【懐石】茶事で振る舞われる食事。献立や作法を紹介!“懐石”と“会席”の違い
この記事の目次
懐石の由来
懐石は、お茶を飲む前に提供される食事のことで、修行僧が空腹をしのぐために、懐に「温石(おんじゃく)」という温めた石を入れていたことが由来になっていると言われています。
もともとお茶を美味しく飲めるように、空腹を和らげる目的で出された食事なので、懐石は一汁三菜(ご飯・漬物・汁物と向付、煮物、焼き物)を基本とし、けっして豪華な食事を意味するものではありませんでした。
また、旬のものを使うことがもてなしとされ、夏の朝に催される茶事などでは、新鮮な魚が手に入らなかった名残もあり、生魚を避けることが習わしとなっています。
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懐石と会席の違い
現代では料亭などで、会席料理と呼ばれる豪華な食事が振舞われることがあります。
会席料理も茶道の懐石の影響を受けながら発展していきましたが、宴席での料理という性格が強く、現代では主に以下のような区別が設けられています。
目的
[懐石] お茶を美味しく飲むため
[会席] お酒を美味しく飲むため
ご飯が提供される順番
[懐石] 炊き立てのご飯をはじめに少量提供する
[会席] ご飯は酒と料理のあとに提供する
懐石の流れ
懐石が提供される順序には以下のような決まりがあります。茶道の流派によっても若干の違いはありますが、食事の作法もあわせて紹介するので参考にしてみてください。
[1]飯、汁、向付(むこうづけ)
折敷(おしき)と呼ばれる足の付いていない膳に、飯・汁・向付をのせて、亭主が自ら運び客へ手渡します。向付は現在で言う刺身のことで、生魚が一般的ですが、酢の物や昆布締めなども提供されることがあります。
左手で飯椀の蓋を、右手で汁椀の蓋を同時に取って、汁の蓋を飯の蓋にかぶせて折敷の右側へ置きます。(飯椀の蓋のほうが汁椀の蓋より一回り大きくなっています)まずはご飯をひと口食べ、次に汁を飲みます。
向付はお酒が出されてから手を付けるのが基本的なマナーとなっています。
[2]酒
亭主は盃台と銚子を持って出て、正客から順に酒をついで回ります。客は酒を飲んだ後、盃を向付けの右隣に置き、ここで向付けを食べ始めます。
[3]煮物
懐石のメインに当たるのが煮物です。
すまし仕立ての汁に季節の魚や鶏肉を使ったしんじょなどが出されます。また、煮物の前後にご飯と汁のお代わりが提供されます。
[4]焼き物
焼き魚などが大きめの器に人数分まとめて盛られているのが焼き物で、客は取り箸を使って自分が食べる分を取り分けます。
2度目のご飯のお代わりと2献目の酒もこのあたりで勧められます。なお、2度目の汁替えも亭主から勧められますが、汁替えは断るのが一般的なルールとなっています。
[5]預け鉢、吸い物
一汁三菜だけではなく、現代の茶事では炊き合わせなどの料理が出されることが多いです。これを預け鉢や強肴(しいざかな)と呼んでいます。
食べ終わった器などを給仕口に返却した後、箸洗いとも言われる小さめの吸い物が提供されます。
[6]八寸
八寸(約25cm)の四角形の盆のうえに、酒の肴となる山のもの(植物性のもの)と海のもの(動物性のもの)の珍味を盛って提供されます。
このころになると、客と亭主が酒を注ぎ合う「千鳥の盃」が行われます。
[7]湯桶と香の物、菓子
おこげや炒り米など湯の子が入ったお湯と漬物が出されます。湯桶の湯で飯椀などを綺麗にし、懐紙で清めて折敷のうえに整えておきます。
最後にお菓子を食べて、濃茶が振舞われます。
おわりに
懐石には決められた作法があり、提供される料理にも一定の順序があります。最初は難解だと思うかもしれませんが、慣れると自然に食事をすることができるようになります。
みなさんも機会があれば、ぜひ茶事の懐石を体験してみてください。
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