「そうめん」と「ひやむぎ」の違い!? 太さだけではない。製造方法や歴史も違う?
この記事の目次
製造方法の違い
「そうめん」と「ひやむぎ」に共通する製造方法の違いは機械製か手作業かという点にあります。
どちらも材料は小麦粉と塩、水ですが「そうめん」は食用植物油を生地に塗りながら手で細く延ばしていきます。対して「ひやむぎ」は生地を薄く延ばし包丁で細く切ります。
こうした製造方法の違いから長い間「そうめん」と「ひやむぎ」はまったく違う食べものと認識されていました。
ところが明治16年頃に製麺機が登場すると「そうめん」と「ひやむぎ」の違いが不明瞭となってしまいます。そこで機械製の麺を「乾めん」、昔ながらの手作業による麺を「手延べ干しめん」と分類しました。製造方法のほかに麺の太さも定義づけし「そうめん」と「ひやむぎ」の区別をしています。
※以降、この記事では手延べ干しめんを一般的な呼び名である手延べ麺と表記
麺の太さの違い
JAS(日本農林規格)による乾めんの太さの定義は、「そうめん」長径1.3mm未満、「ひやむぎ」長径1.3mm以上1.7mm未満、「きしめん」幅4.5mm以上・厚さ2.0mm未満、「うどん」長径1.7mm以上です。
※長径とは楕円形の長い部分のこと。※「そば」には太さの定義(基準)はない。
「そうめん」と「ひやむぎ」はみなさんがご存じの通り、太さが違います。
仮に1.2mmの「そうめん」と1.6mmの「ひやむぎ」の差は0.4mm。数字ではほんのわずかな違いに感じられますが実際の食感はずいぶんと異なります。
また太さの違いをもっとも実感するのは茹で上がるまでの時間です。一般的に「そうめん」が2分程度、「ひやむぎ」は4分程度ですから倍も違います。
「そうめん」と「ひやむぎ」のほんのすこしの太さの違いには調理時間のおおきな違いが隠れています。
手延べ麺の分類の違い
太さによる分類・呼び名の違いは手延べ麺も同様です。
ただし手作業で作るという性質上まったくおなじ太さの麺を大量に作ることはむずかしいため、手延べ麺の場合は長径1.7mm未満であれば「そうめん」と「ひやむぎ」のどちらを名乗ってもいいとされています。
「半田そうめん」とは?
「ひやむぎ」の太さに該当しても手延べ麺では「そうめん」を名乗ることができます。その代表とも言えるのが徳島県の特産品である「半田そうめん」です。
「半田そうめん」の最大の特徴は太い麺と力強いコシにあります。
実は「半田そうめん」、乾めんの規格では「ひやむぎ」に分類される太さの手延べ麺です。しかしながら江戸時代に始まり今も続くそうめん造りの伝統と麺文化が根付いている地域性からひやむぎではなく「半田そうめん」と表記しています。
「高級そうめん」とは?
立派な木箱や化粧箱に入っている「高級そうめん」、一般的なそうめんに比べるとお値段もお高いですよね。
職人さんが技と時間をかけて作り出す手延べそうめんは細いほど高級品となります。麺を細く作るのには大変な技術が必要ですし、大量生産はできないからです。
等級がついている製品もありますので、お求めの際には注目してみてください。また、そうめんは熟成度により、新物(しんもの)、古物(ひねもの)、大古物(おおひねもの)とそれぞれ呼び名が異なります。熟成度が高いものほどコシが強くお値段も上がり、低いほど小麦粉の風味をたのしめます。
風味をたのしむなら新物、強いコシを味わうのなら古物・大古物という選び方もできますね。
「高級そうめん」でよく名前が挙がるのは日本のそうめん三大産地である播州(兵庫)、三輪(奈良)、小豆島(香川)のそうめんですが、先にお伝えした徳島県の「半田そうめん」や長崎県島原の「手延べそうめん」、富山県の「大門素麺」なども有名です。
味の違い
おなじ材料で作られている「そうめん」と「ひやむぎ」に味の違いはあるのでしょうか?
正確には味というよりも風味と食感と言ったほうが近いかもしれませんが、「そうめん」と「ひやむぎ」には違いがあります。
まず風味ですが「ひやむぎ」のほうが「そうめん」よりも小麦粉の甘味をより感じます。
これは麺を茹でる際に麺が細いほどお湯の中にデンプン(甘味成分)が溶け出てしまうためで実際の研究データもあります。食感は麺が太いぶん「ひやむぎ」のほうが「そうめん」よりも歯ごたえがあります。
味のお好みやお腹の空き具合に合わせたチョイスが楽しめますね。
色のついた麺
麺を購入する際に色のついた麺を買われたことはありますか? ちいさなお子さんのいるご家庭では色のついた麺が大人気で取り合い、などということもありますよね。
今では「そうめん」にも見かけますが、もともと色のついた麺は「ひやむぎ」だけのものでした。
機械化が進む前、一見しただけでは「そうめん」と「ひやむぎ」の違いがわかりづらく、区別するために「ひやむぎ」にだけ色をつけるようになったのが色のついた麺の始まりです。
色のついた麺の評判がよかったこともあり、よりたのしんでもらおうと「ひやむぎ」だけではなく「そうめん」にも色のついた麺が登場するようになりました。
「そうめん」の歴史
「そうめん」の起源は奈良時代に中国から伝わった唐菓子「索餅(さくべい)」です。
小麦粉と米粉を練り合わせた生地を縄状にしたものだったのではないかとの説が伝わっています。室町時代頃には中国から麺を手延べする方法が伝えられ、現在の「そうめん」に近い形になったとされています。
「ひやむぎ」の歴史
「ひやむぎ」の起源は室町時代の「切麦(きりむぎ)」です。
「切麦」とは麺をうどんよりも細く切ったもののことです。「切麦」の起源もまた「そうめん」の起源である「索餅」と言われていますので、元をたどれば「そうめん」も「ひやむぎ」もおなじ食べものから生まれたことになります。
当時は冷やして食べる「冷麦(ひやむぎ)」と茹でたての熱いうちに食べる「熱麦(あつむぎ)」の食べ方・呼び名がありました。
まとめ
「そうめん」と「ひやむぎ」の違いは麺の太さだけではなく製造方法や味など多岐にわたります。
それでいて「そうめん」と「ひやむぎ」はおなじ「索餅(さくべい)」から生まれた食べものであるとはなんともおもしろいですね。
違いをたのしみつつ「そうめん」と「ひやむぎ」それぞれのおいしさをご賞味ください。
[わつなぎオススメ記事]