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太鼓と創造力がつくりだす、新・視聴体感芸術! 鼓童×ロベール・ルパージュ〈NOVA〉【公演中止】

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ロベール・ルパージュ インタビュー

[インタビュー実施日:11月9日]


ーーロベールさんは、これまでさまざまな手法を駆使して舞台を作られてきました。今回は、太鼓とテクノロジー。この発想はどのように生まれたのですか?

初めて鼓童と会った時、彼らは「視覚的な表現」を追求しようとしている印象を受けました。それは至って当然のことですよね。なぜなら、彼らは「響き」や「音楽」に強いこだわりを持つパフォーマーだからです。視覚的な表現を我がものにできるようになれば、それはとても素晴らしいことだと思います。 ただ、私は日本人ではないので、日本独特の色彩表現には足を踏み入れようとは思いませんでした。一方で、日本的表現とはまた違う、普遍的な色彩感覚も存在すると思います。私はそこに着目したり、日本の伝統的な手法を保ちつつテクノロジーを使ったりすることで、パフォーマンスを高めようと思いました。

テクノロジーを持ち込むにあたっては、常に慎重に考えなければなりません。テクノロジーそのものに特別な意味を持たせてしまい、伝統的なパフォーマンスの趣旨から離れてしまうようなことは避けなければいけません。あくまでも、テクノロジーはアーティストのパフォーマンスを高める手段。なので、特定のテクノロジーを使う必要はないと思っていました。


ーー〈NOVA〉のテーマは、 「サイマティクス」です。一般的には、音波によって物体を振動させることだったり、音の可視化という意味で使われる言葉ですよね。なぜこのテーマを選ばれたのでしょうか?

サイマティクスは、振動、リズム、ビートといった音楽の概念に密接に関わっています。サイマティクスの理論によれば、私達が目にするあらゆる形状や形式の中に「世界」が存在するということ。肉体さえも「音」によって形づくられるということになります。かつてビッグバンが起こった瞬間、宇宙には自由に移動する無数の細胞や分子がありました。それらの粒子はやがて、さまざまな形状や形式を取りながら一つにまとまりました。なぜなら、ビッグバンの爆発音には、あらゆる周波数、振動、そして音符が含まれていたからです。

これを表現できたら面白いのではないかと思いました。鼓童のパフォーマンスを目の当たりにすると、圧倒的な振動や響きを体感します。パフォーマンスを繰り広げられると、観客のほうも変わっていく。私はこの作品を通して、魂、心、精神、身体、そしてこの世界の形状や形式のどれもが、音や振動、リズムによって変化してしまうということを表現しようとしました。


ーー今回の作品をロベールさんの言葉で説明していただけますか?

簡単に言うと、世界や宇宙の創造に関する作品です。その中での人間の体験や、どのように人間が世界と対峙するかを表現しています。闇と光という2つの領域があり、闇と光を往来し、その過程で何を学ぶのかという問いは常に存在します。つまり、それが〈NOVA〉のすべてと言えるでしょう。

世界と、その発展や進化について、そして自滅へと向かう道を表現しています。作品を通じて政治的なメッセージや「大変だ!」「世界を救わなければ」というようなことを伝える意図は一切ありません。過去の混乱から学び、今私達が暮らしている信じられないほど複雑な世界と人間の体験との間でどのように折り合いをつけるか、ということ表現したいのです。


ーー稽古期間も残すところわずかとなりましたが、現段階での作品の状態や、これからの「詰めの作業」に対する心境を教えていただけますか?

長期にわたって作品に取り組んでいると、「これで十分だろうか。すべてやり尽くしただろうか。私達の意図は観客にきちんと伝わるだろうか」という思いに常に駆られるようになります。しかし、私達は今、やれることはやり尽くしたと言える非常に贅沢な地点にいます。少なくとも満ち足りています。 まだ編集という膨大な作業が残っていますが、何が重複しているのか確認し、二度も三度も繰り返している箇所はすでにわかっていて、そこで取捨選択が必要になります。アーティストにとって苦痛を強いられる選択も出てくるでしょう。なぜなら、一生懸命作り上げたものを削除しなければならないからです。今は、このハラハラするような手に汗握る段階です。

次に新しい局面が待っています。最終調整の段階では、すべてのアイディア、プロジェクト、楽曲、その全てが非常に興味深いものになっています。それらを1つにまとめると、別の意味を持ち始めます。これも作品創作の一部です。現在、1つの大きな流れになるようにすべてをまとめている段階なのですが、良くも悪くも、予期していなかったものが突如として見え始めます。現段階では、完成した作品に私は大変魅了されています。なぜなら、素晴らしいものがありすぎるからです。どうぞご期待ください。

ロベール・ルパージュのインタビュー全文、〈NOVA〉メンバーのインタビューは、公式サイトにて公開

https://www.kodo.or.jp/nova/




鼓童×ロベール・ルパージュ〈NOVA〉製作記者発表会

太鼓芸能集団「鼓童」の企画制作を行っている株式会社北前船・代表 青木孝夫氏より、今回の鼓童×ロベール・ルパージュ〈NOVA〉製作の経緯、ロベール氏と鼓童の出会いについて説明いただきました。


PHOTO:Takashi Okamoto

鼓童は、1971年(前身『佐渡の國鬼太鼓座』時代)から日本の太鼓を舞台芸術として昇華させていく歴史の先頭に立ち、道を切り拓いてきました。そして2020年、新たに日本の太鼓の可能性を探るべく世界初演に向け準備をしています。

ロベール・ルパージュさんはアイディアに満ち溢れた演出家で、映像とテクノロジーを駆使しながら、鼓童がパフォーミングアーツとしてさらに進化するような舞台芸術作品を作り上げています。舞台を通して人間の根源的な価値を見出し、未来に希望をもっていただけるような舞台となっています。


