【開催中止】千三百年の、その先へ。特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」開催[東京国立博物館]
この記事の目次
本展の見どころ
[1]模写で迫る、在りし日の威容
「法隆寺金堂壁画」は、釈迦浄土図や阿弥陀浄土図など仏の群像を描いた大壁(高さ約3.1メートル、幅約2.6メートル)4面と、諸菩薩を単独で描いた小壁(高さ同、幅約1.5メートル)8面の計12面から成る巨大な壁画群です。そのしなやかで力強い描線と緻密な色彩によって、インドのアジャンター石窟群や中国の敦煌莫高窟と並ぶ世界的な傑作とされますが、金堂解体修理中の1949(昭和24)年に火災により惜しくも焼損しました。
本展では、焼損前に描かれた模写のうち特に優れたものや、焼損後に再現された現在の壁画などの展示により、この壁画がかつて誇った荘厳な姿に迫ります。
[2]国宝・百済観音、23年ぶりのお出まし
飛鳥時代を代表する仏像で、“百済観音”の名で親しまれている国宝「観音菩薩立像」は、昭和の初めまで法隆寺金堂内に安置されていました。像高約210センチのすらりとした体幅と柔和な尊顔が生み出す比類なき美しさで、多くの人々を虜にしてきました。1997年にはルーブル美術館で公開され、世界の人々を魅了しています。
以降、法隆寺から外に出ることはありませんでしたが、今回、23年ぶりに東京で公開されることになりました。さらに、金堂の本尊釈迦三尊像の左右に安置される、国宝「毘沙門天立像」、国宝「吉祥天立像」も出品。金堂ゆかりの選りすぐりの寺宝をご紹介します。
法隆寺金堂壁画とは
西院伽藍に五重塔と並んで建つ金堂には、本尊釈迦三尊像を中心に仏教世界が彫刻、絵画で表現されています。
とくに仏菩薩浄土を大画面に描き出した壁画12面は、インド風の表現をのこし、中国・唐時代の様式を踏襲した本格的な古代仏教絵画の遺品です。創建当初の法隆寺伽藍は670(天智9)年に落雷による火災で焼失し(『日本書 紀』)、その直後に再建されたのが現在の伽藍とみられることから、金堂壁画もそれ以降の近い時期に制作されたと考えられています。
この貴重な壁画を次世代へ継承する取り組みは明治時代から行われ、昭和初期から戦後にかけては、原寸大の写真撮影や画家による模写、合成樹脂による壁画の強化など様々な記録・保存方法が試行されました。1949(昭和24)年1月26日、金堂の解体修理が進められるなか、火災により壁画の大半が焼損。文化財保護法が策定されるきっかけとなり、同日は文化財防災デーに制定されました。焼損した壁画は保存処置が施され、焼けた金堂部材とと もに今も法隆寺に保管されています(非公開)。
法隆寺金堂壁画(模本) 第1号壁釈迦浄土図
[前期展示]
法隆寺金堂壁画(模本) 第1号壁 釈迦浄土図 桜井香雲摸 明治17年(1884)頃 東京国立博物館蔵 前期(3/13~4/12)展示
法隆寺金堂壁画(模本) 第10号壁薬師浄土図
[前期展示]
法隆寺金堂壁画(模本) 第10号壁 薬師浄土図 鈴木空如摸 大正11年(1922) 大仙市蔵 前期(3/13~4/12)展示
法隆寺金堂壁画(模本) 第6号壁 阿弥陀浄土図
[後期展示]
法隆寺金堂壁画(模本) 第6号壁 阿弥陀浄土図 桜井香雲摸 明治17年(1884)頃 東京国立博物館蔵 後期(4/14~5/10)展示
法隆寺金堂壁画(複製) 第3号壁 観音菩薩像
[後期展示]
法隆寺金堂壁画(複製) 第3号壁 観音菩薩像 便利堂制作 昭和12年(1937) 安田一氏寄贈・東京国立博物館蔵 後期(4/14~5/10)展示
法隆寺金堂壁画(再現壁画) 第12号壁 十一面観音菩薩像
[後期展示]
法隆寺金堂壁画(再現壁画) 第12号壁 十一面観音菩薩像 前田青邨ほか筆 昭和43年(1968) 法隆寺蔵 後期(4/14~5/10)展示 写真便利堂
百済観音とは
蓮華座の上にすらりと立ち、左手は下げて水瓶を軽くつまみ、右手を前方に差し伸べた観音菩薩。
両腕と天衣を除く本体は頭頂から台座蓮肉までクスノキの一木造りで、お顔や胸、両肩や 腰の膨らみには乾漆が盛り上げられています。頭部が小さく長身の姿は飛鳥彫刻のなかでは特 異で、風をはらんだように前方に巻き上がる天衣の流麗な曲線も魅力的です。
宝冠や胸飾り、腕の飾りには、唐草文様を彫り透かした金銅製の金具が用いられており、特に宝冠 正面には阿弥陀如来の姿が表わされています。宝珠形をした光背は竹を模した柱に支えられ、その根本には山岳文様が表わされています。広大 無辺な大きさであるという観音菩薩の姿を、山岳との対比によって表現したものでしょう。
本像は法隆寺金堂に安置されていたことが『元禄諸堂仏体数量記』(1698年)によって知られ、同記録にある「百済国より渡来」との伝承から、大正時代以降は「百済観音」の名で親しまれています。
国宝 観音菩薩立像(百済観音)
[通期展示]
国宝 観音菩薩立像(百済観音)飛鳥時代・7世紀 法隆寺蔵 通期 写真飛鳥園
国宝 毘沙門天立像
国宝 毘沙門天立像 平安時代・承暦2年(1078) 法隆寺蔵 通期 画像提供;奈良国立博物館(撮影:森村欣司)
国宝 吉祥天立像
国宝 吉祥天立像 平安時代・承暦2年(1078) 法隆寺蔵 通期 画像提供;奈良国立博物館(撮影:森村欣司)
特別展
「法隆寺金堂壁画と百済観音」
未定~5月10日(日)
[会場] 東京国立博物館 本館特別4室・特別5室(〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9)
[開館時間] 9:30~17:00 ※入館は閉館の30分前まで、会期中の金曜・土曜は21:00まで開館
[休館日] 月曜日(ただし3月30日(月)、5月4日(月・祝)は開館)
[観覧料金 ] 一般1,200円(1,100円)、大学生600円(500円)、高校生400円(300円)、中学生以下無料
※( )内は前売りおよび20名以上の団体料金 ※障がい者とその介護者1名は無料です。入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。 ※前売券は2020年1月7日(火)から3月12日(木)までの間、展覧会公式サイト、各種プレイガイド、東京国立博物館正門チケット売場(窓口、開館日のみ、閉館の30分前まで)で販売。 ※「東京・ミュージアムぐるっとパス」で、当日券一般1,200円を1,100円(100円割引)でお求めいただけます。正門チケット売場(窓口)にてお申し出ください。 ※本展観覧券で、会期中観覧日当日1回に限り、総合文化展(平常展)もご覧になれます。
[展覧会公式サイト] https://horyujikondo2020.jp/