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【京野菜】明確な定義はない!? 5つの条件「京の伝統野菜」九条ネギ、賀茂なす、えびいも、聖護院だいこんを紹介

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京野菜の歴史

長らく日本の首都として繁栄してきた京都では、多くの人口を支えるため野菜の栽培が盛んに行われてきました。

その理由として適度な降水量があり、鴨川や桂川をはじめとする水資源に恵まれていたこと、比較的温暖で雪が少なく冬でも野菜の栽培が可能だったこと、盆地の寒暖差により栽培に適した野菜があったことなど、気候風土の恩恵を大きく受けています。

地理的に海から遠い京都は魚の入手が難しいことに加え、寺院で食べる精進料理や茶の湯で提供される懐石料理の影響もあり、肉や魚をあまり使用しない野菜中心の食事が根付きました。また、首都としての期間が長く続いていたことにより、全国から野菜が集積し京都の風土に合う野菜が選び抜かれたという歴史があります。さらに、時代の経過とともに品種改良や栽培技術の改善が進められ、土地に根付いた独特な野菜となりました。

料亭で食べる高級志向の懐石料理に対して、家庭料理に根ざした京料理を「おばんざい」と呼んでいます。

野菜を使った煮物や和え物が中心で、えびいもと棒だらをいっしょに炊いた「いもぼう」や「賀茂なすの揚げ浸し」やなどが代表的なメニューです。京都で日常的に食べられているお惣菜がおばんざいで、だしの味付けを基本とした素朴な料理です。


京野菜の種類について

京野菜に明確な定義はありませんが、京都府が選定した「京の伝統野菜」と同種のものを指すことが多いです。

その選定基準は「明治以前に導入されたもの」「京都府内全域が対象」「たけのこを含む」「キノコ、シダを除く」「栽培または保存されているもの及び絶滅した品種を含む」の5つの条件を満たす必要があります。

現在ではすでに栽培されなくなった2種類の野菜を含め37品目が「京の伝統野菜」に登録されています。また、万願寺とうがらしや鷹峯とうがらしなど栽培の歴史が浅い3品目も「京の伝統野菜に準じるもの」として選定されています。以下に九条ネギや賀茂なすなど京都を代表する野菜を紹介します。


九条ネギ

奈良時代から栽培されている伝統的な京野菜で、京都市南部の九条をはじめ八幡市や南丹市などでも作られている品種です。細ネギ(浅黄種)と太ネギ(黒種)の2種類の系統があり、特に有名な太ネギは12月から2月にかけての寒い時期に旬を迎え、薬味をはじめ鍋料理や和え物に利用されます。特に冬には甘みが増し肉厚でありながら柔らかい触感を持っており、京野菜のなかでも良く知られた品種となっています。


賀茂なす

大振りで丸い形をしている賀茂なすは、伝統的に上賀茂の一帯で作られています。果肉が細かく煮くずれしにくいのが特徴で、煮物や田楽として食べられることが多いです。現在では京都市以外にも亀岡市や京田辺市などでも栽培されています。


鹿ヶ谷かぼちゃ

江戸時代の文化年間(1804年~1817年)に、津軽地方から持ち帰ったかぼちゃの種子を育てるなかで、突然変異で誕生したのが鹿ケ谷かぼちゃです。煮物やそぼろあんかけとして食べられるだけではなく、特徴的なひょうたん型をしているため鑑賞用としても利用されます。京都市の安楽寺では夏の土用の日に中風除けや無病息災を願って、鹿ケ谷かぼちゃの煮付けが振舞われる「かぼちゃ供養」が行われます。


えびいも

里いもの一種でエビのような縞々模様と湾曲した形が特徴的な品種です。安永年間(1772年~1781年)に長崎から持ち帰った芋の種を栽培したのがはじまりで、親芋と子芋のあいだに土を入れることで人工的にエビのような形にしています。緻密な肉質のため煮物として最適で、京都のおせち料理にも欠かせない食材です。


聖護院だいこん

文政年間(1816年~1830年)に聖護院に住む農家で栽培が始まったとされる品種です。現在では京都市南部の淀地区で盛んに生産されることから「淀大根」や「淀丸大根」とも呼ばれています。辛みが少なく丸い形をしているため、一般的に大根おろしには使用されず、柔らかい肉質を活かしたおでんやふろふきなどの料理に適しています。


おわりに

万願寺唐辛子は大正末期から昭和初期にかけて誕生した比較的新しい品種で「京の伝統野菜に準じるもの」に指定されています。大振りで果肉が厚いのが特徴で、てんぷらや網焼きをはじめ、じゃこと一緒に炊いた「万願寺とうがらしとじゃこの炊いたん」が定番の料理となっています。

現在でも自治体や大学などが協力し新たな京野菜を開発する取り組みが行われており、次の時代の定番となるような品種が今後生まれてくるかもしれません。


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ライター紹介 ライター一覧

島塚 啓

島塚 啓

昔から歴史や文学などの日本文化が好きで、大学では学芸員免許を取得しました。
今でも茶道や美術鑑賞など五感を満たしてくれる体験を求めて、日々情報収集に余念がありません。頭のなかをいっぱいにした後は思いっきって一歩踏み出してみましょう!感動的な出会いはいつも僕たちを待ち構えているはずです……。

一生のうちで好きなことに費やせる時間は、ほんのわずかしかありません。そんな貴重な時間を大切に過ごすために、みなさまが日本文化に触れる一助になれるような記事が書ければいいと思っています。

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