ロベール・ルパージュ[演出] × 住吉佑太[鼓童] クロストーク



PHOTO:Takashi Okamoto

ーー本作品に込めたそれぞれの想いについて

[住吉佑太(以下、住吉)]
今回の舞台は、自分たちでは作り上げることができない作品です。鼓童では、人間誰しもが持っている人間の魂や本能的な部分に訴えかけるテーマを表現していますが、そこにロベールさんのテクノロジーを使った演出をかけ合わせ、打ち手の魂を表現しています。

一見、テクノロジーと魂はかけ離れたものに思えますが、テクノロジーによって人間の根源的な部分が浮き彫りになるような作品となっています。

[ロベール・ルパージュ(以下、ロベール)]
我々表現者に共通する『創造』という部分を重視し、鼓童の音楽とともに人間の本質を「創造」というテーマで表現しました。

ーー(ロベール)鼓童のどのような部分に魅力を感じましたか?

[ロベール]
厳しい規律の中で鍛錬を重ねた作品作りに惹かれました。表現者に共通する点である、 鍛錬を重ねることで超越したパフォーマンスを行う鼓童に魅力を感じました。

また、太鼓の魅力は人々の魂に届く、深いバイブレーションを持っている点だと思います。

ーー〈NOVA〉でチャレンジすることについて

[ロベール]
まず、テクノロジーと人間らしさのバランスの調整に挑戦しました。

[住吉]
普段の作品作りでは曲に合わせ動きや表現を考えるが、今回は何もない状態からロベール氏のコンセプトやストーリーをもとにやりとりを重ね、音楽と表現を生み出しました。その点は鼓童のクリエイションで今までにない挑戦でした。

また、音楽面では、テクノロジーを駆使した映像など、音楽以外の要素が多いため音楽面でも緩急の振り幅が広がっています。

ーー(住吉氏)「音を見る」「サイマティクス」というテーマ聞いた際の感想・象徴するシーン

[住吉]
サイマティクスには以前より興味がありました。

今回の作品ではサイマティクスの表現に留まるだけではなく、全ての素粒子が音によって結ばれているという哲学的なことや、自然の中から生まれる音、人類が築き上げた文明の音、自らの鼓動の音などを全て可視化し、サイマティクスによって物語を紡いだ世界観を届けたいと考えています。

またロベール氏は、舞台において、音やイメージがテクノロジーによってインタラクティブに反応することで、鼓童の音のエネルギーがより力強く表現されていると説明されていました。

ーー(住吉氏)〈NOVA〉は鼓童にとってどのような意味を持ちますか?

[住吉]
今回の作品は、世界中のどこにもない新しいジャンルの舞台です。まさに『新・視聴体感芸術』として鼓童にとって太鼓の新たな側面を見出すことができると考えています。

スペシャルパフォーマンス

「雨」を表現したシーン



PHOTO:Takashi Okamoto

この奏法は今までの鼓童にはない新しいもので、打ち手ではない第三者が太鼓の打面に触れることで、音色に変化をつけていきます。「音の視覚化」というテーマを聞いたときに、鼓童の音楽監督を務める住吉が最初に思いついたアイディアです。

この曲が完成した時は、ただただ音色の違いを聴かせるだけの音楽でしたが、ロベール・ルパージュ氏が直感的に「雨」という世界観を演出として付け加え、一緒に作り上げた一曲で、実際のテクノロジーが使われていない状態の演奏ではあるものの、構築中の舞台に向けた、鼓童のクリエイティビティーを披露しました。


「プラスチックの粒」を使ったシーン



PHOTO:Takashi Okamoto

一見、「種」なのか、「米」なのか、はたまた「水」なのか。「プラスチック」という無機的な素材が、逆に様々な表現の可能性を生み出します。

太鼓の打面の上に敷き詰められた「粒」は、革の振幅と共に舞い上がり音色にも変化をもたらします。

命の始まり、そしてその躍動。そこから祈りへと繋がっていく。


「残像のエフェクト」を使用したシーン



PHOTO:Takashi Okamoto

普段見ることができない角度から、打ち手のストロークの残像を映し出しています。

それにより、太鼓の音を表現するために必要な身体性が増幅して現れます。それぞれの楽器がフィーチャーされることによって、昆虫や鳥の一種のように、元の形を持ちながら、新しい個性を生み出すイメージを創造しています。

※このパフォーマンスは物語の一部ではありませんが、技術的要素として披露されました。


太鼓芸能集団「鼓童」


佐渡島を拠点に、太鼓を中心とした伝統的な音楽芸能に無限の可能性を見いだし、現代への再創造を試みる集団。

1981年ベルリン芸術祭でデビュー。以来50の国と地域で6,500回を越える公演を行う。劇場公演のほか、小中高校生との交流を目的とした「交流学校公演」や、多様なジャンルのアーティストとの共演、国際芸術祭、映画音楽等へ多数参加している。

2012年から2016年まで坂東玉三郎氏を芸術監督に招聘。2017年「幽玄」で坂東玉三郎氏と再共演を果たし、翌18年には歌舞伎座において新作歌舞伎「幽玄」として演奏で参加した。

近年は石川さゆり、初音ミク、AI、元ちとせ、ブラフマンらと共演。2019年には19年ぶりの中国ツアーを成功させたほか、「ラグビーワールドカップ2019日本大会」開会式、「国立競技場オープニングイベント 〜HELLO, OUR STADIUM〜」に出演。


鼓童×ロベール・ルパージュ〈NOVA〉

2020年5月23日(土)
世界初演・全国巡演スタート


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