陶芸家の藤原銕造が作ったことがはじまりです。
彼は、京都での修行中のある夜、大きなたぬきと小さなたぬきが腹太鼓を打っているのを目撃します。翌朝この事を師匠に話すと、それは「世にも珍しいたぬきの腹太鼓」ということを教えれます。
この体験が忘れられなかった彼はその後、自らたぬきを飼い観察し、たぬきの置物を完成させたということです。
信楽のたぬきの置物が有名になったのは、昭和天皇が信楽で沿道に並ぶ数々のたぬきの置物をご覧になり、この光景を大層気に入られ「幼なとき集めしからに懐かしもしがらき焼の狸をみれば」という歌を詠まれました。
この歌や様子は新聞に掲載され、全国的にたぬきの置物は知られるようになりました。
たぬきの置物の意味
たぬきの「た」は「他」「ぬき」は「抜き」の字があてられ、たぬきは「他抜き」、つまり「他人を抜く」という意味に通じるとされています。
このため商売繁盛や招福、金運上昇などに良いといわれており、開店祝いや引っ越し祝いなどに好まれます。
信楽焼の本場・信楽町では軒先にたぬきの置物を並べるお店や家庭が多く、地元の人や観光客の目を楽しませています。
八相縁起
信楽焼のたぬきの笠・目・顔・腹・徳利・通帳・金袋・尾は特徴的です。これらには、それぞれ意味があり「八相縁起」と呼ばれています。
「笠」は、思いがけない災難から身を守るため、日々用心や準備をしておこうという意味です。
「目」は、物事をしっかり見つめ気配りをし、正しい判断が出来る目を養うという意味に通じます。
「顔」は、愛想良く誠実な笑顔を心がけようというメッセージが含まれています。
大きな「腹」は、冷静さと大胆さ、しっかりとした決断力の象徴です。
たぬきの持つ「徳利」は、人徳「通帳」は、信用のことであり、それらを身に付けることが大切という意味です。通帳は、帳簿の場合もあります。
大きな「金袋」は、金運に恵まれるようにという願いが込められています。
大きく先の太い「尾」は、大きく太くしっかりと物事を終われるようにという願いです。
八相縁起を持つたぬきは、福を招くといわれており、明治から現在まで愛され続けています。
まとめ
信楽焼のたぬきの置物は、可愛いだけではなく、商売繁盛、招福や八相縁起の意味が込められています。
このような縁起の良さが人気の理由ですね。
また、信楽焼は本来の自然釉の技法を守りながらも、新しい人工釉を取り入れるなど進化しており、伝統を大切にしながらも、時代に合わせて柔軟な姿勢を見せる信楽焼。
今後も新たな作品の発表が楽しみですね。
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